今までの信頼もある、ジャガイモもある
宿屋に帰宅した後、まずはタスメさんに「明日話したい」趣旨だけを伝えて本日は寝ることに
本当はすぐにでも話したかったけど、品子さんと蜜巳さんが寝ている可能性を考えて一旦寝ることにした
そして次の日、チェックアウトを済ますと一旦4人で集まって話すことにした
「タスメさん………………なにか…………聞きましたか?」
「分からないッスね」
「千斗?どうしたの」
「実は、昨日スリングの練習をしたんだけど、ギルドマスタースイトに出会ったんた」
それからは何をしたかについて話していった、支援をしている事などを
「んで、その話を聞きながらついて行ったら
俺が探していたセメリさんとシキギさんの家が分かったんだ」
「え!そうなの!?」
「それで、今日から行けるなら…とギルドマスタースイトが推進するように機会を作ってくれるようになったんだ
急で申し訳ないんだけど本日でよろしかったら同じ勇者として一緒に行きたいんだけど
難しそうなら俺1人で………」
「行くよ!私特に用事無いから!」
「いつも…………しーちゃんと一緒に……………………依頼をしているので………同じく予定ないです」
「俺も大丈夫ッス」
「ありがとう、みんな!
じゃあ、本日はその家に行くことにしよう
ギルドマスターが『その機会が作れるように』って言っていたし、ギルドの4階に行こう」
「おー!」「おー……」「了解ッス」
3人ともすごい積極的でよかった
その後はギルドマスターが言っていた「2人の話しを聞いたら、自然と何が起きたか分かるし…その話を聞いたら、ギルドマスターと領主で詳しい事情を話す」ことも伝えた
「家を壊されて居候している様子」なことも伝えたら……
「壊された、ってどうゆうこと!?」
「分からない、ただ俺が思っていたよりも嫌な事が起きたのかもしれない」
「……………………覚悟が必要なのでしょうか」
「多分な」
「…………そこまで起きたんッスか」
「タスメさん、詳しくは話せないか?」
「できないッス、けど、俺が聞いていた事よりも重大って思って欲しいッス」
「……わかった」
悲しい顔をして驚いていた女子2人、そして予想外に驚いているタスメさん
真実を聞いた時、もっと悲しい顔をするのかもしれない
タスメさんの反応が気になるけど、ひとまずは先の依頼を行うことにしよう
相談が終わりギルドへ行き、受付嬢の人達に少し会話をした後にギルドマスターの所へ向かう
階段を登って行き、4階のギルドマスターの部屋にたどり着いた
「失礼します」
「その声は早速か、入っていいぞ」
そう聞いて室内に入っていく、するとギルドマスターは一枚の黒板を差し出した
「えっと、これはなんでしょうか?
ギルドの依頼が書いてある……」
「その依頼が書かれている奴だ、いつもだったらあそこに掛けられているのを確保しただけだ」
「え?依頼?」
「もう、他の3人に話している前提で言わせてもらうが
セメリとシキギそれぞれの家族が住んでいる家から出ている依頼だ
他の冒険者が取る前に確保しておいたから、依頼を受ける…と言う形にすれば『会いに来た』ではなく『依頼を受けたら偶然になった』になるだろう
昨日の夜に親に話しかけたけど、子供達には話しているか分からないからな
偶然の方が話しやすいと思って用意した」
……たしかに、あの支援物資を届けた時、何を話していたかは分からない
親が大丈夫だとしても子供達が拒否をする
偶然の方が受け入れやすいのかもしれないし
他の人達からの視点でも、ギルド依頼で来た…って思えればなんだかマシな気がする
「本当にありがとうございます
それでは受け取らせていただきます」
「ねー私たち、普通にして行けばいいかな?」
「ガーゴイル勇者達、いつも丁寧と評判を聞くし
この前のスリーピーたちも良かったと言っていたし、よっぽどでなければ大丈夫と思う」
「なんだか………不安です」
「そんなに心配しなくてもいい、いざと言う時は私も何かしらの行動をする
……必要ないかもしれないけどな」
最期にボソりとその言葉を言っていた、普通に聞こえていたけどそれだけ信用を受けているのだろう
「ギルドマスタースイト、ところでどんな依頼をするッスか?」
「まあ、誰にだってできる畑仕事と畜産仕事だ
あそこは農家だからな」
そういえば昨日行った時に大きな畑があったな
昨日は暗かったから気が付かなかったけど、この辺りって俺達が初めてヒューラルに入った時に通った門と領主のいる館を一直線上につなげた道の最中だ
俺たちがヒューラルに入った時にすぐにやってきたのは、家が近かったからか?
