パスタ闘争
パスタはバター醤油味にするか、トマト味にするか少し揉めている。
ナオキ君はバター醤油味が食べたいらしいのだが、マサオ君はトマト味が食べたいとの事だ。
私は一週間前のデシャブだ。
なぜ私の部屋に比賀江兄弟が揃っているのだろう、という。
ナオキ君は私が連れ込んだが、その五分後にマサオ君が我が家を訪ねて来たのである。
「新庄に聞いた。なずなちゃんは大丈夫だったかな?」
マサオ君は私を心配して私を訪ねてくれたのだ。
お得意さんへのご機嫌伺いじゃなくて、普通に友人を心配するように、だ。
私は彼の為にオートロックも玄関のドアも開けてしまった。
ナオキ君には不用心と叱られちゃったけど、私は比賀江兄弟から純粋に好意を寄せてもらっていたのだと、今この時になってようやく自分に認めたのでもある。
どうして違うと思い込んでいたのか。
好きになってから達郎に捨てられた、という体験からだ。
達郎と性行為をしたくないと思っていたのに、それでも達郎との結婚を私は考えていたのだから、やっぱりそのぐらいには達郎は私の大好きな人だったのだ。
そして婚約破棄後に出会えた比賀江兄弟は、達郎が絶対に彼らの足元にも及ばないほどの優しくて思いやりのある人達だ。
達郎への好きを忘れるぐらいに好きになってもおかしくない。
でも、とっても好きになってしまったことで、私は彼らにそっぽを向かれた時点で今度こそ心が死んじゃうだろう。きっと。
「どうしたの! なずなさん! ああ、涙が! 俺達がくだらない事で喧嘩していたから怖くなっちゃった?」
あ、私ったら涙が出ていた?
「い、いや。あくび。そう! いつ決まるのかな~って」
ナオキ君はあからさまにほっとした顔を見せたが、私の左腕は立ち上がった男によって上に引かれた。
「なずなちゃん、待たせてごめん。うん、バター醤油味にしよう。それなら俺は得意だから一緒に作ろうか。さあ、さあ」
「まあ! ナオキ君がバター醤油味が好きなのはそういう事なのね。私もマサオ君のバター醤油味のパスタが食べたいわ」
「ハハハ。俺こそなずなちゃんのトマトソース味が食べたかったけどね」
「違うよ! 兄さんのバター醤油味は確かに美味しいけどさ、俺は普通に和風スパが好きなの。なずなさんの和風スパが食べたかっただけだよ!」
この二人は!
「じゃあ、私がトマト味担当で、マサオ君はバター醤油味。二つ作って取り分けっこしようか」
「あ、じゃあ俺がサラダ盛り付け担当!」
ナオキ君もウキウキで立ち上がって私達の所に寄って来たが、弟には強権力者の兄が犬にハウスというようにちゃぶ台を指さした。
「三人が立ったら台所が狭いだろ。ナオキ、お前はちゃぶ台でサラダを盛りつけていろ。茶々もいるんだ。寂しくはないだろ」
ぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷい。
あ、茶々が呼ばれたって嬉しそうに返事している。
「良かったな。彼女が呼んでいるぞ」
「兄さんは! 最低だよ!」
ああ、いつまでもこの二人と一緒にいたいと思ってしまう。




