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元婚約者が浮気相手と結婚式を挙げた日に私は王子様と出会った  作者: 蔵前
第二部第六章 対策会議に全員集合!

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断罪の仕方がわからないから相談会 だけどグダグダ

 仕返しってなんだろう。

 私は二十五年生きて来てたが、積極的に誰かを傷つけてやろうと考えて行動した事は無い。


「どこまでも自分だけいい子ちゃんでいたいだけでしょ、この偽善者が」


 綾乃だったら今の私の思いについて、こう評しそうだ。

 でも、いい子ちゃんでいる事のどこが悪いのか。


 自分のあの失言であの子は傷ついたかな、失言だったと謝ったりしたら全然気にしていなかった場合はかえってあの子がいたたまれなくなるかな。

 そんな風に自分が不用意に放った一言について落ち込み悩み、その悶々とした気持ちを翌日まで持ち越すことなんてよくある。


 では、意識的に相手を傷つけたら、どれだけ自分が今後悩み落ち込むことになるのか。結局悩むぐらいだったら、相手から受けた嫌な思いなんか流して、何事もなかったように振舞う方が自分には楽なんじゃないかな。


 そう、こんな風な思考で私はいい子ちゃんでいる事を選んでいたという、自分が可愛いだけの偽善者なのだ。


 そしてこんな私に対し、マサオ君やナオキ君は、自分達の心がそんな重荷を背負うと知っていながらも私を守る為ならと泥を被ってくれるのだ。

 いいの? 大事な人達を自分のために汚して良いの?

 私だって腹をくくるべきなのよ。


 だけど、今まで平和主義者を気取っていた私に、断罪と呼べるほどの相手への仕返し方法など思い付くだろうか。

 ちえだってそうだ。


 そこで結局私達はちえの兄の顕さんに帰宅してもらう事にした。

 マサオ君と同じくやんちゃだった彼を交え、今後の芹亜への仕返し方法について話し合うことにしたのである。

 玉こんにゃく入りの鍋が乗った座卓を囲んで、という所が、仕返ししなきゃという感情を脱力に変えて行きそうだけど。


 さて、ちえの兄である顕さんは、ちえから呼び出しを受けるや瞬間移動したのかと思う程の早さで帰宅してきた。私達が集う上条家の居間に顔を出した彼は、帰宅が早すぎると驚く私達に、マウンテンバイクは道なき道を行けるからね、と爽やかに笑った。


 初めて挨拶を交わした顕さんだが、やっぱりちえに似ている、だ。

 顕さんは中肉中背で威圧感も無く、整った顔立ちは人好きがする。彼は上条家のお坊ちゃまとして、とてもとっつきやすそうな良い雰囲気をお持ちである。


 彼が高校時代はマサオ君みたいにやんちゃだったとは、今のお姿からは決して想像できない。どこから見ても気立ての良い良いお家のお兄さん風よ。


 そんな彼だが、居間に彼の一つ上の知人(友人?)の姿を認めるや、あからさまにびしっと頭を下げてたではないか。

 なんかやくざ映画で弟分が兄貴に頭を下げる感じで。


「マサオさん。お久しぶりです」


「やっぱり北高の顕だ。もう何年振りかね」


「なずなちゃんやちえの前だからってサバ読んじゃだめですよ。十何年ぶりって言いましょう」


 やくざ映画は最初の一瞬だけだったようだ。顕さんは、サバサバとマサオ君に気安く言い返し、私とちえの間に当たり前のように腰を下ろす。

 割とぐいぐいと来たので、私が動いてしまったのがいけないかも。

 顕さんを私とちえの間に座らせちゃったせいで、マサオ君とナオキ君の目つきが怖くなっちゃった。


「君は相変わらずかな」


「そうでも無いですよ。未だに妹の心の傷を癒してあげられない。えっと、なずなちゃんもあれに嫌な思いさせられたんだって? 大丈夫? それで初対面だけど、本気で君は可愛いね。俺の結婚が決まって無ければって、今瞬間的に思っちゃった」


 気安すぎる!!


 私はちえに目線を送る。

 ちえは自分の兄の言動で、すん、とした表情になっていた。そして何を考えたか、鍋から割りばし付きの玉こんにゃくを一つ取り上げ、顕さんにぐいぐいと差し出すじゃないか。


「兄ぃ。ちょっとこれ食べて黙ろうか」


「妹よ。俺は君の怨敵をやりこめるぞ会議に呼ばれたんだと思ったんだけど? 会話できなきゃ無意味じゃない」


「だったらなずなをナンパしないでよ」


「いいじゃない。俺はこのマサオさんと違って高校時代は硬派気取ったせいで、女の子不足なんだよ。大学だって理工学部だよ。わかるだろ?」


「おい。聞き捨てならないよ。顕」


「いやあ、聞き捨てどころか、本当じゃないですか。俺の初恋相手なんか、あなたとの橋渡しをして欲しいだけで俺の告白にオーケーしたんですよ」


「兄い。あなたのは硬派じゃなくてモテなかっただけじゃない!!」


「お前。マサオ様と同年代の男の悲哀を思いやれ。俺に今まで女がいなかったのは、俺が硬派だった。それを上条家の真実にするんだ。いいな」


「ぷ」

「ぷ」


 上条兄妹のやり取りに吹き出してしまったのは、私とナオキ君だ。

 ああ、ナオキ君の笑いをかみ殺そうとしている、はにかみ、みたいな表情が可愛らしすぎる。私と目線があって、さらにきゅっとした笑い顔となる。


「ナオキ君ってかわいい」

「可愛いが過ぎる」


 ナオキ君への思いが重なったのは、私とマサオ君だった。

 私は今度はマサオ君と目線を交わし合う。だよね、と。


「二人とも、俺を子ども扱いしないでよ!!」


 あ、ぷぅって感じで怒った。

 やっぱり私とマサオ君はナオキ君の可愛さにやられる。


「ナオキ君か。大きくなったよな。覚えてる? 君が小学生の時、ゲーセン前で君を脅したお兄ちゃんだよ」


「はい。いじめっ子に囲まれている時だったから助かりました。あの時はどうもありがとうございました」


「だめだよお。それじゃ俺が凄く良い人みたいじゃない。ガキに凄むって何やってんだって笑い話にしなきゃ」


 顕さんはナオキ君に向けて優しく笑う。

 その瞬間北高のブレザーを着た金髪のイケ面が笑う画像を思い出し、私はちえへと視線を向ける。彼女は誇らしそうな笑顔で自分の兄を見つめてた。


 ちえの初恋というか憧れの人って、自分のお兄ちゃんだったのか。

 わかる。

 私は一人っ子だから、兄妹っていいなあ、と胸が温かくなる。


 それでもう一組の兄弟達を見返せば、マサオ君が不機嫌顔だ。

 この場に馴染む柔和な笑顔にしているが、わかる、彼は不機嫌だ。

 そして視線は、顕さんに子ども扱いされて頭を撫でられかけているナオキ君。

 わかりやす!!

 マサオ君の気を逸らすために、話題を元に戻さねば。

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