事実は…………ある
まずは自己紹介からしておこう
「初めまして、俺の名前は空網千斗です
これからもよろしくお願いします」
「…セメリだ」
「えっと、セメリさん?」
「なんだ?」
「家から来たんですか?」
「そこに住んでいるけど、それが?」
改めて外見を見てみる
年齢は10代前半、いや10歳なのかもしれない
目つきは鋭い感じだけど以前のような敵対心は感じない
シキギさんの時に品子さんが「しゃがんで目線を合わせると良い」と言っていたけど、今は中腰で作業をしているから大丈夫だろう
「家で俺以外の勇者、秋原品子さんと小沼蜜巳さんがいたはずだけど
見かけなかった?」
「…挨拶だけしてここに来た
なんかよく分からない動きの遊びでシキギと遊んでいたけど
楽しそうだったしお母さんもいるし、大丈夫と思ってここに来た」
よく分からない動き?多分現世の遊びだろう
後でどんな遊びをしていたか聞いてみよう
「とりあえず自己紹介を続けるよ
地球という異世界からこの世界を救いにきた勇者だ
グラーフィアと地球では時間のかかり方が違うけど……えっと、この世界換算では20歳だ
よろしく」
「……俺は、11歳だ」
元の世界との年齢換算を考えると、9歳ぐらいだろうか?
「20歳って大人なのか?
お酒を飲めるとか聞いたけど」
「……俺の世界では、まだ大人になっていないから分からないです」
ちょっと不思議な感覚がする
相手が子供なんだけど、初対面で俺は敬語を使って
相手は普通にタメ口という、不快感は決して感じていないけど
……でも、石を投げられた時に「俺は怖くねえ!」的な事を言っていたのを考えると「子ども扱い」は多分ダメだろう
「そうゆうもんなのか?
お父さんはいっつも大人っていているけど」
「へへへ」
後ろから父親の笑い声が聞こえた気がしたけど、気にしなかったことにしておこう
「あくまで俺のいた世界ではね
20歳になった人が大人?を経験して21歳になった時
『20歳って大人だと思っていた』って思うのは誰もが通る道らしいって聞いたことあるし」
「ふーん、不思議なもんだな」
今すぐにでも、山ほど聞きたいことがある
でも、焦ってはいけない
それに普通に自己紹介するのも楽しいから心を落ち着かせる
「じゃあアッチの世界では何歳なんだ?」
「17歳です、俺の世界だと結婚も酒飲みも仕事もできない年齢なんだ」
「今働いているのにか?
俺は手伝いだけど」
「この世界なら問題ないと思う」
「…………それならいいけど」
その後は少しの間無言にはなった
とは言っても、ほんの数分だけだった
「……ごめ」
「石を投げたことか?できれば謝らないで欲しいな
俺は全く怒っていないし、そっちも悪いとは思っていない
だからっ……」
「ごめんなさい!!」
「あ、ちょ……」
ゴリ押しをするかのように、食い気味に謝ってしまった
言って欲しくなかったが……うむむ
「俺、本当は勇者が嫌いだったんだ」
「嫌い?それはなんですか?」
「………昼が近いから、その後でいいか?」
「いいですよ、セメリさんのペースで」
「うん
勇者が嫌いで石を投げて……怪我はなかったか?」
「防いだから全く大丈夫です、親から怒られなかった?」
「全く、泣きながら抱き着かれた」
「心配だったと思うよ?『殺さないで』と言っていたし」
「俺は心配し過ぎだと思った」
「俺に子供はいないけど、大事な子供を心配するのは普通だと思う」
「そっか……」
またも少しの無言時間が経過した
その後にはセメリさんがまた話し始めた
「それで、次の日の昼になると
勇者がギルドに入っているとか聞いたし意味分からなかった」
「まあ、たしかにな……世界を救うはずなのに勇者がヒューラルで冒険者をやっているのはおかしいよな…」
「意味が分からない、あっちこっちでガーゴイルってやつを作っていて…カッコいい像と思ったし
「カッコいいか、ありがとうございます」
