ちえとなずなとあの女
私はマサオ君からスマホを受け取り、画面に表示されているブログの記事を読む。内容はスマホを叩き割りたくなる、男性とのあれやこれやの感想ばかり。
「気持ち悪い」
「そうだね。それで君がそうだから、友人達もそうだったのかも」
マサオ君の言葉にハッとなり、私は画面をスクロールする。
コメント欄となり、そこにはブログ主を罵倒するコメントがあった。
コメントされた日付は、彼女達が私に優香の結婚式に参列するべきだとメールして来た頃と同時期だった。
「その男は婚約者だったT君じゃないよね。恥ずかしくないの。Yよりも最低なことしてたんじゃない。ていうか、YがT君を慰めてって、仕方ないじゃない」
「私達を無視しているから書くけど、自分がやった事が返って来てるんだから、二人の門出をちゃんと祝いなよ。けじめつけようよ」
「これはノッコとハルミかな」
「だと思う。二人はそのブログでなずなを勘違いして、綾乃と一緒になずなの悪口を言ってしまった事を後悔している。裁判所に勤めている女の子でブログのアイコンがゴン太君でしょ。勘違いするなって方が無理かも」
「ちえもそう思ったんだ? こんなのが私だって」
「言ったでしょ。私は今まで知らなかったって。もともと綾乃とは合わないし、呼び出しもメールも無視してたから。でも、ノッコとハルミは婚約破棄の背景はこうだったってブログのアドレス教えられて、それを信じてなずなを責めてしまったって嘆いていた」
「そっか。でもごめん、ちえ。もういいよって私は二人に言えない」
「うん。それはわかるけど。ノッコとハルミを切ったら、あいつの思うさまかなって思ったら、悔しいのもある」
「あいつ?」
「あいつ」
ちえの声は本当に悔しそうだった。
それで私は思い出す。
私がちえに聞きたかったことは別だったと。
「ちえ。鹿渡芹亜、ええと坂枝芹亜について教えて」
「うん。最初になずなになりすました時に教えなくてごめんね。万引き事件を私が知ったのも母からでね。全部終わった話として私も聞いたのよ。万引きで高校を退学になった後に、母親の実家の方に引越ししたって。それで私の中でも終わったというか、あいつについて語りたくなかったというか」
「それだけ嫌な思いをしたんだ?」
「私が中学越境しなきゃいけなくなった原因だもの。あいつはね、約束がある振りして私の部屋に乗り込んで、私の部屋にあった色々を盗んでいったの。漫画本や貯金箱の中のお金ぐらいは我慢できる。でもね、私の下着を盗んだのは許せないわ。落とし物ですって。私のパンツを掲示板に貼り付けたのよ。それも、洗ってタンスに入っていたはずなのに、とっても汚い状態で晒されていたのよ」
私はちえが受けた辱めに胸が痛くなった。
汚された自分の下着が晒されているその状況は、同じ女子としてとても恥ずかしくて辛く感じるはずだとわかるからだ。
「それ、それで、数日後にはあの汚いパンツが私のものだって皆にバレて!!バレるわよね、私があのパンツを掲示板から剥がして処分したんだもの。とにかく、見られるのが嫌で嫌で」
ちえの両目からポロポロと涙が零れていた。
これは悔しさの涙だ。
私はちえを抱きしめる。
許せないな、と私こそ坂枝に怒りを燃やしながら。
「あいつをぶっ潰してやりたい!!」
「なずなさん、任せて!!」
「了解しました。なずなちゃん!!」
私は、はっ、となる。
私が連れて来ていた王子さまと魔王さまは喜色満面。
半グレの事務所にゴキブリ十箱を送り届けた人達だった。
やばい、と思った瞬間、マサオ君は嬉しそうな声を出してスマホを耳に当てる。
「妹の復讐ってことで、顕も呼ぶか」
「待って。お兄ちゃんは結婚決まったばかりだから!!」
マサオ君を止めようと必死になったのは、ちえ、だった。