「質問が無ければ早めに行った方がいい
依頼が終わり次第、私も話したいからな」
「分かりまし……『私も』?
領主ツキウス様は……?」
「あの親父に関しては私が力づくでも話させる
ちゃんと領主としての自覚を理解して、ちゃんと“今”の勇者を見て欲しいからな」
父親に説得は…まだらしい
その辺りはギルドマスターに任せることにするか
「分かりました、では行ってきます」
「ああ、ご武運を祈っているぞ」
「いってきまーす!」
「いって……………きます」
「行ってきまッス」
そう言いながら部屋を出る
1階に戻って、受付に依頼板を出して手続きをしたのちにギルドを出発した
……
……
依頼板に地図が書かれており、昨日歩いた記憶も含めて歩いて行く
なんだか、始めて依頼をしてきた時よりも緊張している気がする
一歩一歩が重く感じる、以前に石を投げられた時、本当に怒りとかそんなネガティブな気持ちは無かったけど…その後の行動はちょっと過剰ってぐらい警戒心高めの行動を取ってしまったぐらいだ
ちょっと怖い気持ちもあるのかもしれない
けれども、俺自身もちゃんと話し合いたい気持ちがある
もし、湖の事を解決してそのまま和解せずにこヒューラルを出たら
この先の国々で後悔を抱えたまま行くことになってしまうだろう
それも、元の世界に戻ってもだ
勇者としも、高校生ではあるけど1人の大人としてもこれは絶対にやらなきゃいけない
足は重かったけど、やっぱり結構早く着いた
「ねぇ千斗?ここなの?」
「ああ、昨日の記憶と地図によるとここだ」
「大人の人達は大丈夫………とギルドマスターは言っていましたが………………私たち怖がられないでしょうか?」
「分からない、親たちが話をつけていたらいいかもしれないが」
「だったらこうするッスか?一旦俺が先に出て用件を伝えてから
3人が出て来るという形で
勇者の外見は知っていても、俺の事は知らないと思うッスし」
「ワンクッションを入れる形か、お願いする」
「了解ッス」
俺達3人は一旦後ろの方に行き、タスメさんは依頼板をもってノックする
すると、扉が少し開いて応対している
相手は女性でどちらかの母親に見える、金髪だからセメリさんの方かな?
