真相は残酷がある
「は……はぁああああああああああああああああああああああああ?!?!」
「うわビックリした!?
急にそんな大きな声を出してどうしたんだよ!」
「お、おいセメリ、勇者様
喧嘩か?大丈夫か?」
「いや、分かんねえよ父さん
俺が前の勇者に殺されたことを言ったら大声を出してて」
手が震える、摘んでいた花が手から零れ落ちる
何なんだろうこの感情は
怒り?
悲しみ?
それともショック?
分からない
それらが入り混じって訳が分からなくなる
例え出来の悪いそこらの作品でも
性格が悪くとも人助けはしていた
だからこそ
…………だからこそ
普通に一般人を殺すなんて展開は愚作どころではない
ムカつくから殺した……なんてド底辺の作品も見たことはある
けど、こんなにも世の中にいる人が絶対しないはずの「何も悪くない子供」を殺す
それがリアルで起きた?
ありえない
仮に俺のいた世界と同じとしても、そんな一般人が子供を殺すだなんて
そう言った現実を受け入れたくない
…………本当にありえない
涙がでてくる
あの時、魔物を始めて殺した時みたいに動揺を
いや、それ以上に動揺してみる
「……1回休んだらどうだ?勇者様」
「花全部落としたし、アンタ1回座った方がいい」
それになんでだ?殺された本人であるセメリも
その父親も、1年前であるとして
こんなに普通に話せているんだ?
トラウマとか感じないのだろうか?
「ご……ごめんなさい」
「とりあえず勇者様、そこの椅子に座ってなさい」
「あ、はい、すいません
でも1つだけ」
「なんだ?」
「……セメリさんは悪くない
セメリさんから聞いた真実に対して
あまりの冒涜さに、拒絶反応をしているだけなんだ
だから、セメリさんを責めないで欲しい」
「………そうか、落ち着くまで休んでいてくれ」
その言葉を聞きながらゆっくりと椅子の方に向かう
心臓がバクバクなっている、今すぐにでも急に止まるんじゃないかと思うぐらい呼吸も荒い
頭もクラクラしていてふらつく
「……お父さん、ちょっと手を貸してくるから」
「ああ、行ってきなさい」
そう後ろから聞こえると、突然手が握られる
そちらを見てみると、セメリさんが心配そうに見ていた
「……はぁ、前の勇者も勇者らしいくないけど
アンタもいい意味で勇者らしくないな」
「……そうだな、俺は実際は勇者ではないんだよね」
「どうゆうこと?」
「……この世界では勇者として召喚されたけど、元の世界……セメリさんからしてみると
俺は普通に学校に通う学生なんだ
殺しとか、それも戦いとか程遠い暮らしをしていたんだ」
「…………本当なのか?あいつら普通に殺してきたから
普通に殺し慣れている世界と思った」
「そんなはずは…………無いはずなんだけどな」
「とにかく1回座れ」
そう言った後、ちょっと乱暴に引っ張られて椅子に座らされた
子どもの力のはずだけど、俺の体中から力が抜けているからなすがままだ
近くからさっき昼ご飯で使ったコップを持ってきた
「水入れるか?」
「いや、俺が魔法で入れるから大丈夫」
そういって、いつも朝に入れるように水魔法で…………水魔法で
ダメだ、うまく注げない
「……うわわっ!?」
「だと思った、井戸から組んできたから飲め」
手間取っていたら、セメリさんがバケツから直接注いでいた
すまない…………
取り合えず落ち着くために一杯水を飲んで…………
「ゲほっ……ゴホッ…………」
「ゆっくり飲めよ、苦しいだろ」
ダメだ、何をやってもダメだ
本当に動揺が止まらない
「…………」
「はぁ……ハァ…………」
「…………」
少しの間、無言の時間が流れた
