二人に捧げる恋心
彼等の気持ちと自分の気持ちが解れば、私はそのうちにどちらかを選ばなければいけないのだと気が付いた。
この温かな関係をもう少し望みたい。
でも、それじゃあただのお友達で、達郎みたいに愛一筋に体当たりしてきた女の子に取られてしまうのも確実だ。
ああ、取られてしまうなんて! なんて傲慢なの!
「うわ! なずなちゃんは豪快だね。君みたいな妹が出来ると楽しそうだ」
ハハハ、選ぶまでも無かったですね、マサオ君。
でもね、単なる妹相手に腰が抜けそうないい声を出さないでください。
「そうだよね! なずなさんみたいなお姉さんは可愛いと俺も思っていたんだ。一緒に住めたら楽しいよねって!」
ナオキ君、たら。
ちゃぶ台の前に正座してレタスを千切っている姿は幼稚園児のようで、とってもとっても可愛いけど、今のあなたの台詞は私を失恋させたわよ。
ハハハ、比賀江兄弟二人からの好意は恋愛のものじゃなかった!
一時に二人に恋をして、一時に二人からの大失恋だ!
「ああ、ガス台が三つあって良かった。さあ、」
私の頬に優しい指先を感じた。
マサオ君が私の涙を拭ったのだ。
「いいよ。トマトソースも俺が作る。今日は心が疲れちゃったでしょう。何も無かったかもしれないけどね、それが解るまでは地獄を歩いていたでしょう」
「マサオ君」
私の涙は自分本位な失恋の涙だったのに、マサオ君は私の涙を茶々を心配しての心労のものだと勘違いしてくれた。
「あなたは優しいのね。お店で死んじゃう子がいたら、あなたはとっても苦しいのでは無くて?」
私に向けていた温かな黒い瞳は優しく微笑み、その時は君の胸を貸してくれる? なんて言った、擦れた低い声で。
わあ!
「君が慰めてくれるなら、俺は大事なリクガメが死んでも立ち直れそうだ」
うわ! さらに今度は腰が砕けそうなぐらいの深くていい声を出して来た!
妹ですよね、私は妹属性なんですよね、あなたには!
「え、えと」
「うちの店には※リクガメいないじゃないの!」
※パンケーキは甲羅が平べったいリクガメです
あ、ナオキ君。
「例えでしょうよ! 例え! ※長生きで高価な爬虫類を現わすには最適でしょう」
※パンケーキも20年生きます。現在は絶滅危惧種で商取引できない(売っていても超高価)存在となりました
「兄さんの例えはでっち上げが多いじゃないの」
「俺が何かでっちあげたか?」
「妹なんて言ってるくせに! なずなさんに近すぎでしょう!」
マサオ君はハハハハと喉を震わせるいい声を出して笑い声をあげると、私にナオキ君が子供でごめんね、と謝って来た。
「あいつに呆れて嫌わないでやってね」
「もう、マサオ君たら。嫌うわけ無いわ。今日は凄く頼りになって、ええ、私はナオキ君が大好きだもの」
「それは間違っているよ!」




