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3. さあ、ゲームの始まりです

本日2話目です。

「私は、クラリッサ・カレン・グランドル公爵令嬢との婚約を破棄する!」



 パーティー会場に現れたアンシェル殿下が、高らかに言い放った。



 まじか。ゲームでは、不自然に感じなかったこのオープニング。現場にいると感じるこの違和感。パーティーの開催宣言もそこそこに、殿下からのお言葉をと促された直ぐ後の婚約破棄宣言。


『なんなの。いきなり公衆の面前で何を言い出すの? って感じよね。私はストーリーを知っているから驚かないけど、皆驚いているわよ』


 そう思いながら、隣にいるフェリウスお兄様を見た。

『それはそうよね』

 お兄様は凍っていた。無表情なその顔からは想像できないかも知れないが、驚き以上に怒りの様な気配が感じられた。あれっ?


「マーガレット嬢、こちらに」


 アンシェル殿下は、壇上から声を掛けた。さあ、いよいよヒロインである男爵令嬢の登場だ。でも、その前に、確か婚約破棄されたクラリッサ嬢が声を掛けるはずだ。


「「アンシェル殿下!?」」


 ん? 二人の声がした。はて?


 声のした一方には、艶やかなローズブロンドの美女、クラリッサ嬢。そして、もう一方は私のすぐ隣からした。まさか? まさか? 恐るおそる隣の声の主を見上げる。


『お兄様? 貴方の声でしたよね?』


 青褪めているクラリッサ嬢と、氷から一瞬で溶けたお兄様だ。

 お兄様がこの場面で殿下に声を掛けるとか、初めてかもしれない。そんなルートは今までなかったと思うけど。

 二人の声に、アンシェル殿下はチラリと視線を寄こしたけど、ホール中央にいたヒロインである彼女に向かって満面の笑みを浮かべた。キラキラしいその微笑みは、ゲームではすっごい人気のあったスチルだったはず。


「アンシェルさまぁ!」


 可愛らしいソプラノの声と共に、柔らかなキャラメルブラウンの髪がたなびいて、壇上への階段を駆け上がろうとした。フリルの沢山付いたピンクのドレスが軽やかに舞った。


「マーガレット!」

「マーガレット嬢!」

「マーガレット様!?」


 ざわついたホールに嬉しそうなアンシェル殿下、引き留め、諫めようとしているお兄様とクラリッサ嬢の声が響いた。


「私、アンシェル・グラリオス・ハントは、クラリッサ・カレン・グランドル公爵令嬢との婚約を破棄し、ここにいるマー」


 再び放たれた婚約破棄の言葉と共に、壇上から手を差し伸べるアンシェル殿下と、階段を駆け上がるマーガレット嬢の姿。




 その時だった。









 眩い光がホールに満ち溢れた。

 今までこの世界で見たことの無い、光のスパークだ。









 何が起こったの? 光が金色から白に変わりながら、床面に青く光る大きな魔法陣が現れた。


 ナニ? なんなの? こんな事今まで起きたこと無かった。


 そして、一層強い光に包まれた後、光は七色の粒子となって霧散していった。


「シ、シレリア、大丈夫か?」

 私はお兄様に縋りつく様にして立っていた。足に力が入らない。

「こ、こんなのストーリーに無いよ……」

 思わずつぶやいた。


 今日のオープニングは何かがおかしい。こんな場面見たこと無い。



 眩い光に眩んでいた眼が、漸く慣れてきたようだ。まだはっきりと周囲が見えない。それはそうだろう。あんな光は滅多に見る事なんて無い。まして、この世界では。


 私は目をパシパシさせながら目の前に視線を向けた。さっき大きな魔法陣が見えた場所だ。


「んんっ?」


 魔法陣はあった。未だその陣は青白く光っている。














「せ、聖女様?」



 小さく呟いたつもりだったが、思いの外その声は響いてしまった。私は思わず口を塞いだが、その言葉は皆の耳にはしっかり聞こえてしまったようだ。



 魔法陣の真ん中に、一人の少女が座り込んでいた。


 長い腰までの黒髪に、黒い瞳の美しい少女だ。チェックの短いスカートに、紺色のブレザー、臙脂色のリボンが胸元で結ばれている。そうだ日本人の女子高生だ。それも相当可愛い。




 まさか。まさか。まさか!?


 思い出した! 私が死ぬ寸前に見た運営からのイベントのお知らせメール。

 確か、コラボ企画だったはず。



【新コラボ発生!!「異世界転移 聖女様出現します!」×「♡イケパラ薔薇色王立学院」】





 ああ、このタイミングで聖女様が出現するとは。まさかの婚約破棄のタイミングに、悪役令嬢と男爵令嬢、そして聖女様なんて、異世界乙女ゲーの3大ヒロインでしょう?


 いつのまに、コラボイベントに進んでいたんだろう? 私の悪役公爵令嬢のハピエンルートはどこに行った?



「そ、そなたは何者だ? まさか、聖女か?」


 壇上にいたはずのアンシェル殿下が、座り込んだままの少女の所まで降りて来た。思いの外優し気な声色に、私の中の森下美奈子がケッと顔を顰めたのが判った。




「いきなり光に包まれて……気が付いたらここに……ここは、どこですか?」

 小さいながらも凛とした声に、誰もが釘付けになった。華奢な身体が小さく震えているのが判った。





『ああっ! コラボ企画が始まっちゃったよ! 私、ストーリー知らないけどどうしたらいいの!?』






















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