セメリは一旦立ち上がって、俺が落としたジャガイモの花を拾い直して一定の場所に置いた後…………
「お父さんの畑やっているから、落ち着いたら話すなり手伝い再開とかしろよー!」
「…………」
俺は無言で手を振る事しかできなかった
…………目の前で親子2人はたくましく畑作業をやっている
実際に殺されたセメリと愛する息子を殺された父親
2人の方が確実に辛い思いをしたはずなのに
俺はどうしてこんなにも辛い気持ちになっているんだ
ちょっと考える
すると再び涙が出てきた
今度は感情の濁流があるからなのか、ずっと止まらなかった
……
……
体感的に1時間が経過した後だろうか、ずっと枷のように足が全く動かなかったけど
ようやく軽くなった
立ち上がって農作物踏まないように真っすぐ2人の方に向かって行き
「急に作業を中断してすいませんでした!」
「いやいや、大丈夫…………むしろそちらが大丈夫なのか?」
「……なんとか、作業できるぐらいまで直りました」
「取り合えず座って続けるか?」
「そうします」
再びしゃがんで作業を始める、未だに心の中がざわざわしている状態になっているけど
先ほどまでの致命的なほどに何の行動もできないよりかはマシではあった
「…………」
「…………」
「…………」
無言の時間が流れた、このまま話さずに終わるんじゃないかと思うぐらいの時間だ
さっきの話で俺がショックを受けたのを見て気を使っているのだろうか?
「……セメリさん」
「なんだ?」
「ショックを受けてしばらく中断して申し訳なかったけど、その
前勇者の話しを続けてもらってもいいかな?」
「…………ダメだ」
「どうして?」
「さっきみたいに調子悪くなるから」
「…………」
めっちゃ気を使われている、けど……
「さっきは……何の覚悟も聞かずに聞いたのが申し訳なかった
覚悟をしたつもりだったけど全く足りなかった
さっきまでの間、心を落ち着かせたのと……キチンと覚悟をしてきたから
またショックを受けると思うけど、それでも聞かせて欲しいんだ」
「…………お父さん」
「どうした?」
「話して大丈夫かな……これって」
「……じゃあ後1回話してみなさい、けれど先ほどのような恐怖を感じたなら……やめたほうがいい」
「分かった、それでいいかソラアミセント?」
「……ああ、ソレでお願いします」
何とか話の続きを聞けそうだ……でも、さっきみたいなショックを受けないようにしないと……
「えっと、どこまで話したっけな」
「……この村に来て、壊して盗みもして
……セメリさんとシキギさんが殺された、話を聞いたところまで」
「そうだったな」
「何があって……殺されたんだ?
辛いなら無理をしないでほ……」
「辛い?いやアンタがつらそうにしか見えない、俺は平気だ」
随分とたくましいな、殺された経験をしたのに普通に話せるなんて
蘇生魔法があるこの異世界の感覚なんだろうか?
「そ、それならよかった
ちょっとこっちの世界と感覚が違っててすまない」
「大丈夫だ
話を戻すと、元々勇者って興味があって好奇心で見にいったんだ
俺とシキギがそんな奴らだとは知らずに」
仮に、前勇者が俺たちと同じルートで領主の所まで通ったとしたら
ここは近い位置になる、興味のあった勇者が近くを通るなら
子どもの好奇心で見に行きたくなるもの普通だろう
「勇者がこの村に来て物を壊しててな
正直失望した
勇者って話に聞いて世界を救うカッコいい人たちと思って憧れを持っていたんだ」
「…………」
多分、あの魔王城
アレが出るまでにこの世界に「勇者」という概念が無かったかもしれないし
下手すれば言葉すらなかったかもしれない
英雄に関するこの世界の言葉が「勇者」という言葉になったんだろう
