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計画Ⅱ 10

「やってやった・・・ぜ。」

試験会場を後にしたブランは、セバスとの待ち合わせ場所に向かう。

複雑な気持ちを抱えて。

(てか、俺何やっちまったんだろ・・・。突然なんか吹っ切れたっていうか、どうでもよくなったていうか。あー!マジで俺の馬鹿!何で取り繕わなかったんだ!?合格したければ取り繕うだろ普通!!でも、あんな人の下で働けるかどうかと聞かれたら・・・自信ねぇな。はぁ~。本当にどうすっかな。不合格は間違いないし、今のうちに新たな就職先を?いやいやまだ働きたくねぇな。でもなぁ・・・どの面下げて実家に帰れと?)

頭の中を後悔と安堵がグルグルと駆け巡り、答えの出ないままにブランは待ち合わせのカフェに着く。

「お帰りなさいませ坊ちゃん。早速で大変恐縮ではございますが、試験の方はいかがだったでしょうか。」

「あ~・・・まぁ、その、なんだ。とりあえず何か飲ませてくれ。」

メニューから適当な飲み物を頼み、一口飲んでからブランは口を開く。

「・・・やっちまった。」

「はい?」

「だから!・・・やっちまった。」

「・・・申し訳ございませんが、おっしゃっている言葉の意味が理解できませんが?」

「そのな?俺も受かろうとは、心の何処か~に、あったんだと思うんだよ、うん。けどな、その、なんだ。あ~・・・そう!あのルーティン様だからな!俺よりもお似合いの騎士が・・・。」

「なるほど。ひよったと。」

「・・・うん。」

「ふぅ。坊ちゃんはいつもそうだということを、この爺や、知っていたにも関わらずに注意を怠ってしまいましたな。真に申し訳ございません。」

「いや爺やが悪いわけじゃ。」

「ええ。臆病風に吹かれたことは私の責任ではありません。それを知っていたにも関わらずに念を押さなかったことに謝罪をしているのですよ。」

「だよな・・・はは。」

カップに入っているお茶を飲み干し、新しいものを注文する。

「坊ちゃんは昔からそうでした。坊っちゃんのお力ならば問題なくできることも、臆病風に吹かれてやらないで逃げてしまう。ずっと逃げ続けている人生です。あの女(ひと)だって・・・。」

「あいつのことはいいだろ。兄上が娶ったんだから。」

「・・・ですが、あの日、あの場所で、坊ちゃんに言ってほしかったと思いますよ。『はい。』と。」

「うるせぇ・・・。」

それ以上聞きたくなくって、ブランは顔を伏せてしまう。

爺やもそれ以上、何も言えずにただ時間だけが過ぎていく。

「・・・。」

「・・・今のうちに盗賊のことを調べておきますか?」

「・・・うん。」

騎士になることをブランは完全に諦めてしまった。

次の日から部屋に引きこもり、毎日爺やが持ってくる求人情報を見ず、山積みにしながら無為に過ごした。

気がつけば、騎士試験の合格発表の日。

「どうするのですか。」

「・・・はぁ。」

不合格なのは確実だが、流石に自分の目でしっかりと見ておこう。

その思いがブランを突き動かし、掲示板の前で目を丸くしたのだ。


合格者・・・ブラン・バイエルン 以上。


「・・・は?」

悲痛な声や涙声が響く中、ブランの頭の中は混乱が起きていた。

目をこすってしつこいぐらいに何度見ても、自分だけが合格しているのだ。

「ぼ、坊ちゃん?」

「いやいや・・・いやいや!・・・いやいやいやいやいやいや!!?」

掲示板に噛り付くように見ても受かっているのだ。

その様子を見た他の受験者はブランが落ちたと思い、同情の気持ちを込めて肩を叩かれる。

が、受かっているのだブランは。

混乱し、考えがまとまらない中、ブランはハッとなり辺りを見回す。

その中に去って行く見覚えのある人影。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!?」

人ごみをかき分け、ようやくの想いでその人の肩を叩く。

息を整え、その顔を見る。

「や、やぁ!君か。」

泣き腫らしたように赤い瞳。

ブランの中で物凄い勢いで罪悪感が芽生え始める。

「ふ、フーカ!その、あの・・・。」

言葉は出てこない。

それはブランが逃げ続けてしまった結果である。

「すーはー・・・。おめでとうブラン。」

「あ、いや、え?あ・・・。」

「ははっ。変な顔になっているぞブラン。」

「っ!」

「・・・色々取り繕っては見たんだが、やはり私は騎士になりたかったみたいだ。」

「フーカ・・・。」

「私はな、ブラン。実を言うと、貧民街出身なんだ。父親のいない私は母親が精一杯愛情を注いでくれた。だから恩返しをしたかった。結局傭兵家業になって母親を泣かしてしまったが、今回のチャンスを知ることが出来た。だから今度こそは!って。君に嘘をついてしまってすまない。」

「いや、いや!そんなことはどうでもいい!ふ、フーカ!少しだけ俺に時間をくれ!」

「うん?どういうことだ?」

「いいから!」

ブランはフーカを置き去りにして走った。

ルーティンのいる屋敷に向かって。



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