計画25
カンッカンッと木の当たる軽快な音が広場に響く。
ルクスは一歩も動かずにルーティンの攻撃を受け続ける。
その目は真剣そのもので、1つ1つの動きを細かく観察している。
「はぁはぁ。」
僕が疲れてきても、兄上は何も言わない。
僕はいつまで続ければいいのかわからない為続ける。
いつの間にか、音を聞きつけて家の騎士たちが集まりだす。
騎士と言ってもここにいるのは見習いである。
騎士団長以下、騎士たちは国王御一行の出迎えで全員出払っている。
本来なら見習いも列に並ぶのが正しいのだが、僕が外に出られない為、残ってもらっている。
「はぁはぁ。」
次の一撃を討とうとした時、兄上は一歩下がった。
「そこまで!」
僕の木剣を包み込むように受け止める。
力が一気に分散させられたことに僕だけが気づく。
「なかなかいい筋だぞルー。」
「はぁはぁ。ありがとうございます兄上。」
「ああ。・・・去年なんかは剣を握ることもできなかったルーがなぁ。」
ルクスはしみじみと昔を振り返る。
「よくここまで成長したなルー。」
「はぁはぁ。はい!」
「剣の稽古をしていたな。」
「はぁはぁ。はい。・・・嘘をついてすみませんでした兄上。まだまだ未熟だったので隠しておきたかったのです。」
「そうか!だが、何も恥ずかしいことはないぞルー。これほどの腕を5歳のお前が身に着けているのはすごいことだ。俺なんかはルーと同じ年の時なんかは筋トレで精一杯だった。・・・ルーは俺の自慢の弟だ。」
そう言って兄上は僕を抱っこする。
「あ、あにうえ!?」
「ハーハッハ。疲れただろうルー。兄が部屋まで運んでやるからな!」
「は、恥ずかしいですよ!?」
「気にするな!」
「気にしますよ!」
周りの目は微笑ましいものになる。
サリアの目が特に優しく、まるで母親のようである。
だが、ミリアなぜ君だけは羨ましそうに見るんだ?
もしかしてミリアも抱っこされた・・・違うよね、君の場合は僕を抱っこしたいんだよね、うん知ってた。
僕は兄に抱えられながら部屋に戻った。
だが、すぐに兄上は父上たちに呼ばれてかなり怒られていた。
「国王陛下、この子が息子のルーティンです。」
今、僕の目の前にはこの国の王と王女がいる。
緊張を表に出さないように注意しつつ僕は自己紹介をする。
「初めましてルーティン・リア・マカベルグです。」
僕は子供らしく元気にお辞儀する。
「ハハハ。しっかりしているな。うむうむ。」
国王は立ち上がり、僕に近づいてくる。
「私はこの国の王、ロイゼン・ブール・パニーニである。ルーティンよ、この名を覚えておくのだぞ?」
「はい!」
「ハハハ。元気な子だ。」
国王は笑顔で僕の頭を撫でる。
僕はくすぐったくて笑う。
その笑顔が国王の心を打ったらしい。
歓喜に震えている。
「この子は素直ないい子だなマクス。・・・養子に欲しいくらいだ。」
「・・・いくら国王陛下といえど、許されないことかと。」
「そこを何とか・・・。」
「なりません!」
父上の目が鬼神の様に恐ろしい。
「だって家の子たちは皆、子供らしさがないんだもん。」
「何か言いましたかお父様?」
王女の後ろに何かが見える。
いや、見なかったことにしよう。
「ハハハ。何でもないぞ。」
国王の目が笑っていない。
「まったくもう。」
王女は気を取り直して、僕の側に来る。
「パニーニ王国第5王女アーリア・ブール・パニーニです。うふふ。よろしくね。」
「はい!」
「あ~流石はルクス様の弟さんだわ。とても可愛い。」
アーリアが僕を抱きしめる。
「あ、あの~。」
「とっても可愛いわ。将来はルクス様との間にもルーティン様のような可愛い子が産まれるのですね。うふふ。幸せだわ~。」
何やら自分の世界に入り込んでいるらしい。
僕は逃げ出すこともできないので、困惑だけしておく。
「こらこらアーリア。ルーティンが困っているではないか。どれルーティンよ、私の膝の上に乗ってみないか?」
「ダメよお父様、ルーティン様はまず私の膝の上に乗るのです。ね~ルーティン様。」
“ね~ルーティン様”っじゃないですから!
いい加減に離してくださいよお姫様!
色々当たって正直、兄上に申し訳ないから!
「ハハハ。その辺で許してくれませんかお二方。これからお食事の時間になりますので。」
おっと、ついに勝負の時だな。
「むぅ?もう少しいいではないか。」
「そうですわお義父様。」
「ですが陛下。」
「申し訳ありません国王様、アーリア様。ルーもご飯を楽しみにしていたのです。その辺でお止めになってお食事にしましょう。それに今回はルーが考えた料理なのです。」
「なんと!?それは本当かなリリス。」
「ええ。本当ですわ国王様。」
「うむ。ならば、食事にしよう。アーリアも良いな?」
「ええ。」
僕は離される。
流石は母上、安定と信頼が揺らがないな。
こっそりと安堵したのは内緒だ。
「楽しみだわ。ルーティン様が考えた料理。」
アーリアがニッコリと笑う。
「ええ。ぜひ、お楽しみにしてください。」
「それではこちらへどうぞ国王陛下。」
僕は母上と手をつなぎ、父上先導で大広間に向かった。
これからが勝負である。
僕は手が震えないように力を込めて握った。




