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元婚約者が浮気相手と結婚式を挙げた日に私は王子様と出会った  作者: 蔵前
第二部 第二章 幸運な者は悪意を呼ぶ

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オートロックは実は誰でもドア

 ここはどこか。

 愛する人が住む家の前だ。集合住宅であるが。

 俺はなずなさんの部屋がある建物を見つめながら、心の中で謝った。


 俺達兄弟のせいで、なずなさんの日常に危険を呼んじゃってごめんね、と。

 違った。俺達、じゃない。

 俺だけのせいだ。


 兄は俺が怪我をさせられたから、その復讐で動いているだけだ。

 そのせいで、兄は大きな損害も被った。


 俺は自分の失敗を反省し、だからこそ、兄のように立ちまわれない自分を思い知らされたからと、なずなさんを諦めるつもりだった。


 それなのに、今だっても俺はなずなさんのアパートの前にいる。

 彼女の笑顔を遠くから見られるだけでいいと、俺はここに来てしまったのだ。


 兄から貸して貰った高級車を走らせて!!

 情けない上に、とんだストーカーだ。


 二週間前、俺は半グレ達のリンチに遭い、その後の一週間は痛みのために動けなかった。

 動けるようになってからは、兄に復讐のために駆り出されたり研究室に泊まり込んだりで、なずなさんに会いに行くどころでは無かった。だから俺がなずなさんを思い切れる絶好の状況のはずなのに、時間が空いた途端に俺の体は勝手になずなさんを求めて動いてしまった。


 なずなさんに会えなかった日々が、本当に虚しいばかりだったからだろう。

 俺は達観したよ、復讐って人間には不要だよねって。

 そんな境地に辿り着けたのは、全て兄のお陰だ。


 まず兄は俺が怪我をさせられた事を知るや、その落とし前を付けるために半グレの事務所に単身でご挨拶に行った。が、半グレは兄に謝罪するどころか、その返礼として兄の店に車を突っ込ませたのだ。


 大事な店が半壊になった兄はどうしたか。

 思い出したくはないが忘れられない。


 兄は、半グレの事務所に、十箱分のゴキブリをぶちこんだのだ。


 いくら半グレだろうが、足首までゴキブリに浸かる体験は死ぬよりも辛かったようだ。彼らは梃子でも動かないと居座っていたビルから姿を消しただけでなく、この町からも彼らの姿が完全に消えている。


 兄は本当に凄いよ。

 俺は兄がするようには、絶対にできないだろう。


 兄さんが大成するのは、掲げた目標を必ず達成するまで止めないしつこさがあるからだね。あと、常識破り?

 店で虫に慣れているだろって言うけどさ、ゴキブリじゃない!!

 タランチュラはいけるだろって、平気ですけどね、ゴキブリ系は無理なの。

 餌コオロギの飼育もしてるだろって?

 餌コオロギの世話だって俺は嫌なの!!


 だからね、なずなさん。

 君が送ってくれたメッセは、すさんでいた俺を幸せにしてくれたよ。


「研究者って素敵です。だけど、寝食忘れ過ぎませんように」


 ステキ。俺は君には素敵なのかな。

 君のメッセを読むたびに、俺は君への気持が盛り上がるんだ。

 だから、まだ想い続けていていいかな?

 やっぱり君が大好きなんだ。

 恋人になりたいなんておこがましいことは考えない。

 君の笑顔を目に出来るだけでいいんだ。


 それで俺はここにいる。

 今日は君が絶対に休みならば、買い物に行く君の姿を盗み見るくらいできるかなと突撃したんだ。


 ああ、突撃して良かった。

 舞い戻って来たらしい半グレ共、正しくは二名が、なずなさんの部屋に侵入しようとしているところにかち合えたのだから。


 うん、量販店の安いダウン姿の二人は半グレどころか一般人にしか見えないけど、人の家のドアのカギを器具を使って勝手に開けようとしている時点で犯罪者確定で良いだろう。半グレで間違いなし!!


 さて、なぜ俺がなずなさんの部屋の前の様子がわかったか。

 なずなさんのアパートの入り口はオートロックだが、そこ以外は解放されているという、実は無意味なオートロックであるからだ。


 一階の目隠しを登れば、簡単に一階の共有廊下にダイブインできるんだ。ついでに、外から共有廊下は全室分丸見えであるから、なずなさんの部屋に今にも入ろうとする侵入者など簡単に発見できる。

 というか、そういう見える構造だからこそ防犯にもなるんだけど、なりふり構わない奴には簡単に侵入できる箱にしかならないのが残念だ。

 なりふり構わない奴こそ危険度が高いからね。


 俺は奴らがピッキングに没頭している間に、兄にメッセを送り、110番をし、一階の共有廊下に飛び込んだ。

 俺だって大事な人の砦(モルモット入りのお部屋)ぐらい守って見せる!!

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