サンドイッチはある、無理強いは無い
今回は、何も考えずに「好き」をとにかく詰め込みました
あれから魔物は出てこなかった。洞窟内にいると空の状況が分からないから時間の感覚が分からないけど、空腹……要は腹時計でなんとなく昼になったのでちょっと広い所に座り込んで昼食にすることにした
丁度いいテーブルのような上が平らになっている岩もあってそこを囲む
タスメさんから軽食になる干し肉などの弁当を持っているからそれぞれで食べることになったけど
俺はある物を見た
「ねー折角だから一緒に食わない?」
「いいと思うよ!」
「皆さんは……何を食べるの……………ですか?」
「肉や野菜をたっぷり使った栄養満点のサンドイッチよ」
「俺らの飯も美味しいから互いに食べようか」
『サンドイッチ』か、普通にサンドイッチはパンで肉や野菜を挟んだものであって、具材のハーモニーを感じれる食べ物、スリーピーさん達の用意したサンドイッチも俺の世界にある物と同じだった
異世界作品でサンドイッチが出た時には物議をかもす時がある
サンドイッチは…えっと、サンドイッチ伯爵がカードゲーム中に片手間で食えるようにするためにパンでいろんなものを挟んだモノに自分の名前を付けたんだったかな?
それよりも前からパンで挟む発想はあったかもしれないけど…
だけでもここは現実世界の地球ではなく異世界のグラーフィア
サンドイッチって名前の人が作ったのに、その人がいないはずの異世界で『サンドイッチ』と言う単語があったらオカシイ!って物議をかもす事があって
それを『異世界サンドイッチ問題』と呼ぶ
サンドイッチ以外にも、ドイツのフランクフルトが由来のフランクフルト、ウィーンが由来のウィンナー……それ以外は分からないけど、自分の知らない言葉とかでもあるかもしれない
転生、主人公、魔王、勇者とかも仏教由来とかきいたことあるし
そういった言葉の矛盾で違和感を感じる人が多いだろう
けど、この問題は結局些細な問題なんだよな…
先ほど、ヒノムさんから「サンドイッチ」という言葉が聞こえて来たけど、その言葉は翻訳魔法を通じて聞いている
この世界に来たばっかりの時に「世界中に溢れているマナによって、異世界の人でも言葉が通じて意思疎通ができる」みたいなことを言われて、実際に王都セカンドルトでもヒューラルでも俺のいた世界と言葉が違うはずなのに普通に話せている
実際、何度かマナが切れて翻訳魔法すらなくなった時、異世界グラーフィアの人達の言葉が分からなくなった。
このグラーフィア世界の人達の言葉が俺たちの住んでいた地球世界と違っている証拠だ
翻訳魔法を通じて聞いている言葉が「サンドイッチ」なだけになっているだけで実際は……えっと「パンヲハサンダモノ」って言っているのかもしれない
宗教の言葉になるけど色即是空だと思う、人から教育を受けて知った物でも
実際にその「モノ」がその「カタチ」をしているか?なんて自分しか分からない
あのミームになった「頭の悪い人」のでリンゴを見て「ばなな」って答えている様子も、その「頭の悪い人」が「一般的にリンゴ」と言われているモノを「ばなな」って教わってそれが常識として定着してしまったんじゃないか?という可能性だってある
世界に来た時点で「翻訳魔法があった」場合で話したけど
…例えば、転生して赤子からのスタートになって言葉を学んでいく異世界転生作品にて、最初の「主人公が世界の言葉を知らない」状態だと親とかの言葉が翻訳されてない状態になるけど、少し話数が経過すれば主人公が言葉を学んで言葉が普通になる、けど読者はその世界の言葉を学んでいるわけではないから読者には「翻訳された」言葉が俺たちに伝わる
この場合も「サンドイッチ」が出たとしても問題は無くなる
異世界サンドイッチ問題もこれで論破は出来ると思う
……まあ、異世界に行ったけど特に理由もなく「言葉が通じる」場合は言い訳できるのかな?
翻訳魔法って後付け設定できるならいいけど……
「どうしたの千斗?」
「ん?ああ、ちょっとどれを食べるか悩んでいてな」
「ヒノム、アレもごちそうしたらどうだ?」
「あれ?あれってどれなのナイくん?」
「コーヒーのことだよ」
「え?コーヒー!?」
「ん?どうしたんだ勇者ソラアミセント?」
「あの、コーヒー好物で
この世界に来てから頂いてないから飲んでもいいですか?」
「いっぱい飲んでね!勇者くん!」
まさか、コーヒーがあるなんて
この世界にあったら飲んでみたいと思ったけど、本当にあるなんて
異世界作品とかで小麦系食品が普通である中世風ファンタジーな世界で「米」を見かけて感動するのは結構あるけど、俺はコーヒーが好物だからそれでも感動してしまう
スリーピーの人達が複数のカップを並べて、水筒のような物からそれぞれに注いでいく
湯気が上がり、コーヒーの香ばしいいい香りが場を包んでいく
真っ暗な洞窟内に暖かい場所ができたような気分だ
「ソラアミセントくんどうぞ!