「噂を聞いて劇に行ったらザコをやっていたし」
「ザコであっても、ああやって演じるの楽しかった」
「シキギと遊んでいる2人は料理とかお菓子の店で働いているし」
「蜜巳さんと品子さんはお菓子作り好きだから、得意を生かしているらしい」
「俺と同じ髪の色をしている大人は、動物の世話をしているし」
「タスメさんはこの世界の人だよ、俺達が異世界人だからこの世界の事について教わってもらってずっと助かっている」
「朝に聞いたけど、別のギルドメンバーと洞窟に出かけたとか聞いたし」
「昨日の事か、ナイヴォさん達との洞窟探検楽しかったよ
この世界の事を知るの非常に楽しいし」
個人的に調べているのか、今まで遠くから見ていたのか、人伝てに聞いたのか
俺たちの今までの行動をほとんど知っているらしい
でも、知ろうとする気持ちがあるのは………非常によかった
俺自身が好奇心旺盛だから分かる、嫌いでも好きでも知ろうとする気持ちがあるのは興味がある
もし、ガチで勇者の事を嫌いだった場合は………
好きの逆は嫌いではなく“興味を持たない”
俺自身も面白くない作品を見たりしたら普通に読みやめるし、嫌いになった人がいたらブロックなどをして二度と関わらないようにする
闇落ちして「滅べ」しか言わなくなったイラストレーターとかそうだ
向こうから関わってきたら流石に出るとこ出てしまうかもしれないけど
「俺達を知ろうとしてもらってよかったよ
本当に俺たちのこと嫌いだったら、触れたくない気持ちになると思うし」
「…………」
「どんなキッカケがあったかは昼の後に聞くことになるけど
勇者の事を嫌いと思っていたけど、嫌いになりきれてなかった……のかなと俺は思うんだけど、どうかな?」
「よくわかんね
キッカケので嫌いになったけど
勇者のこと嫌いだったけど、アンタたちの事はなんか
……違うって思ったんだ
アンタらは嫌いじゃない」
「それは……」
ちょっとだけ、思い切ったことを聞くか
「ニセモノの勇者が嫌いで
俺たちの方の勇者は嫌いじゃないってことですか?」
「そう……なんかな?
前の勇者も今の勇者もおんなじ勇者だと思ってたのかも」
そのあとは、俺から「何故冒険者になったか?」の説明をした
セメリさんは無言でその話を聞いていたけど、少しばかり納得していく様子が見えた
話し終わって気が付くと昼の時間になったらしく、セメリの父親から昼ご飯の誘いが来た
一度室内に戻るとかではなく外で食べることになった
父親は1回家の中に入り昼飯を持ってきた
俺とセメリは俺の水魔法で手を洗って待っていると……
「さあ、妻特性のポテサラサンドだ」
「ふっぐほっ!?」
「どうした!?」
「いえ、好物だったのでビックリしてしまいました」
「ふーん、そっちの世界にもあるんだ」
正確には好物って訳ではない、普通に好きってぐらいだけどある意味異世界的にはとんでもないものになる
「手を洗いますか?俺たちは俺の魔法で洗いました」
「大丈夫だ、サンドイッチを受け取る時にしっかり洗ったから」
「では、いただきます」
「ああ、いただきます」
「…………いただきます」
セメリはいただきますを言う前に食べそうな様子だったけど
俺たちのいただきますを聞いて、セメリも挨拶をした
一口食べると……っこ!?この濃い味は!?
「……マヨネーズか?」
「お!?分かるか!」
「それもあるんだ」
けど、俺の世界にあったマヨネーズと比べたら結構酸味が強い
前にサラダを食べた時はドレッシングのような物だった
これはどろりとした食感もあって本当にマヨネーズだ
これは何てことだ
異世界サンドイッチ問題とジャガイモ警察が合わさってしまったし、更にはマヨネーズと来るとは……
異世界でマヨネーズは特にこれと言った問題とか警察とかの用語が無いけど結構出て来る
それも「異世界でなにか自分の世界の事を伝える」時によく出てくるのが「マヨネーズ」だったりする
次点で「火薬」かな?
