いざ、出陣へ
私はナオキ君を右腕にマサオ君を左腕に、という両手に花の状態で優香と克郎の二次会に現れた。
参加費用五千円だが、私は払い、尚且つ、五万包んで受付に渡した。
受付は私が来ることを知っていた癖に、私に唖然として見せた。
「え、えと、なずな、来るとは聞いていたけどさ、大丈夫なの? いいんだよ」
千絵はそういえば、私にメールを打って来なかった人だった。
のほほんとした雰囲気で、ノリが悪いってよく言われてた、綾乃に。でも千絵は、人の悪口を絶対言わない気遣いのある優しい人だった、と思い出す。
「ありがと。みんなから来いって、借金取りみたいにメールが来るから。綾乃は引越し先まで押しかけるし。仕方が無いよ。でも、ちえに会えたから来て良かったよ」
「はあ。綾乃は自分の思い通りにならないと煩いからね。なずなの家にまで行って、おばさん達に友人から慰謝料がどうしたって騒いでいるの知っている? あたしらにはさ、なずなにどうしてメールを打たないんだって説教しに来るし、何様だよって感じ」
のほほんさんで悪口を言わない千絵が、怒ってた。怒ってくれてた!!
私は千絵のお陰で、両親が世間体と言ってた意味もわかったし。
――婚約者を親友に取られたからって親友に慰謝料を請求したりって、人間味が無いのではありませんか!
こんなセリフを毎日ご近所に聞こえるぐらいの大声でがなられたら、それはそれは精神に来ることだろう、世間体第一の母に。
慰謝料を返して元の友人達と仲良しこよしをすれば、今後は綾乃の来訪は無くなる、そう考えたのかもしれない、母が。
「そ、そっか。ごめんね。迷惑かけて」
「ハハ、迷惑かけたのは綾乃こそ、でしょう。気にしない。引っ越し先はどう? って、いい感じなのね。あとで両脇の方々を紹介してくれる?」
私は親友のままだった千絵に微笑んでいた。
そこで終わればいいものを、私の両脇は急に動き出した。
「あ、僕はナオキ君です。ごめんなさい! なずなさん一筋なの」
「あ、俺はマサオ君。君はいい感じだよね。後でお話ししよう!」
なんとなくナオキ君よりもマサオ君の方がおかしな動きをしそうだったので、千絵には後でと言って会場に入った。
私が会場に一歩踏み出すと、当り前だが誰もがざわついた。
友人だった人達に笑顔で挨拶をしながら、私達は主役の二人のいる場所へと移動していき、私は終に彼らの前に出た。
私を裏切った二人。
もうすでに、全く傷ついてもいない自分がいたという再確認をさせてくれた二人。
達郎は私の姿に口元を引くつかせていた。
うん、口元が引き攣って無くとも、今の私の目は素敵だとあなたを思わない。
優香は私の両隣の眩しさにただただ驚いた顔を見せていた。
あなたは異性にもてる、それだけが自慢だった人だものね。
「結婚おめでとう。私は全然気にしていないから、二人で幸せな未来を築いてね。わたし、お陰でこんなに素敵な二人に出会えたのよ!」
私が隣町に逃げなきゃ出会えなかった人達だ。
少し変人な二人かもしれないけれど、ナオキ君は言っていたもの、デメリットを知った上で愛せばいいって。
でも、ちょっと変な人、を凌駕しちゃうくらい凄く優しくて、初対面な私の為に一肌脱いでくれた二人なのよ。
だから最高の人達なんだよ。
本当に出会えてよかったって、本気で思っている。
「俺にはさせなかったくせに、そいつらとはやりまくったのか! 大体、お前がさせてくれなかったから、俺はこいつと結婚するハメになったんだろうが!」
ナオキ君は達郎に飛び掛かりそうで、マサオ君は私が無垢とは天恵だと喜んだ。
そして、妊婦のはずの優香はわあっと大声で泣き出した。
「う、うわ。えっと、だって、達郎のキスじゃその気に、というか、先に進んでもいいとはどうしても思えなくって」
なんか、べちょっとくるキスで、好きでもウンザリしてしまうものだった。
唇と唇が触れ合うまでは良いのだが、その先が……うん、べっちょり。
「どういうことだよ! 俺のキスが嫌って、俺の事が好きじゃなかったのか!」
「え、あの。だって、その時は好きだからべっちょりなキスでも我慢していたんだよ! 好きじゃ無かったら気持ち悪いだけだったよ!」
それでも好きだと思っていたから、初夜までに自分の意識改革をするべきだって、少しはエッチな本や映画も見ていたのにな。
「なんか、期待外れっていうか」
「待って、なずなさん。達郎のHPが残っていない!」
ナオキ君の笑いを含みながらも焦った声に私ははっとして我に返り、私と達郎を見守っている見覚えどころか親交があった人達の全目線を浴びていた事に気が付いた。
優香の泣き声は、うおおおん、とさらなる大声と変化している。
うわ、場を台無しにしてしまった。
「じ、じゃあ、帰るね。私には可愛い家族が家で待っているの!」
「なんだよ。そうか! その男達は金でも使って雇っただけか! その家で待っている奴を連れて来れば良かったじゃないか!」
なんで達郎が怒り出すかわからないが、私はスマートフォンの動画を呼び出して翳してやった。
「見て! モルモットの茶々ちゃん! すっごく可愛いのよ!」
「はっ、帰っても俺がいない寂しさをモルモットで埋めたか」
「ええ~。結婚しても私の方が帰りが遅いはずだったよ。でもきっと達郎は気が利かないからご飯は作ってくれそうもないよね。だったら、可愛いばっかりのモルモットの方が良いじゃない。うん、気付かせてくれてありがとう。モルモットの方が達郎よりいい!!でね、この子は希少種なの。ティディちゃんって種類なのよ」
「やべ、達郎ってばオーバーキルだよ。なずなさんって、凶悪」
「凶悪すぎる可愛らしさ、だな。弟よ」
もう二人ったら!
でも、うふふと可愛い茶々の画像に私はうっとりする。
うん、ドアを開けたら達郎がいる未来よりも、茶々が出迎えてくれるこれからの毎日の方がずっとずっと素敵だわ。