砂糖と牛乳はどのぐらい入れる?」
「あ、俺ブラックで大丈夫です?」
「ブラック?コーヒーは元から黒いけどどゆこと?」
「え?」
「え?」
あれ?ブラックって普通に通じていると思ったけど、チルスさんの反応はどうゆうことだ?
「えっと…コーヒーをブラック?勇者ソラアミセント、そっちの世界ではどうゆう事なんだ?」
「え?もしかして、グラーフィアにはコーヒーに砂糖や牛乳を入れない文化って無いのですか?
コーヒーをブラックって、俺の世界では『なにも入れずにそのままで』と言う意味で伝わっています」
「千斗さん…………コーヒーをブラックって…………凄いですね…………私はたっぷり入れないと飲めません」
「まあ、その、カッコつける為に馴らしていったら飲めるようになって今では好物になった」
「そういえば私、コーヒーをあまり飲んだことなかったよ!ジュースとかが好きだから!」
ちょっと脱線してしまったけど、 スリーピーの人達の反応は……めっちゃ驚いた顔をしている
「コーヒーをブラック」が本当に無いらしい
思い出したけど「カル○ス」みたいだな、原液では飲まずに水に薄める所が似ている気がする
「よく飲めるな?香りはいいけどそのままだとあまりにも苦すぎて飲めたもんじゃない…
多分そっち世界のコーヒーは苦みがこっちの世界よりも少ないと思うんだ」
「異世界の事ですごいと思ったけど、ソラアミセントくん?無理はしないでね?」
「いや、俺の世界では無理をしたことないですが…この世界の食べ物って全般的に味が濃いのでコーヒーも苦みが強いという事でしょうか?」
「そのままってすっごー
1回試してみたら?グラーフィアのコーヒーを記念にね」
「え?いや、チルス流石にそれは…」
「少し試してみます」
少し意を決して、自分の前に置かれたコーヒーを見てみる
ライトの魔法で、照らされていると所しかしっかりと見えないけど
見た目は普通にコーヒーに見える、濃い色をしているとか分からない
香りも自分の世界にいた時を思い出すぐらいいいニオイだ
「いただきます」
そういって、一口…よりも少なく、数滴分を口に含む
……………
「大丈夫か?」
「ソラアミセントくん?大丈夫?」
「だいじょーぶか?」
…………
「千斗?大丈夫?」
「千斗………さん?」
………一瞬思考が完全に停止していた
味は風味は確かにコーヒーだ
けれども、忠告を受けた通り非常に苦かった
「自分のいた世界と比べて味が濃い」って毎回思っていたし、慣れては来ているけど
顔をしかめてしまったけど……ゴッルさんの食べたリンゴと同様、なんだかクセになる
「お、おい?やっぱり牛乳と砂糖を……」
「いいな、異世界のコーヒーって」
「え?マジか?」
そう言ったら今度はもう1口
さっきの苦みが口内どころか、喉奥まで浸透していく
舌そのものが苦くなったかと思うぐらい非常に強い味
苦みを越えていくと、美味しさも感じてくる
「あぁぁああああ……美味しいな」
「す、すごいな
コーヒーをそのまま……ブラックとやらで飲んだ人初めて見た」
「勇者くんちゃんって、普通に飲めるのが普通なの?」
「私は飲めないよ!」
「私も…………牛乳と砂糖沢山…………必要です」
「じゃあ、勇者ソラアミセントが特別ってことか」
……勇者として特別な目で見られたことはたくさんあったけど
なんというか、異世界作品でよくある「主人公に特別な力があって、その様子を行い周囲の人を驚かせる」って展開、いやどちらかと言うとこれはチート系か
コーヒーで自分以外の人達を驚かすことになるとは思わなかった
でもコーヒーが美味しいからそのままいただきます
そうしてサンドイッチを食べてコーヒーを飲みながら雑談に入っていく
「そういえば、勇者アキハラシナコ」
「ん?どーしたの?」
「実はずっと気になっていたんだが、やっぱりさっき戦っていた様子を見て何かおかしいと思ったのか?」
「……」
「それともさー?そっちの地球とこっちのグラーフィアでおかしいと思う所があったの?」
やば、まさか「無理して戦っている事」をぶり返されるとは思わなかった
しかし、どうやって伝えたらいいんだろうか………
「…作戦ターーーーイム!」
「わお!びっくりした」
「ごめんね!でも1回私たちだけで相談したいんだけどいいかな!?」
「大丈夫だよ?ゆっくり話し合ってね」
そう品子さんは言って俺たちに向き合った
ヒソヒソ声で話し合いをするが、もしかすると聞こえているかもしれないが
「ねえねえ、どうする?」
「どう………するって………」
「本当は、無理をしないで欲しいとか、ケガを負わないでは欲しいとか言いたいんだけど
なんだか、本当に気にしていないような気がするの!」
「そうだよな、さっきナイヴォさん普通に『怪我は治せばいい』って言っていたし…」
「……」「……」「……」
無言でスリーピーの人達はこちらを見つめているけど、多分聞こえている気がする
そう思っているとチルスさんが口を開いた
「なー」
「っ!?」