タスメさんは自己紹介して少し話し終わった後……
「勇者達、挨拶をするッス」
「はい」
そう言って、俺は初心に帰って土下座をした
2人は驚いていたけど、腰を90度に曲げて礼をした
「ほ、本当に勇者の人達だ…こんなにも頭を下げているなんて…」
「本日、依頼でやってきましたガーゴイル勇者の空網千斗です」
「同じくガーゴイル勇者の秋原品子です!」
「同じく……………小沼蜜巳です…………」
「………この人たちが…今の勇者ッス」
立ち上がり頭を上げて相手の様子を確認する
目の前には赤い髪の女性と男性、黄色い髪の女性と男性がそれぞれいた
多分だけど、セメリとシキギのそれぞれの両親だろう
それぞれの夫が前に出ていて、妻を守る形をとっている
「勇者たち、聞きたいことがある」
「はい、何でしょう」
「……俺達を、俺達の家族を殺しに来たわけではないよな?」
「殺さないよ!私たちはこの世界もこの国も救いに来たんだから!」
「どうしても不安でしたら……………………武器は持っていませんので……………調べても構いません」
最近街中での依頼をする時は、武具の部類は常にタスメさんの馬車の中に入れている
1人の父親が俺の体を、2人の母親が女子それぞれ2人を調べていた
「何も無いな…」
「ギルドマスターが言っていた『怒っていない』は本当みたいね」
「疑っていたみたいですいません
そして、迷惑をかけてご………」
「ストーップ!」
「はい!」
品子さんの一声でご両親4人はきをつけの姿勢で硬直した
品子さんナイス、謝って欲しくはないから
「すいません言わせちゃったけど
ゴメンは必要ないよ!今回は依頼しに来たんだからね!」
「そ、そうですね!」
相手方もちょっと納得したようだ
話し合いにはちょっとした強引さも必要らしい
「では、依頼内容について聞きたい事があるのですが……
ギルドマスターからある程度は聞きました、具体的には今回はどのような要件なのですか?」
「あ…ああ、畜産の手伝いと畑の手伝いと家の手伝いをしていただきたいのですが…」
種類は多いけど、手分けをすれば行けそうだ
家の手伝いは事前に聞いてなかったけど、誤差の範囲で特に問題はなさそうだ
「じゃあ、俺が畜産の手伝いをするッス」
「私たち、家の手伝いがいいかな?」
「私も…………家の手伝いに………します」
「俺は畑の手伝いをします、この世界の農作物が気になりますので」
「……あ、あの」
「ん?」
依頼の相談中に、小さな声が聞こえた
親の後ろからだ
その方向を見てみると赤い髪の夫婦の後ろから赤い髪の長髪の女の子がモジモジと出てきた
「千斗、みーちゃん、タスメ
しゃがんで目線を合わせたほうがいいよ」
「ああ、分かった」
「わ…………分かった」
「分かったッス」
そう言われて4人でしゃがんで目線を合わせた
多分この子がシキギさんか?
「え…と」
「どうしたの?ゆっくりでいいよ?」
「あの………勇者?だよね?」
「うん、勇者だよ」
そろそろ明らかになると思う「何か」の事を…ニセモノの勇者の事を言っているのかもしれない
「もしかすると、考えている勇者はニセモノで
俺たちが本物と思って欲しいです」
「こ………怖くないよー」
「王都からずっと案内したッスが安心していいと思うッス」
「…………あのえっと」
「ん?」
女の子はモジモジしながらも何か言葉を出そうと必死になっている
年齢は10歳ぐらいか?不安そうな目をしてこちらを見ている
親たちも俺たちもその様子をゆっくりと待って見つめていた
「私、シキギです…………あの、セメリに怒ってないのホント?」
「ホントだよ!会って話し合いたいって!千斗が!」
「セント?」
「俺の名前は空網千斗
できれば、そのセメリさんとお話をしたくて……」
「えっと………その……」
「シキギ、ここからは私が話すわ
あのね、セメリくんは
家にいるんだけど…ちょっと会うまで待って欲しいの
彼なりに、彼のペースにしてあげたいから」
……家にいるのか、今日中に会えたらいいけど俺からは行くことはできない
でも、拒絶ではない会いたい「意思」があるのは希望が見える
時間経過であちらから出てこれれば……
「さっきの相談通り、と言いたいんだけど
シキギちゃん?」
「は……はい?」
「家の手伝いは私とみーちゃんでするけど大丈夫?
何なら一緒に遊ぶ?」
「え………大丈夫ですか?」
「大丈夫です…………………こっちの世界の……………遊びとか気になるなら………教えるよ?」
「う…うん」
……異世界交流的にも、尊さの重ねがけ的にも大変気になる光景が広がりそうではあるけど
俺と言う存在は間物…推しカプの間に割り込んでくる異物になりかねんのでここは身を引いて行くことにする
母親たちが家の中にいるみたいだし、シキギさんも慣れて安心していったらいいな
それぞれで分かれて依頼を行うことに
俺の方はセメリさんの方の金髪の父親が畑作業を教えるらしい
さて、何をするのだろうか
「今回は、ジャガイモの花を摘んで欲しい」
ジャガイモ!?
