計画29
立食パーティーも中ごろまで進んだころ、別室ではマクスと国王がセバスと近衛兵長のみを連れてお酒を飲んでいた。
マクスが用意したのは白ワインである。
この世界のワインについて軽く触れておこう。
この世界は赤ワインが主流であるが、パニーニ王国の貴族や王族からは少しだけ敬遠されがちである。
理由は単純である。
パニーニ王国では赤ワインを製造しておらず、全てが輸入品なのである。
なので赤ワインに何が入っているかわからず、必ず毒見役が確認してから飲むようにしているのである。
だが、毒見役に志願する者はほとんどいない。
当たり前である。
自ら死ぬかもしれない役目をやりたいものなどいない。
さらに言えば、過去に赤ワインに毒が仕込まれていたことがあった。
毒見役がその赤ワインを飲んで死んでしまったのは有名な話である。
そのことが理由で、現王国には毒見役は1人もいない。
なので絶賛募集中である。
話しは少し逸れたが、そのような経緯があったためにパニーニ王国の貴族や王族から赤ワインは少し敬遠されがちなのである。
だが、白ワインは違う。
白ワインはパニーニ王国でも製造しているため、安心して飲めるのである。
危険が絶対にないとは言はないが、赤ワインを飲むよりは安全である。
何より、パニーニ王国の白ワインは味がくどくなく爽やかであり、甘みが強いため人気である。
「うむ。やはりワインは白に限るな。」
「その通りですな国王陛下。」
チィンッと乾杯する。
「ここでは国王陛下ではなく、ロイゼンとしてお前と話したい。」
マクスから笑顔が消える。
「・・・ロイゼン殿がそう言うということは問題が生じたと?」
「ああ。」
ロイゼンは顎で近衛兵長に指示する。
近衛兵長は頷き、懐から一枚の紙を取り出す。
マクスが支持する前にセバスが動き、紙を受け取る。
「どうぞ旦那様。」
「悪いなセバス。」
マクスは紙を受け取り、一通り読んで少しだけ目を閉じる。
「いかがなさいましたか旦那様。」
「ロイゼン殿、セバスにも良いか?」
「構わんよ。私もセバスのことは近衛兵長の次に信頼はしている。」
「感謝します。セバス。」
「ハッ!」
セバスは紙を受け取り、読み始め目を見開く。
「なんと!これは真ですか近衛兵長!」
「ああ。確かな筋からの情報だ。」
信じられないものを見て、顔に少しだけ恐怖の色が出る。
「なるほど。このことが真の理由でしたかロイゼン殿。」
「うむ。ルーティンの祝い事が近いというのにすまないなマクス。」
「ハハハ!本当ですよ。この犯人が分かり次第、私直々に首を刎ねたいぐらいです。」
「ハハハ!・・・本音が漏れておるぞ?」
「これは失敬。」
近衛兵長は背中に汗をかく。
それはマクスの目に本気を感じたからである。
この者ならやりかねない、そう感じせずにはいられないものを感じたのだ。
「旦那様、失礼ながら陛下にお聞きしても?」
「良いぞ。」
セバスはマクスに頭を下げ、ロイゼンに向き直る。
「申せセバス。」
「ハッ!恐れながら、このことを知っている者はいかほどでしょうか?」
「うむ。ここにいる者と私の息子2人、それから外交を任せている大臣1人だけだ。」
「お答えいただきありがとうございます陛下。」
「ハハハ!よいよい。」
セバスは下がる。
「聞きたいのは簡単なことだ。どう思う?」
“どう思う?”これは単純な質問ではない。
遠回しに犯人に心当たりはあるか?と聞いている。
ロイゼンの笑顔の後ろにはハッキリと分かるほどの怒りが感じられる。
それは知らぬと答えられるほど、マクスとロイゼンの間は低くない。
互いに信頼しているからこその質問である。
そのことをセバスも近衛兵長も理解している。
だからこそ、2人はマクスの答えを一言一句逃さないように耳を澄ませる、
この答えによっては“敵”を認識することになるからである。
「そうですな。」
マクスはゆっくりと自分のこめかみを指でとんとんっと叩く。
「私の知る限り、このようなことを考えることができる離反者は2家しか浮かびませんね。」
「ほぉ。」
目で先を促す。
マクスは情報の洩れを考え、セバスにあるものを持ってくるように目で促す。
瞬時に理解したセバスは部屋の扉を開け、メイドの1人にある物を持ってくるように命令する。
「ハハハ!相変わらずマクスは用心深いな。」
「ルーの誕生パーティーが近いのです。なるべくなら争いごとは避けたい。」
「うむ。確かにな。ルーティンにはこのような部分はあまり見せたくはないな。」
「まったくです。ルーには純真でいてほしいのです。」
「ハハハ!私もそう願うよ。」
扉のをノックする音がし、セバスが受け取り、マクスに渡す。
マクスは食パンと筆、ソースのようなものが入った入れ物を受け取る。
ロイゼンは何をしようとしているかわからない。
マクスは筆で食パンに何かをさらさらと書く。
「ロイゼン殿、小腹がすきませんか?これをどうぞ。」
マクスは食パンを渡す。
「これは?」
「ルーが考えた遊びです。食パンにチョコソースを使って絵を描いたんです。」
「ハハハ!これは上手いな。だが、すまない。今はワインを楽しみたい。これは近衛兵長が食べなさい。」
「へ、陛下?」
ロイゼンは頷く。
何かを察し、食パンを受け取りかかれたものを読んで食べる。
跡形もなく。
「おいしいですかな近衛兵長殿。」
セバスはニコっと笑う。
「ああ。大変美味かった。」
密かに何かが動き出した。




