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計画Ⅱ 8

「あんたは確か試験会場にいた美人!?」

「ふむ。君には私が美人に見えているのだな。それは光栄なことだ。」

礼儀が正しいのか、ブランの誉め言葉にお辞儀をする。

「それよりも君は誰の護衛騎士かもわからずにあの試験を受けたのか?」

「い、いや。わかっちゃいたが・・・まぁ、その、リサーチ不足って奴だな。あそこまでルーティン様ってのが人気とは思ってなくってな。」

「ふむ。ということは君は人脈狙いか?」

「いやそういうわけでもねぇけど。」

「正確さに欠ける男だな。」

「そういうあんたはどうなんだよ。」

「そういえば名を言ってなかったな。私はフーカ・バン。フーカで構わない。」

「俺はブラン。家名は控えさせてもらうよ。あまり言いたくないんでね。」

「訳アリか?」

「ま、そんなとこ。んで、フーカは何でルーティン様の護衛試験に?」

「先に話すと、私はこの国の出身ではない。ザルツシュタンゲン王国の出身だ。」

「ザルツの。そんなとこまでルーティン様の名が?」

「そう。だから興味を持った。それほどに広まった名を持つ人物に。だが生憎、私は騎士という仕事をしたことは無い。だから礼儀というものも知らない。故に、この試験を通してこの目で見てみようと考えたという訳さ。」

「ほーん。」

「それで?人脈でもなく、ルーティン様にも興味がなさそうな君は何の目的であの試験を受けたんだい。」

ブランは一瞬だけ爺やを見てから話す。

「ま、当たり障りのない話をすれば仕事欲しさだよ。現在絶賛無職なんでね。」

「それは・・・気の毒に。」

冗談のつもりが本気にされ、同情もされてしまったことに、ブランは笑うしかない。

「その、なんだ。互いに受かることを期待しよう。」

それだけ言い残し、フーカは表通りに歩いて行った。


「はぁ~。」

ブランは面接までの時間を観光しようとしたが、その思いは叶わなかった。

人が賑わい続けること自体はいい事だとブランでも思っている。

が、ブランは静かな場所が好きなのだ。

静かな場所で美しい女性の一人や二人口説くのが好きなのだ。

それなのに・・・。

「この町はどこに行っても賑やかで、うるさくて・・・はぁ~。」

「ですが坊ちゃん、この町が貴方様の第二の故郷になるかもしれないのです。これからは好きになる努力をしなければ・・・。」

「わかってるよ。それでもだよ。はぁ~。やっぱ自分の町が一番だな。」

ボヤいてはいるが、今日は面接の日。

しっかりとした服装に着替え、鏡で顔も作り、会場に赴く。

道中何度も止めようかと考えたが、結局ブランは試験会場に行く以外に選択は無かった。

「それではこちらでお待ちください。」

案内された待合室には既に数人おり、その中には見知った顔もいる。

「おや?君も本日かい?」

「ああ。フーカもか?」

「ここにいるということはそういうことだ。」

「ん?それって・・・。」

「これかい?一応勉学はしているのさ。」

フーカの手には礼儀作法の本が見える。

それを機になんとなく周りを見れば皆が皆、本を読んでいる。

「最後の悪あがきだな。」

ブランの皮肉に誰も反応はしない。

それすらもしている暇がないように。

「君はいいのかい?」

「俺か?俺は別に。もうどうとでもなれって感じだからな。お前には隠さずに言うが、筆記試験の出来が良くないんだよ。」

「そうか。私も筆記試験に自信はないが、それでも受かるためにできうることはしておきたくってね。」

本来ならそうすべきなのだろう。

だが、ブランはそう思わない。

長期的に準備期間があるならまだしも、直前でいくら万全に準備しても付け焼き刃になってしまうと思うからだ。

下手をしたら自分というものを見失って支離滅裂な人間が出来上がってしまう。

ならば、最初っから時間が無いのはわかっているのだからありのままの自分で試験に挑む方がいい。

ブランはそう考えている。

「フーカさん。どうぞこちらへ。」

「ではなブラン。」

フーカは部屋から出て行く。

その姿を見送り、ブランは外を眺める。

「・・・あいつ、受かるといいなぁ。」

自分よりも他人を想ってしまうほどに、ブランは既に諦めモードだった。


「では、ここから先は自分の思うようにしてください。」

「は、はい。」

ようやくブランの番になり、扉の前まで連れてこられた。

思いのままと言われ、どうするべきか少し悩んだが、自分のありのままを見てもらおうとノックもせずに扉を開けてはいる。

「失礼しま~す。」

明るい声色で軽く挨拶してから目の前に用意された椅子にブランは座る。

その姿に、中にいた者たちは目を丸くする。

「あ~ブラン・バイエルンでっす。一応、バイエルン町の領主の次男坊。んで、長男が領主の座を継ぐので現在絶賛無職の男で~す!」

やけくそ気味の明るい自己紹介。

これで一発不合格、そう確信していたにもかかわらず・・・。

「ぷっ。あはははは!」

真ん中の席に座る少年は笑ったのだった。



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