あなたは喋らない方が良い
何も考えずに爬虫類館というペットショップに飛び込み、何も考えずに叫んでいたが、そこで私はようやく脳みそが動いたのだ。
ピンクマウスって、一体いくらなんだろう。
珍しい毛色だったら高いのかな。
あ、でも、餌用でしょう。
という、あんまり動いていない思考でしかなかったが。
「どうぞ、こちらになります。」
葛藤している私の手元、カウンターについている両手の間に、高さが五センチくらいで15×25の白い箱が差し出された。
え?
ハムちゃんはこんな薄っぺらくない!
もしかして、ピンクマウスって、いかがわしい薬の隠語だった?
そうよ、風俗でピンクってよく使われるじゃない。
「いえ、あの、これは私は。」
私は顔を上げてその先が言えなくなった。
目の前には男性店員がいたのだが、私は彼に圧倒されてしまったのだ。
色白の彼は薄茶色のミルクティーのような色をした髪をしていて、髪形は長めの短髪で、丸っこい形に見えても毛先が跳ねているので躍動感がある、というものだ。
ぱっちりとした形の良い目の瞳の色も薄茶色で、まるで琥珀色か鼈甲飴のようだ。
彫りが深く鼻筋も通っているが、鼻筋は女性的で形が良い。
元婚約者なんてどうでもよい程の、とっても素敵な若い男の子だったのだ。