「やっぱ、そっちの世界の戦い方とこっちの世界の戦い方でおかしいと思ったのか?」
「えっと……」
「品子さん、ここはちょっと俺に任せてもらっていいか?」
「お願い!」
「千斗さん…………いつものラノベ知識で…………頑張って!」
蜜巳さんがラノベ知識とは言っていたけど、今回に関してはあんまり関係ないんだよな…でも自分なりにスリーピーの人達に何とか不快にさせないようにしたい
「えっと、チルスさんその通りです」
「そうなんだ、おかしいの?やっぱり?」
「はい、この世界に来て王都にて蘇生魔法の様子を見たこともありました
治癒魔法とか回復の薬とかでの治療って怪我がすぐに治りますよね?」
「え?ああ、そうだけど
そっちの世界に比べたら早いのか?」
「はい、薬はありますが魔法は無くて
普通の切り傷とかでも、怪我にばい菌が入らないように消毒したら綺麗な布かなんかで傷を塞いである程度の時間が必要になりますし
それが普通だったからこそ、俺たちは基本的にケガを負わないように戦っています
なので……えっと、極端な事を言いますと『痛いのも怖い』と思っています
皆さんの戦い方がちょっと怖く感じた所がありました。
不快に思いましたらすいません」
「……」「……」「……」
3人とも、難しい表情をしている
自分達が今まで普通と思っていた戦い方が否定されているようなものだから、不快な気持ちになってしまったんだろうか……
「ねえ、勇者ソラアミセントくん?」
「はい、なんでしょうヒノムさん?」
「あなた達って本当に“同じ”勇者なの」
「え?同じ勇者?王様から命令されて勇者をしていますが…」
「…………」
どうゆう意味だ?もしかして俺たちとよく比べれている「何か」の事なのか?
でも、ヒノムさんも「どうやって言ったらいいか」な感じに悩んでいる顔をしている
「えっと、取り合えず、俺達はその話を聞いて不快に思ってはいないよ」
「私も」
「アタシも」
「その、そっちの世界のケガを負わない戦い方を無理強いしている感じではないし
自分の世界の基準を押し付けるような様子じゃないからね
むしろ俺たちに合わせるか、譲歩しているかに見えた」
「そ、そうなんですか?」
「勇者って特別扱いとかそうゆうイメージとかを思っていたんだけど、普通に優しい人たちなのね
まるで学生みたいとおもったよ」
「私学生だよ!」
「私………も」
「俺も、と言うかこの世界に来る前って普通に学生だったんだ
勇者でもなんでもない、戦いすらも知らなかった普通の少年少女なんだ」
「そりゃ大変だな、アタシだったら逃げてるよ」
「俺も最初は逃げたいと思いました
元の世界で彼女がいまして、星見玲香という名でちょっと食べ物の買い物に行った帰りに召喚魔法に巻き込まれまして……」
それからは自分の話しが自然と出てきた
「この世界で魔王を討伐しなければいけないと、戦わなきゃいけないと思った時は怖かったです
自分の世界でも『異世界に行って勇者にさせられて戦わさせられる』と言う作品が結構ありますけど、結構スパルタな時が多く、俺達がお世話になった兵隊長は優しかったからよかったでしたけど、俺の世界にあった作品では人の事を考えない厳しいだけの外道がいまして、回復魔法が疲れを取れるのを悪用して丸1日寝ず鍛えるとかありましたし……」
「それ1回試そうとしたけど千斗に止められたなー」
「えっ………そんな話を……………していたの」
「防衛戦前に雑談をしていた時にちょっとね?」
「千斗さん…………止めていただき………ありがとうございます」
「どういたしまして
たしかにずっと鍛えられるかもしれませんが体が平気でも心は無敵ではありません、鍛えるのは心も疲れますし…一応心に影響を与える魔法はありますがそれはちゃんとした安らぎにはなりません、なのでキチンと休みを与えないと心は壊れてしまいます
もしも、そんな物語の外道団長だったら、本気で逃げだすか一矢報いることをしていたかもしれません」
「礼儀正しい勇者も、思い切ったことを言うんだな…
でも俺たちは、自分達の『怪我は治せばいい』戦い方を勇者達に無理強いはするつもりはない」
「その気持ちを持っていただきありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとう」
思い出したけど、俺はまだ学生だからよく分かってないけどブラック企業出身の社畜が普通のホワイトな企業に転職した時に、その社畜のせいでブラック企業化してしまう話を聞いたことがある
時折異世界作品で解像度の高すぎる社畜が異世界に行った時に、リアクションが無いだけで正直嫌悪感が半端ないのに、自分の基準や感覚を押し付けて人を苦しめる様子を見ると、正直“楽にさせてあげたい”気分になることもある
「その世界なりに楽にする方法」を否定して大きな声でキレ散らかすのはただの昔のやり方に固執している老害のパワハラと同じだ
「なので、やっぱりここから先の戦い方はお互いに別々に行きませんか?