記憶だけで異世界に無い物を作るって相当難しい事と思っている
俺からして見たら、ある死に戻りの作品でも扱われていたし「主人公自身が知っている理由」があったり「ちゃんと応用」で制作出来たら問題ないと思っている
あの作品のマヨネーズの時も主人公自身はうろ覚えであったけど、仲間のメイド達の料理経験の才能で作ることができた
俺も1回試したこともあったし
でも、下手に理由もなく「実はこれ作れるよ!」って急に出てきたら「内政チート」って言われてしまう
本当に急に生えた設定で状況の打開などをしてしまったら、もはや何でもありになってしまう
一般学生や社会人が火薬やら銃やらを作るシーンがあったりするけど
そんな一般人がそんな物騒な物の作り方を知っていたら正直恐怖の方が勝るし
なんてことを考えながら異世界欲張りセットのサンドイッチを食べ終わると再び畑作業の再開だ
またも、セメリと俺は近くで作業をすることにした
「なあ、セメリさん」
「なんだ?」
「昼ご飯を食べ終わったし、勇者が嫌いになったとかキッカケとか教えてもらってもいいですか?」
「その前に、言いてえことがある」
「どうしましたか?」
「なんかその喋り方むず痒い、子ども扱いされたくはないけど
その喋り方の方がなんかもっと嫌だ
ソラアミセント、もうちょっと気を抜いたような話し方をしてくれないか」
「ふむ………」
実を言うと、不思議な感覚を確かに感じてはいたがむず痒さは俺もあった
それなら
「じゃあ、子ども扱いみたいな喋り方にしてもいいかな?
さん付けになるのは変わらないけど」
「……はぁ、別にいいよ、さっきよりかは」
「分かった」
まだタメ口になるには早すぎるから難しいけど、この話し方で行こう
「んで、キッカケだよな?」
「そう、教えて欲しい
俺の中である程度に周囲の人達からの発言とかから予測はしているけど
しっかりとした答えを知りたくて」
「王様とかは話してくれなかったんだよな、親からそう聞いたし
親はギルドマスターから聞いたみたいだし」
「うん、王様どころか王都セカンドルトで『話すな』って命令されていたんだ」
「なんでだ?」
「分からないな
勇者そのものがトラウマになっていたから、その話を耳が届く範囲でして欲しくないと思ったんじゃないかと…」
「ふーん」
そう言って、セメリさんは一回呼吸したのちに話し始めた
「去年だったかな?俺が10歳、いやもうちょっと前だから9歳の今年終わりぐらいの時
突然あの魔王城が出てきたんだ」
そういって、空を指していた
毎日いつものように魔王城は浮いている
朝も昼も夜もいつもそこにいた
「魔王城が出て、魔物が増えて住みづらくなったらしい
俺は街からあまり出れないし実感がよく分からないんだけどな」
子どもは外に出れないのか、多分出れるとしても親同伴とかの条件付きになるだろう
一歩街からでれば魔物がはびこっているし危険がいっぱい
俺たち勇者もなんだかんだで3人だけで街から出たことは無いし……
「んで、あの魔王城をどうにかする手段がなくて
誰もたどり着けられないって聞いた
用意していた……なんだっけ?アムムクリスタルだっけ?」
「多分アミルクリスタルの事だと思う
昔の賢者であるアミル様が作ったと俺は聞いた」
「それ、でもアミルクリスタルって誰も使えないとか言っていたし
その為に王様は勇者を召喚したって聞いた」
「勇者って俺達ってこと?
