計画Ⅱ 11
町から少し離れた場所、そこにマカベルグの屋敷がある。
周りを林に囲まれ、入り口には騎士二名が立っている。
「こ、ここが。」
ブランは屋敷前で立っていた。
「ぼ、坊ちゃん!」
少し遅れて爺やも合流する。
「い、いったい何を・・・。」
「理由を聞きに来た。」
「り、理由?ですか。」
「ああ。適当にぶちまけた俺が受かって、何で努力し続けたあいつが落ちるんだ。理由を問いただしてやる!」
「それを世間では抗議、というのですが。」
「うるせぇ!とにかく行くぞ!」
地響きを立てながらブランが歩いて行くと、すぐさま騎士たちが前を立ち塞ぐ。
「ここへは何の御用でしょうか。」
「俺は合格者のブラン・バイエルン!通してもらうぞ!」
「合格者・・・ルーティン様の護衛騎士試験の合格者ですか。確かにこちらの資料と相違はないと見受けられますが、何故お怒りに?理由をお話しください。」
「理由を知りたいのはこっちだ!何なんだあの試験は!」
「は、は?」
「意味の分かんねぇ筆記試験から始まり、圧迫のような雰囲気の面接。適当に済まして帰ろうと考えていたら受かるし、真面目に努力した奴は落ちるしで意味わかんねぇよ!!おい!あのガキを呼べ!すぐにここに呼べぇぇぇぇぇ!!!!」
「ちょ、ちょっと!?」
押し通ろうとするブランを二人の騎士が止めるが、それでもブランは引き下がらない。
チラッと後ろにいるご老人に目を向けるが、肩をすくめるだけで何もしてくれない。
騎士たちは目で示し合わせ、片方が応援を呼びに行く。
気がつけば、事態は大事になっていた。
(どうしてこうなったのぉ?)
右往左往する使用人や騎士たちが気になったルーティンは適当なメイドを捕まえて事情を聴く。
すると、自分が合格にしたブランが入り口で暴れているということを知った。
理解ができなかったルーティンは窓から覗くと、確かにブランが暴れているのが目に入る。
騎士たち五人がかりでもブランは押さえつけられていない。
着実にゆっくりとこちらに近づいてきている。
「坊ちゃま!避難しましょう!!」
事態を聞きつけたミリアが急いでルーティンの下に駆け寄ってくる。
「避難って・・・僕は何処へも行かないよ。」
「ですが!」
「そもそも何で彼は怒ってるの?何か失礼なことでも?」
「いいえ。突然怒りながら現れ、坊ちゃまを呼べって騒いでいるそうなんです。まったく迷惑な人です!」
(僕を呼べ?何故?面接以降会っていないのに?そもそも怒ってるって・・・何かしたかなぁ。思い当たる節ないんだけど。合格したことに怒っているのならますますわからないし・・・。)
「う~ん。」
「とにかく避難しましょう!」
ミリアはルーティンの腕を掴んで連れて行こうとするが、すぐにルーティンに止められてしまう。
「ぼ、坊ちゃま!?」
「ミリア。それよりもヴェルグを呼んでくれない?」
「自分ならここにいますよ坊ちゃん。お呼びでしょうか?」
(う~んやっぱり慣れないし、そのうち元の口調になるように頼み込もう。)
「うん。一緒に来てくれないかな?彼の話を聞きたいんだ。」
「坊ちゃま!!?」
「畏まりましたが、よろしいんですか?危ないのでは?」
「その為のヴェルグ、でしょ?」
「ハハハ!確かにそうですね。では、行きましょう。」
ミリアの制止を無視し、ルーティンはヴェルグと共に暴れるブランの下へ向かった。
「放せ!!俺は理由を聞きに来たんだ!!」
「だったら落ち着いてください!」
「どうしてそんなにお怒りなんですか!」
「うるせぇぇぇ!!!」
(実際に近くで見ると、相当怒ってない?マジで何で?)
騎士の一人がルーティンに気づき、ヴェルグに掴みかかる。
「おいヴェルグ!お前何を考えて!!?」
それ以上は言わせないようにルーティンは手を挙げて発言を阻止する。
「皆さん、彼を放してあげてください。」
ルーティンの声に騎士たちは反応するが、どうするか迷う。
「安心しろ。俺が坊ちゃんを守る。」
その声に少しだけ力が緩み、その隙をついてブランは突破する。
突破した先に立つルーティンの前に立ち、肩で息をする。
二人が目を合わせて数分。
特に何かが起こるでもなく、ただただ無言でお互いを見ている。
(・・・この時間何?)
「あの~・・・。」
ブランはルーティンの声と同時に膝をつき、一気に頭を下げる。
「へ?」
「理由を!理由を教えてください!!」
「・・・はい?」
頭の中で整理できていないままに、ブランは思ったことをぶつける。
「お、俺は!あんたの試験を適当に受けたんだ!領地を兄が継ぐからお前は騎士にでもなれって親父が!で、でも!あんたの凄さを見て、ビビッて、受からないように適当にやったんだ!な、なのに!なのにどうして!!どうして俺が受かるんだ!!?教えてくれ!」
懇願するように叫ぶブランに、ルーティンはゆっくりと同じ目線になる。
「えっと、ブランさんは僕の護衛騎士試験を適当に受けたんですか?」
「そ、そうだ!で、でもあいつは!!あいつは本気で頑張って!」
「あいつ?・・・とにかくここでは落ち着いてお話しも出来そうにないので、こちらに来てください。」
ルーティンは立ち上がると、ブランを中庭へと誘った。