一緒に戦うのは難しそうなので」
「ああ、賛成だ」
「さんせーーい!」
「賛成…………です」
「賛成よ」
「さーんせい!」
なんだか、戦闘を見た後に感じた不安感がとっくに消えて行った
「お互いのやり方に敬意を払う」
現代では何故か中々できないことではあるけど、こうやって本音を話して分かり合えるのって素敵だと思う
「さて、本音を話していただいてありがとう
折角だからもし質問があったらいくらでも聞いて構わないよ」
「じゃあ!いいかな!ずっと気になっていることあるの!」
「じゃあ勇者アキハラシナコちゃん、どうしたの」
「3人って同じパーティーだけど、どうゆう関係ですか!」
「しーちゃん!?!?!?!?」
品子さん!?思いっきり聞いてしまったんだけど!?
普通の人間関係なのか、デリケートなのかもしれないからあまり聞けなかったんだけど!!
「何って友達だよ?」
「友達だな」
「強いて言えば親友かな」
「え?それって、こ……」
「品子さん!」
「はい!?」
「と、と、と、とりあえず、これ以上は一旦落ちつこうか!」
「落ち着く?落ち着いてるよ!私は!」
「千斗さん……なんとなく言いたいことは分かりました………………しーちゃんちょっとこっちへ!」
「わっわっわーーーーーーー!」
一旦チルスさんの持っていたランタンを借りて幼馴染の2人はちょっと離れた場所でヒソヒソ話をした
蜜巳さんナイス、正直俺は……まだ3人が友達という関係なら、もしかするとこのまま眺めていたら恋仲に発展するかもしれない
コッチの世界だと基本的に「どっちになる?」ことが多くどっちかが「敗北」して悲しいことになるけど、この世界では重婚とかはできるだろうか?
今聞きたいとは思ったけど、それで変に意識をさせたくはないからここで「恋」に関する話題は出してはいけない、さっき無理強いしないと言ったし3人の歩幅で関係を進んで行けばいいと……
「え?え?え?
なにを言おうとしたんだ?」
「えっと……内緒でよろしくお願いします
ちょっとしたこちらの事情とかありますので」
「お、おう……わかった」
取り合えず、誤魔化せた…って訳ではないけど
さっきの戦い方みたいにぶり返す事はないと思いたい
「そういえば、俺も気になったことがあるんですけど…チルスさん」
「ん?アタシ?どーしたの?」
「その武器、俺のいた世界で聞いたことはあってもあまり見たことないのですが…スリングが気になりました」
スリングショット……もといパチンコは色々と見たことはあったけど、あのブンブン回していくスリングってあまり作品で見たことない気がする
だからこそ好奇心でスリングの話を聞いてみたいと思った
「だったらこれ?いる?予備がいっぱいあるから1つ使ってみる?」
「え?!いいんですか!?」
「構わないよ、取り合えず怪我したくない戦い方なら石とかで練習したらいいと思うよ」
「コツとかってありますか?」
「わっかんないなー
最初っから使ってたら…気が付いたら上手くいったよ?
勇者の使っている槍って最初っから使えてた?」
そう考えると、この世界にあるマナで器用さがあがっているから感覚でも行けそうな気がする
メインで扱えるかどうかは別でロマンで扱うことになりそうだけど
「そう考えたら行けそうですね…
ありがとうございます、1ついただきます」
「もし紐とか千切れそうになったら、武器屋さんとかに行けばいいよ
結構安いと思うからねー」
そうやり取りしていると、品子さんと蜜巳さんが戻って来た
相当蜜巳さんが説得したからなのかなんだか疲れている
「だ…大丈夫か?蜜巳さん」
「心配………しなくて………大丈夫です
……………ちょっと待てば…………元気になれます」
「えっと…頑張ってね3人とも!」
「?」「?」「?」
スリーピーの3人が頭を傾げたまま、取り合えずその話は終わった
食事もとっくに終わっていて、再び俺たちは先へと進んで行くことにした