それとも俺達ではなくて……」
「もう予測ついているのか?」
「大体は」
「じゃあ言ってみて」
「えっと………もしかしてだけど、俺が言ったニセモノの勇者で
セメリさんが嫌いな方の勇者って
俺達3人よりも『前に』召喚された勇者の事か?」
「そう…だ」
いままで、なんとなく思ったことを初めて声に出した
この街ヒューラルに来てからいろんな人たちの勇者に対する考えを聞いていたけど
大体は俺達と違う「何か」を「比べる」ような発言が多かった
俺たちがもしも初めてだったとしたら王様とか王都セカンドルトの人達もヒューラルエクジトもヒューラルの人達だって普通に歓迎していたと思う
そりゃ、自分達とは違う「異世界から来た人」ってなると正体不明の不気味さを感じるかもしれないけど、このグラーフィアの人達の怯えっぷりは「相手がどんな存在か知っている」こその恐怖にしか見えなかった
それほどまでに強い恐怖感が見えた
「……そうか、俺達より前の…前勇者の人達は失敗したって事なのかな」
「失敗したぐらいだったらうるさくは言わないし
俺も石を投げるぐらい嫌いにならなかった
失敗って誰だってするし」
「偉いな、11歳でその考えを持ってて?」
「俺は大人だ、それぐらいわかっているから」
「俺の世界だと失敗を許せない大人とかいるし
セメリさんは立派な大人だよ」
「ありがとう
ってえ?まじか、めんどくさいな」
「ああ…本当にちょっとめんどくさくて、って話を逸らしてスマナイ」
「じゃあ続けるぞ」
そう言って再び深呼吸をした
「失敗で済めばよかったんだけどな
魔王城が出てちょっと時間が経って俺が10歳の時
王都から勇者が来るとか聞いて街で歓迎するとかあって
アミルクリスタルとか取りに来るとか言っていたかな?領主とかが」
「それで……来たのか?」
「うん、いっぱい来た
ソラアミセントみたいに3人の勇者じゃなくて沢山の数で」
何となく、その後に話すことは予想がついてしまった
ゲーム扱いとかそんな雰囲気のヤツ
低レベル作品であるような、人助けをしているのに胸糞悪い気持ちになるようなシーン……そのようなことを言うかもしれない
覚悟を決めて俺はセメリから話を聞く
「あいつらが街に来て歓迎しようとしたけど
いきなりモノとかを壊し始めたんだ
家とか勝手に中に入って、物を盗んだりとかして」
「………」
「壺とか壊しながら『勇者の特権』とか言ってて
街中で魔法を使って家を壊していて
遊びでやっているような感じだった」
「……胸糞悪いことを聞くと思ったから覚悟を決めて聞いたけど
結構キツイな」
聞いているだけで胸やけがしてくる
主人公が傲慢な出来の悪い小説を読んでいるような気分
けれど物語内で起きている事ではなくそれは現実
なおさら嫌な気持ちになっていく
手に力がこもっているようなそんな気持ちになって来た
俺達が3人なのに対して相手は沢山、止める人はいなかったんだろうか?
同罪として扱うかはちょっとまだ分からないけど
「話すのやめるか?」
「いや、それでも聞きたい
てか、その前勇者の奴らってアミルクリスタルを取りに来たんでは?」
「そのはずなんだ
んでなこの世界を救いに来たはずなのにあいつら
殺しもやったんだ」
「は?」
え?は?今なんて言った?
「……ごめん、今なんかすごく大きな衝撃を感じたんだけど
もう1回言ってもらってもいいか?」
「だから
アイツら殺しまでやったんだ」
「え?」
殺し……え?そんなはずは……え?
今までの情報を聞いた感じ、前勇者は俺達と同じ世界から来たはず
そうだとして、俺達のいた世界は事件とかが起こっても実際に「人殺し」をした人なんでほんのわずかなはず
だからこそ、命の重みとか知っているはずとかで…………アレ?
「ごめん、二度も言わせて」
「お、おい?大丈夫か?」
「ちょっと、動揺している」
「………前の勇者どもと本当に別人みたいだな
俺とシキギが殺されて
それを聞いて動揺しているなんて」
「は……はぁああああああああああああああああああああああああ?!?!」
は?殺されたのって
大人の人とかじゃなくて、子供を!?
それも、シキギさんとセメリさんの2人を!?




