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元婚約者が浮気相手と結婚式を挙げた日に私は王子様と出会った  作者: 蔵前
第二部第六章 対策会議に全員集合!

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我儘な神はハッピーエンドを許さない?

 私とナオキ君は互いに真っ赤になっていた。

 ナオキ君は私の言葉を光栄だって言ったあとに、真っ赤になって照れてしまっている。私の方はと言えば、ナオキ君が私の他愛ない台詞一つで喜んでくれたのが嬉しく、幸せで、そしたら気恥ずかしさも来ちゃって。

 私達は互いに目線を交わし合い、えへ、えへへ、と再び照れる。


 幸せ。

 私ったらやっぱりナオキ君が大好きなんだわ。

 ナオキ君が私に向ける琥珀色の瞳はキラキラして、なんて綺麗なの。


「あ、すご。話題だけでラッキーアクシデントが起きちゃってる。やっぱ優香も芹亜も恋愛の神だったのかな」


「兄? あなたは玉こんにゃく食べて黙ってて」


「その通りだよ、ちえちゃん。顕のせいでなずなちゃんの次のセリフが消えちまった。マサオ君は何も言わなくても分かってくれるから好きよ。って続くはずだったというのに」


 ナオキ君はマサオ君のセリフにハッとした顔になり、そうなの? という顔を私に向ける。私は、そうじゃない、と首を横に振る。

 私のせっかくの告白を台無しにした三十代男組を、座布団でビシバシ殴りつけるイメージを心の中で繰り広げながら。


 そう、せっかくの告白だった。

 私こそちえに恋バナ風に語っていた「なぜ」の答えに気付いた瞬間だったのに。


 私の視線はちえに向かう。

 あなたは分かっているはず――あら、ちえが視線をとある人に一瞬だけ流す。

 ああ!!…………私こそ気がつくべきだったのね。


 私とナオキ君に水を差したからと、ちえが顕さんを諫めたのでは無かった。

 マサオ君対策だった。

 本人が気さくな声を出しているからと言って流さずに、ちゃんとどんな表情をしているか顔を見てあげるべきだった。


「まあね。俺は何も相談されなくても勝手に動くから、期待も何もされないんだろうってわかっているよ」


 あなたの事を何もわかっていませんでした。

 仲間外れに感じて物凄くお怒りですね、わかります。


 ええ、もちろんマサオ君はしれっとした顔付よ。

 だけど、普通よりは広かろうが五人の大人がひしめく上条家の居間が、まるで空気が凍ったように肌に感じるの。鳥肌が立つほどってどうなんですか。

 マサオ君という兄を私以上に知っているナオキ君なんて、人形みたいに固まっている。アニメだったら脂汗をダラダラ流しているモーションがつくわね。


「も、ももも、もちろん、なずなちゃんは信頼してると思いますよ。マサオさん」


 顕さんも気がついたか、つっかえながら追従者そのもののセリフを吐いた。

 そして、なぜか引きつった笑顔を私に向ける。


「ねえ、なずなちゃん」


 振るな。

 私はもうびくびくだけど。マサオ君を信頼しているのは本当だけど。まずナオキ君にだけ頼っちゃうという所は、絶対に否定したくは無いんです。


「兄さんこそ俺が頼られるのはおかしな話だって思う? そりゃあ、俺は兄さんいなきゃ何もできないし」


 だけど、このツンドラな気候はナオキ君という春の妖精によって終わった。

 この可愛い人が、可愛らしい台詞を言った途端に、マサオ君が、クス、と笑いを零した事でツンドラ空間が消えたのである。

 ナオキ君のセリフで私の胸が少々傷んだけど。


 だって、ナオキ君たら卑屈すぎるもの。


「ねえ、ナオキ君。あなたはどうしてそんな風に自己否定が過ぎるの?」


「俺はだって、顔だけだし」


 あ、ナオキ君は自分の顔が良いことはちゃんとわかっていたのか。

 でもって、顔だけだって自己否定が過ぎる?

 だけど、選ばれた人しか入れない国が設立した研究所で、博士号取るための選抜院生として勉強している人でしょう。もっとそっちの自分を誇ろうよ。

 あと、大怪我したのは、困っている後輩を助けるために体を張ったからなんでしょう? あなたは頼れる人なのよ!!


「えっと、確かに顔はキレイで見惚れちゃうけど、話していると顔の良さなんか忘れちゃういい性格してるわよ。あなたはお兄さんより喧嘩が弱いのかもしれないけれど、その顔に残った痣を見れば、芯のとても強い人だって分かるし」


「喧嘩が弱いから、ただタコ殴りされていただけだよ」


「喧嘩が弱いのに、殴る人に立ち向かったんでしょう。強いわよ。ただ、」

「弱いから二度とするな?」


「そうじゃない。きっとあなたのお陰で助かった人がいるんでしょう。だから、あなたがした事は立派だと思うけど、だけど」

「兄さんに任せておけ?」


「もう!!そうじゃなくて」


「なずなちゃんは、単にお前が怪我したのが嫌だって言ってるだけだ。俺もそう。だから、望むべくは俺の手の平の中から出ないで欲しいな。なずなちゃんも」


「マサオ、さん?」

「にいさん?」


 私とナオキ君は、マサオ君の手の平にってところは抗議すべきなのだけど、その台詞を言い放ったマサオ君の表情で何も言えなくなった。

 マサオ君は誰も見ていなかった。

 彼の視線は、上条家の居間の雪見障子から見える風景、中庭に転がる巨大な黒い毛玉へと注がれていた。誰も遊んでくれないからとゴロゴロ無駄に転がって、敷地内を自由に動けるようにと長く仕立てられた紐で自分を拘束してしまった上条家の愛犬様だ。


 あれが私とナオキ君の姿だと言いたいわけ?

 マサオ君の思惑通りに動かないせいで、ああして身動きが取れなくなると?

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