そして、第一印象と言うのは大切だ
最初の経験が人にとっての大きなイメージとなって、第一印象が悪かった場合、それを覆すのが非常に難しくなる、信用を得るために冒険者をしている俺達の今の現状のように
この世界で本来だったら勇者は「希望」の意味で通ったんだろう
だけど最初に来た勇者は子供でも殺すような「絶望」の意味になってしまったのかもしれない
「親たちに秘密で勝手に行ったら、暴れていたんだ
危ないのが分かって一緒に帰ろうとしたら
……シキギがあのクソどもに無理やり連れてかれたんだ」
セメリさんの顔がかなり険しい顔になって来た
やっぱり話しているのも辛いんだろうか
当時の事を思い出しているのかもしれない
「なんか『勇者として共に行けることを光栄に思え』とか『ついて行きたかったら雑用やらせてやるよ』とか言ってて、シキギは着いて行きたいなんで一言も言っていなかったし
クソどもの聞いていたシキギは……泣きじゃくっていた
抵抗していたけど、シキギは力が弱いから逆らえなかったんだ」
「周りの大人たちは……何かしなかったのか?それとも、いなかったのか?」
「……いたけど、怖いとかそんな感じ見えてで何にもできなかった
俺は怖いと思わなかったから助けに行った」
……1つだけ安心したことがある、こういった時に作品によっては「なんで大人たちは何もしなかったんだよ!みんな大っ嫌い」と子供が受け取ってしまう展開を何度も見たことがある
けど、セメリさんは大人の気持ちをきちんと理解している
11歳と言っていたけど、本当に立派な大人だ
「俺は物を投げるのは得意なんだ」
「1度に2つも投げていたよね、あれって両手で投げたのか?」
「うん」
「コントロール上手だな」
「別に普通だと思う、たまに家族と町から出た時に魔物に向かって投げて手伝う事はあるけど」
両手で両方コントロールするのは結構至難の業だ、右にも左にも意識を向けなきゃいけないし一度二刀流を試したことがあったけど、グダグダになった
「それで得意の石投げでありったけクソどもに浴びせたんだ
シキギには当たらないように
顔面に当てて気絶させたり、腕に当てて……シキギから離れさせようとしたんだ
殺してでも助けたいと思ったんだ」
「……」
「殺してでも」子供からそんな言葉を聞きたくなかった
本気で殺意を感じる言い方をしていた
「でも、相手は数が多かったし
アイツら、本気で俺を殺したんだ
石を受けても、一度気が付いたら叩き落とされて
俺のいた場所に簡単に近寄って、気が付いたら…………俺の頭が飛んでいたんだ」
…………首を跳ねられた
そうゆう事なんだろうか
そう思いたくない
「……痛かった……か?」
「痛かったよ、めっちゃ首が痛かったのに声も出せなくて
クソ痛え中、意識が消えて行ったんだ」
「……聞きにくいけどシキギさんはそのとき…って」
「……俺が死ぬところを見たと思う
飛んでいる時に、シキギが絶望している顔が見えて
見せたくなかったのに……」
「辛いことを聞いて申し訳ない」
「別に、聞きたいことあるんだら聞いていいよ
さっき言ってたけど、死ぬって当たり前じゃない世界なんだろ?」
「じゃあ……死ぬのって子供でも多いのか?」
「普通は無い」
そりゃ、そうだろうな……
「死んだことがトラウマになったりとかは……」
「あいつらに殺されたのは癪だけど怖いとかそうは思っていない
俺が成長したら死ぬこと増えると思うし」
コッチの世界と死の価値観って、やっぱり全然違うんだな
でも、地球から来たはずの前勇者……そいつらと価値観が同じはずなのになぜ
簡単に子供を殺せるような奴らなんだろうか
「死んだ時って、どうなるんだ?
