どうしてこうなった?
私の家は見ず知らずの男性達に押し入られかけた。
その事実がどれだけ私を脅えさせているのか、ナオキ君もマサオ君も凄く心配してくれていたようである。
夫婦漫才ならぬ兄弟漫才みたいな会話で私を笑わせ、私が笑った途端に二人そろって、ゆるっとした表情に変わったのだ。
こんなに私を一番に気に掛けてくれるなんて。
でも、私だってあなた方が心配なのよ。
「私を一番に心配してくれてありがとう。でも、私もナオキ君とマサオ君が心配よ。ナオキ君は顔中にあざだらけ。マサオ君のお店には車が突っ込んでいたわ。少しでもいいから、何があったのか教えて欲しい」
マサオ君は目元の笑みをさらに深くしてミラー越しに私に視線を向けたが、この人は誤魔化す気だとなんとなくわかった。
けれど、ナオキ君の方?
運転中の彼がミラー越しでも私に視線を動かすことはなかったが、彼の目元からは笑みが消えていた。そして目元はなんだか暗い。
「えと、もう終わった事で言うのが辛いならいいわよ」
「ぷ、くく。なずなちゃんがナオキに茶々の親に選ばれただけある」
「ど、どういうことですか」
「モルモットは鳴いてコミュニケーションをとる生き物だからね、実は自己主張が激しいんだ。でもさ、結局は人に飼われなきゃ生きていけない生き物でしょう。人間に餌を貰えなくなったらそこで終わり。彼らの我儘も全部受け止めて、野菜が高騰しようがご飯をあげ続けてくれる人にしか彼らを飼うことはできない」
「ナオキ君は私をすごく、すごく見込んで茶々を任せてくれたのね」
「押せばなんとかなりそうなところが、ナオキと一緒」
「酷い!!」
「ハハハ。怒っても怖くないよ。今の君は本気で怒っていないし、大体君達は人に滅多に怒らない。他人からの不条理を怒るどころかぎりぎりまで受け入れて、辛いのは自分のせいだって自分を責める。怒りは不条理に対して湧くものだ。不条理を感じたら怒ってもいいのにね」
マサオ君の声は優しかったが、彼こそ怒りを抱いているようであった。
そう。君達と言ったのだから、彼は今の言葉を私とナオキ君に向けたのだ。
他人から受けた不条理に怒っても良い、と。
だから彼の怒りは私達の不甲斐なさに?
「でも、怒りは怖いよ。兄さん。後先考えない行動で、こんな結果でしょ」
「お前が変なバイトから後輩を助けた事か? あんなのは町に棲み付き始めた半グレを追いだせたからチャラだ。ではなんだ? お前がクリーニング屋に怒鳴り込みに行った事か? よくも大事ななずなちゃんを傷つけたな、と」
え?
私はルームミラーではなく、運転手そのものを見つめた。
艶を失ってくしゃくしゃになった髪はいつも会う時のナオキ君では無いけど、そのくしゃくしゃぶりが私の為に動いていてくれた証に見えた。
「ナオキ君」
「……着いたよ。車庫入れは兄さんがして。俺には無理」
どうして落ち込んだ声を彼が出すのか。
そして、ナオキ君の言う通りに車は目的地に着いていた。
高い塀がぐるりと囲んで建物自体は屋根しか見えないが、その高い塀がどこまでも続いていることで、とっても凄いお屋敷なんだってことは分かる。
まるで時代劇にでも出て来そうな、凄い日本家屋だろうってことは。