「花ですか?」
「ジャガイモってそっちの世界にはあるか?」
「あります!でも畑作業をしたことは無いです」
「おお、分かった
ジャガイモは根っこを育てる野菜だから、花があると養分を取られてしまう
だから、花を全部摘んで欲しい、俺と一緒にやろう」
「はい、わかりました!」
心の中では大騒ぎしていたけど、何とか建前上は落ち着いた状態でやり過ごせた
金髪のセメリの父親はそのまま花を摘んで行き、俺も目の前にある花をプチプチと取っていった
まさか、異世界グラーフィアにジャガイモがあるなんて
ジャガイモ警察がいたらギャーギャー言いそうだ
ジャガイモ警察と言うのは…まあ、端的に言うならクレーマーだ
大体のファンタジーでは中世ヨーロッパが舞台になっている
そんな中世ヨーロッパにジャガイモが出てくると「その時代にジャガイモはねえよ!」って声を張り上げる奴がいたりする
ジャガイモ以外にもトマトやカボチャ、チョコレートのカカオとかも中世ヨーロッパに無いものだった気がする
文明の発展とかには詳しくは無いし考古学や人類学に詳しいわけではないが
中世ヨーロッパでも「ファンタジーの」中世ヨーロッパだから地球との文明の発展具合は全く違う
ファンタジーともなれば、魔法があるし魔物がいる…それだけで現代の発展とは違くなるだろう
俺自身も詳しくないし、ノリと勢いでその辺りの用語を読んでいるし、書いている人もいるだろう
中世ヨーロッパでの衛星概念に関しても色々と言う人がいるけど、水魔法で自由に飲める清潔な水さえ出せるのであれば全部解決だ、ここグラーフィアにはトイレも風呂もあって非常に助かっている
だからこそ「その時代に無い」とツッコミを入れるのは無粋だ
まあ、流石にツッコミを入れたくなる文明を見たこともあったりするが…
例を言うなら…食文化が発展してなかったある異世界作品にあったけど
「飯の肉を煮る発想はあったけど、焼く発想な無かった」ってのを見た時には流石にドン引きした
ホモ・サピエンスだかそれより前とかで見つけた人類最初の調理法と言われているし、どう考えても「煮るは焼くの発展系」だ
アレには「甘い」が無いのも引いたし、木の実とか果物とかあるのになぜ?と思った
……てか、人類学に詳しくないけどそれでも思うが、甘いを知らなかったら舌が発展してないから味覚に甘いが無いのでは?
………
………
なんてことを思いながらジャガイモの花摘みをして行った時
もうちょっと昼かなと思っていたころ
「なあ、おい」
「ん?」
声をかけられてその方向を見てみると
「え!?うわお!?」
「なんでそんなに驚いているんだ?」
………件の少年、セメリさんがいた
この街に始めて来た時、そして舞台でちらりと見た時
ほとんどその姿を見てなかったけど、確かにその姿はセメリさんだ
父親も側にいる
「驚かしてすまない、ようやく我が息子セメリが出てきた所だ
ほら、話しあいたいんだろ?
近くにいるけど2人だけで話しなさい」
「…分かった」
「えっと、よろしくお願いします」
本当に突然すぎる、てっきり家の方からゆっくりやって来ると思ったんだけどいつの間に来ていたとは
それだけ俺は作業に夢中になっていたのかもしれない
セメリさんの父親は数歩離れた所で花摘みをし始める、セメリさんも花を摘んでいく
俺も始めていく
いきなりだから頭の中で会話がまとまってなかった…何から話そうか




