真相、教えて
マサオ君が私に与えてくれたのは、二階にある洋室の一部屋だった。
「ローラああ」
感激で変な言葉が出てしまった。
だって、カーテンもベッドカバーも同じ花柄で統一されていて、自分でも知っている有名ブランドのものだったから。
大好きだけど揃えるには高すぎるとその店のクッションカバーだけ持っている私は、なんて素敵と溜息を吐いた。それでなにこれ。絨毯だって初めて見たって感じだわ。主張しない優しい黄色の絨毯は毛足が長く、触り心地も良くて足で踏むだけは勿体無い仕様。
「お金持ちの客間って凄い。私の夢の部屋だわ」
茶々ちゃんは一階のリビングにケージを作ってもらっている。
リビングの方が茶々の世話をしやすいから。
うん、彼らは分かっている。
茶々を一日一回はケージから出してあげなきゃだけど、この絨毯に茶々が粗相したら大変だわ。それどころか、茶々をケージに入れている時でも、彼女が汚れた床材チップをバサバサ飛ばすたびにチップ片付けで私は慌てるはず。
うん、だからケージはリビングね。
その通りだし至れり尽くせりだけど、茶々を放して遊ばせてあげなきゃと考えたら、早く次の部屋を見つけねばいけないと思う。
次の部屋なんか考えずにずっと居座っていいよ、とも言われたけど、独身女性だったら本来は実家に帰って実家から職場に通うべきなんじゃないだろうか。
実家からだと車通勤になっちゃうけど、達郎と破局してこっちに引っ越すまではそれでやっていたんだし。あ、でも、車は引越しする時に必要無いからって売っちゃってた。――バス通勤?
「とん、とん。ちょっと良いですか?」
ナオキ君。
私は何だろうと思って急いでドアを開ける。
それで、はふっと溜息が出た。
ナオキ君は丸くなっていた。
単にパジャマにも出来そうな部屋着を着込んでいるだけだけど、モコモコ素材が彼を可愛く見せていた。男の人を部屋に招く警戒心を剥ぎ取るぐらいに。
「えっと、どうぞ」
「ありがとう。なずなちゃんからのお部屋へのお誘いはとっても魅力的だけど、今はお部屋の外でお友達と遊ばない?」
「え?」
ナオキ君は私の部屋に入るではなく、私こそ部屋に出ようと誘う。
私は彼の誘いを受けて部屋を出て、一階に降りていく彼の後を追う。
「一日一時間でもケージから出してあげてって俺が言ったわけじゃない? それで君は俺の言った通りに茶々を大事に育ててくれている。ならば俺は君達の為に茶々の遊び場を作るべきだと思ったんだ」
一階を降り切ったナオキ君はリビングの隣となる部屋へと歩いていく。
そして、彼が軽くドアをノックしてから開ければ、そこはペットシーツを敷き詰めた何もない四畳半程度の部屋である。
いいえ、私達が入って来るからと茶々を抱いているマサオ君がいる。
先程までのスーツ姿ではなく、初めて見た、部屋着でしかないスウェット姿。
オールバックだった髪の毛はいつものようにぼさぼさに戻っているせいで、彼の日常を垣間見たようでなんだか気恥ずかしい。彼は私の頬が赤くなったのがわかったみたいで、ふっと笑みを浮かべた。
「さあさあ、なずなさん、入っちゃって」
「うん。ナオキ君」
私が部屋に入れば、続いて入ったナオキ君がドアを閉める。そして私もナオキ君もすぐに床に座る。立ったままだと茶々が脅えるから。すると、待ってましたとばかりに、マサオ君は茶々を床に放した。
彼女は一直線に私へと向かってくる。可愛い。
ぷぷぷぷぷぷぷ。
モルモットは音を漏らしながら歩く。
鳴いている訳じゃないのに、ぷぷぷ、と音がするのだ。
不思議だなと思いながら、床に座り込んだ私の膝に両前足をかけて来た茶々の頭を撫でる。
しゅわー。
おしっこね。わかってた。
ナオキ君が購入時に教えてくれた通り、茶々は脅えればおしっこを漏らすし、安心したそこでもおしっこを漏らす。
「あ、なずなちゃんのワンピが」
「平気。これ洗濯機でガンガン洗えるから」
「いや、そう言う事じゃなくて……そっか。本気で茶々は幸せなんだね」
「だな。だから俺達はどうしてもそんななずなちゃんを守りたくなる」
ナオキ君とマサオ君は急に黙り込み、見るからに不穏な顔つき。
茶々も空気が変わった事が不安なのか、てこてこ歩いて私と壁の間に入り込む。
私はナオキ君を見つめた。
マサオ君がわざわざ私を守りたくなると言ったのは、ナオキ君がクリーニング店に怒鳴り込みに行ったらしいことの弁明だって思ったから。
そして私こそナオキ君とマサオ君について、たぶん、彼らが勝手走りしていたことも許せると思う。だって、綾乃みたいな独りよがりな事はしない人達だってことは分かるから。
「言いたいことは言っていいの。聞くわ」
※ 〇ーラアシュレイのファブリック類はなずなの憧れなんです。