魂だけになって漂ったりとか……」
「よく分かんないけど、そういった事は無い
死んでいる間は一気に時間が経過した感じ
クソどもに殺されて、気が付いたら蘇生で起こされたんだ
それからは……お父さんにもお母さんにも抱かれながらいろいろと言われたんだ」
「怒られる……ではなく心配されたと言う意味か?」
「うん、2人が泣いている所を初めて見た」
チラリとセメリさんのお父さんを見てみると、当時の事を思い出していたのか
厳しい顔をしていた、セメリさんが言っているクソども……前勇者どもに対する怒りを感じる
「それからは親から聞いた通りだけど、俺が殺された後
シキギもそのまま殺されて、報復と言ってシキギの家を全部破壊された
シキギも生き返ったら俺を抱きしめたんだ
俺は……守れなかったんだって分かって……泣いた
……くそっ」
「…………」
セメリさんはイラついている、俺も正直イラついている
胸糞悪い物語をいくつも見て来た、報復や制裁を与える作品はあったけど
カスが何も痛い目に遭わずに胸糞悪いまま終わる作品もあった
……それらを見ていた時に「俺がこの場にいたらぶん殴りたい」と思う時も結構あった
本当にカスどもがもしどこかにいるなら本当に顔面の原型が無くなるぐらいに殴りたい
誰かの為ではない、自分の気がすまないからだ
「それから、俺が起きた時はクソどもはもうこの村からいなくなっていたんだ
あっちこっち壊されたままで」
「え?アミルクリスタルを回収したのか?」
「そうらしい」
厄介払いの為にさっさとアミルクリスタルを渡した……のかもな
でも1つ疑問が思い浮かんだ
アミルクリスタルを前勇者どもがすべて回収して天空の魔王城に向かって……まだ魔王城があるならあいつらは失敗して全滅したんだろう
でも全滅して失敗したなら、なんでアミルクリスタルが地上にあるのだろうか?
普通は魔王城で敗北したならその場に置かれるはずでは?
もう1回アミルクリスタルを探す魔道具で周囲と魔王城を見てみたが、やっぱり地上にしかなく魔王城には無い
その辺りは、ギルドマスターに聞けばいいのだろうか?
「でも、その後になって堀とか川とか汚れて
水を取るのがめんどくさくなったんだ
いちいち魔法を使わなきゃいけなくなったし」
「前勇者が行ったその後か……」
あいつらが好き勝手暴れて、去った瞬間に置き土産のように湖は汚れて、元々の目的である魔王討伐も未達成
そんな結果になったんじゃあ……
「勇者って……クソだなって思ったんだ」
「だから、同じく“勇者”って名乗っていた俺らも
前勇者と同じような奴らと思ったってこと?」
「うん、本当に石を投げてごめんなさい」
1つ分かったことがある、ギルドマスターが俺とセメリさんを合わせたかった理由って
セメリさんが抱えていた「勇者のイメージを」挽回するためだったんだろう
「……全然俺は怒っていない、でもいくつか願いしてもいいかな?」
「できることだったら」
「前勇者のせいで勇者のイメージは悪いことになったけど
俺たちは湖は原因を突き止めるし、魔王は必ず倒す
それは、信じて欲しい
けど、それとは関係なく積極的にセメリさんと会ってもいいか?」
「え?別に構わないいけど、それでいいのか?」
「うん、個人的に会話とかしたくなった」
「そうゆうもんなのか?
初対面で石を投げる人だぞ?」
「それは誤解があったからだし、何度も言っているけど俺は怒っていない」
「ってか、会話って何を話すんだ?」
「そりゃ、日常会話とか色々と」
勇者によって凄惨な目い合わされた少年と勇者が一緒にいる光景をヒューラルの人達に見せられたら
完全にこの街での勇者の偏見が無くなると思う
でもそんな打算的な事は正直二の次
本当は、もっと信用もされたいし
そう言った凄惨な過去があったと聞いてしまったら……なんでか放っておけない気持ちになったからだ
「まあ、そっちの気が済むならいけど
ちゃんとした勇者みたいだし」
「さっき『いい意味で勇者らしくない』って言われた気がしたような?」
「覚えてねーよそんな結構前のコト!」
そう言って、笑い合えた
セメリさんから結構な信頼を受けたのは本当に良かった
けど、聞いた残酷な過去
こんなにも大きなショックを受けた過去
その衝撃は、まだ心のざわつきが止まらなかった
こんな残酷な事なんて
あってはいけない




