切れない過去を目の前にして
私、ちえ、ノッコとハルミ、そして綾乃と優香の六人は、高校で出会って友人となった。大学進学を機に東京組と地元組で分かれてしまったが、それでも長い休みの時には、必ず全員が集まって遊びに行ったりで縁が続いていた。
それが今や、顔を合わせるのも嫌な相手となるなんて。
優香の結婚式の二次会の後日、地元で結婚したノッコと東京で就職していたハルミから、綾乃からの一方的な情報しか知らずに私を責めてしまったことの一応の謝罪があった。
けれど謝罪を受けても元通りにはなれないと、私は彼女達に伝えている。
だって、一方的な情報しか知らなかったからって、ありえないでしょ。
私は婚約のお知らせもしたし、結婚式のお知らせの招待状だって出している。
彼女達は私の婚約者の名前も結婚式の会場も知っていたはずなのだ。
婚約破棄の後、私は私側の親族と招待客全てに、結婚式を見送ることになった詫び状だって送ってもいるのだ。
だったら、優香と達郎の裏切り行為はそれでわかるでしょう。
なのに彼女達は事情など知らなかったと言い張る。
私が横暴に振舞って達郎が精神消耗し、そんな彼を優香が慰めていた内に愛が芽生えた、という綾乃の一方的な説明を信じたのは知らなかったから仕方が無いと? 婚約破棄された私に、達郎と優香を祝福しろ、なんてメールを送るのも?
ちえのように綾乃に与しないことだってできただろうに。
つまり、ノッコとハルミには、私を気遣う気持ちなんて無かったってこと。
私は思い出した憤りのまま、自分の交友関係を壊してくれた原因の二人を真っ直ぐに見つめる。
まずは私の消えたワンピースと同じものを着ている優香に、それはどうしたのかと尋ねるべきか。でも、私が一点ものだと思っていただけで、実はサイズ違いの同じものが複数あったかもしれない。
ナオキ君のママのお店はリサイクルドレスショップだけど、あれはブランド物の中古ではなく、ナオキ君のママがデザインしたオリジナル商品だったのだもの。
では、二人が私に会いに来た理由を尋ねる方がいいかな。
「それで、今日はどうしたの?」
私の出した声は少々どころか、かなりぶっきらぼうだった。
綾乃はやれやれという風に首を横に振る。
「ほんとうになずなはどうしちゃったの?」
「綾乃こそ何がしたいの? 私はもうあなた方と付き合う気は無いのよ」
「そんなんだから心配なんだよ。あんたはさあ、自分を知らなさ過ぎるよ。なんか、自分を過大評価し過ぎている。だからすぐに騙されるんだよ」
何の話だ。
でも、すぐに騙される、は正しいかも。
達郎という「やりたいだけの人」と、婚約までしちゃった。
今ならばわかる。
彼が私と婚約したのは、体の関係は結婚する人以外嫌だと私が言ったから。
なのに婚約者になってもさせなかったから、彼は優香と浮気したのだ。
私は「あんなのとキスまでしてしまった」気持悪さを消してしまいたいと、芳しい香りが立つカップを口に当てた。
コーヒの芳しさに気持ちがゆるっと解け、私の脳裏に笑う王子様が映し出された。明るい茶色の髪も琥珀色の瞳も、光を受けてさらに輝いている。
ナオキ君、だ。
私の癒しの王子さま。




