計画Ⅱ 9
「はぁ~。」
「お疲れルー?」
「ううん。大丈夫だよマリ姉ちゃん。」
今日までに何人の面接をしたんだろう。
ふと、そんなことを思ってしまうが、それでも目ぼしい人材にはあまり当たっていない。
それもそのはずだ。
基本的にこういう試験において筆記試験はともかく面接試験で自分を出そうとする者は少ない。
当たり障りのない定型文に、自分の色を少し加えるだけ。
(正直・・・皆が皆全員、ありきたりすぎる。)
これまでの面接を思い出しては、この先の人達には申し訳ないが期待が出来ない。
ルーティンが求める人材。
それはありのままの自分を隠すことも、飾ることもなく、惜しげもなく披露してくれる人材なのだ。
(前世の僕だったらここに受けに来た人のほとんどが受かったんだろうなぁ。でも悲しいかな。あの経験を経てしまった今の僕では定型文の応用は不信感しか湧かない。自分を隠して何を考えている?飾った貴方が本当の貴方?そんなことばかり考える自分が少しだけ嫌になるなぁ。)
「次の方で本日の面接は終了になります。坊ちゃま、頑張りましょう!」
「うん。次の人をお願い。」
ルーティンの言葉にお辞儀で応えたメイドが部屋を出て行く。
(ま、もし仮に偽らない自分を出す人がいたら即採用だな。そんな人いるとは思わないけど・・・。)
(はい!いましたよ!えー!?何その挨拶?馬鹿にしてるの?いいね!実にいいね!これは期待で胸が膨らみますなぁ!!)
マナーなんてあったもんじゃない。
試験官の許可なしに部屋に入り、椅子に横柄に座る。
しかも挨拶は馬鹿丸出し。
一発でルーティンの合格ラインを突破した男が現れたのだ。
そんな人物を見ては、笑いを堪えられるわけがない。
「ぷっ。あはははは!」
ルーティンは久々に腹の底から笑った気がした。
「あ~・・・なんか面白い事言いましたかね?」
「いや、ごめんね。ここまで型破りな人はいなかったからつい。気を悪くしたなら謝ります。」
「いや別に・・・。」
ルーティンの笑いで時が動き出したマリネは、嫌悪の表情で机を思いっきり叩きながら立ち上がる。
「貴方ね!何ですかその態度!ここへ何しに来たと思っているんですか!」
マリネの怒声に我を取り戻した他の者たちも鋭い眼つきでブランを凝視する。
「いや~すいませんね。さっきも言った通り領主の次男坊なもんで。我がままし放題生きてきたから礼儀なんて知らないんですよ。お気に障ったのならすいません。」
ヘラヘラした態度で、全く悪びれている様子がうかがえない。
それがマリネだけでなく、マクスやミリアの額に血管を浮かばせた。
「あなた!坊ちゃまの騎士になる覚悟は無いんですか!」
「覚悟・・・ですか?」
「そうです!坊ちゃまを命に代えても守るという騎士道精神です!」
(うん。僕自身はそんなのいらない。)
「と、言われても俺はある程度しかないかなぁ。命を落とさない範囲で守りますよ。」
ミリアの握られた拳が震える。
「・・・ブラン君、だったかな。確かバイエルンの町出身だったね。」
「そうですね。」
ブランの態度が気に入らず、マクスの眼光が増々鋭くなる。
「話には聞いている。が、それはどれも君には当てはまらない感じだな。君の父上は質実剛健を絵に描いたような人物だと聞いているが?」
「まぁ、そうですね。」
「失礼だが、君は本当にバイエルンの次男坊なのかね?」
「よく言われますよ。でも、事実ですから。それに父のその姿勢を色濃く受け継いだのは兄のゴードルで、俺は残りもので出来てるんで。」
騎士としてあるまじき態度。
また、騎士道精神の欠片も感じない心構え。
面接するまでもない。
マリネとミリア、マクスの頭の中では不合格が決定した。
ただ二人、ヴェルグとルーティンを除いて。
その後、当たり障りのない質疑応答の末、ブランは解放された。
残った者たち皆が皆、ブランの話しで持ちきりだった。
「何なんですか!あの人は!」
「ミリアの気持ちはわかるわ。あの男は絶対に無いわ!」
「まったくだ。彼の父上殿には会ったことがあるんだが、彼は全くの別人なのではないかと疑わざるを得ないな。」
不平不満をぶつけあう中、ルーティンは黙っているヴェルグに近づく。
「ねぇ、ヴェルグ?」
「・・・。」
「ヴェルグってば!」
「ッ!!も、申し訳ありません!?な、何か御用ですか!?」
「いや黙ってるから。ヴェルグはどう思った?さっきのブランて人。」
「・・・ハッキリ言ってもいいですか?」
「もちろんだよ。どうぞ。」
いつの間にか視線がヴェルグに集まっている。
ヴェルグは、重い口をゆっくりと開いた。
「あの男、騎士として・・・いえ、人間的には低俗な部類に入るのだと思います。ですが、武人という点においては才能の塊なのだと思います。」
「どうしてそう思ったの?」
「隙がありませんでした。隙だらけに見えて、全く隙が無かったんです。」
ヴェルグの言葉に、セバスだけはゆっくりと頷いた。




