計画Ⅱ 7
問3.護衛騎士としての心構えとは
(あ~もう驚かねぇぞ。そうですね、うんうん。はいはい。って知るかっつーの!!はぁ!?護衛騎士としての心構えだぁ?騎士に必要なものとどう違うっつーんだよ!もー!こういう問題ばっかかよ!クソッたれ!!)
ブランはなるべく当たり障りのないことを書く。
ただし、自分が矢面に立たないように“自己犠牲の心”のような文言は絶対に書かない。
問4.貴方の心にある“騎士道”、それを一つの言葉で表し、理由も書いてください。
(一つの言葉?単語ってことか?これまでの問題と少し変わったなぁ。まぁまだこういう問題の方がいいかもしんねぇなぁ。ん~・・・俺の場合だったら・・・。)
今までの問題の中で一番この問題がブランにとって落ち着いて自分の言葉で書けた。
理由については少し悩んだが、ここまで順調なペースで問題を解いている。
次で最後の問題、ブランは深呼吸してから読む。
問5.このオーウェンについてあなたの知識を書いてください。
(・・・へ?オーウェンについて?何で急に?いや、そもそもこれまでの問題は一夜漬けが通用しなかったが、これは通用する。はは。ようやく兄上に感謝する機会に巡り合えたぜ。)
ブランは兄であるゴードルから貰った資料に書いてあったオーウェンについてそのまま丸写しのように書いた。
ブランにとって覚えての丸写しは容易である。
(これで終わりかぁ。なんか、試験って感じしなかったなぁ。さて、時間は・・・うおっ!まだ半分もあるじゃねぇか。早く終わり過ぎたか?周りは・・・っと。一人も帰ってねぇな。こういう時に自分が最初に変えるのって苦手なんだよなぁ。やる気がないように見られねぇかな。でも・・・このままここにいても暇だしなぁ・・・。)
そんなことをぼんやりと考えていると、前の席から手が挙げる
それに気づいたセバスは横に並んでいる騎士に目で指示を送る。
意をくみ取った騎士が前の席の美人の横に立つ。
「お預かりします。」
「ああ。頼む。」
騎士は一通り目を通すと、頷いて退席を許可する。
そのまま美人は会場を後にする。
その好機を逃さないとばかりにブランも手を挙げ、試験会場を後にした。
「坊ちゃん、おかえりなさい。」
「爺や。」
試験会場を出てすぐに合流し、ブランは愚痴のように試験問題を語る。
「ったく。兄上の貴重な資料は最後の問題にしか使えなかったぜ。」
「それはそれは。災難でしたな。」
「まぁ、兄上は悪くねぇんだ。問題は試験の方さ。あんな問題で何が分かるんだよ。これならまだ実力勝負ってことで試合したほうがマシさ。」
「あまり大通りでそのような文句は。何処で誰が聞いているかわかりませんよ。」
「その場合はその場合だ。俺はいち早く文句が言いたかったんだ。あの問題を考えた奴は問題とは何か、もう一度勉強しなおして欲しいよ。」
「坊ちゃん。それほど文句を言うということはあまり芳しくなかったのですかな?」
「一応全問書いたさ。けど、何が答えで何が答えじゃないかなんてわかりゃしない。こりゃ、今のうちに落ちた時のことを考えなくちゃな。」
「まだ面接がありますが?」
「はぁ~。そうだったな。確か・・・四日後か。観光でもするか?」
「構いませんが。もし、意見を具申してよいのであれば観光ではなく、人脈作りの方が良いかと。この爺やの見る限り、相当の有力貴族もこの町にお見えになられているかと。」
「ああ。試験会場にもチラホラいたよ。でも人脈作りって苦手なんだよなぁ~・・・ん?」
賑やかな音が集まる場所がブランの目に入る。
一瞬視線を外すが、瞬時に視線が戻る。
それはその賑やかな場所から帰る女性の手にカードが見えたからだ。
「坊ちゃん?」
ブランは迷わず賑やかな場所に歩き始める。
不思議に思いながらも爺やもついて行く。
賑やかな場所には小さな商店が見え、そこに長蛇の列が並んでいる。
「何だここは?」
「こちらはルーティン様ファンクラブ入会案内所でございます。」
ブランの独り言に間を置かずに近くにいたメイドが丁寧に答えてくれる。
「ふぁ、ふぁんくらぶぅ?」
「ええ。ルーティン様の愛らしくも勇ましいお姿は世の女性にとどまらず男性にも人気で、あまりの人気にマリネお嬢様を中心にファンクラブが結成されました。会員は皆、ルーティン様カードを持つことが義務であり、深くルーティン様を敬うことで色々と特典が・・・。」
「宗教か!!」
思わず大きな声でツッコんでしまったことにブランはすぐさま我に返る。
「あ、いやこれは・・・。」
全員の突き刺さるような視線にブランは堪らず逃げ出す。
走って逃げた先は貴族には似つかわしくない路地裏。
「ぼ、坊ちゃん!」
「すまん爺や。取り乱した。」
「いやはやルーティン様の人気とはすごいものですな。」
「本当だよ。不敬かもしんねぇけど、国王陛下より人気なんじゃねぇか。」
「ほほほ。」
ブランの中でのルーティン象がぶれにぶれてしまい、もはやどんな人物かわからなくなってしまった。
「・・・俺、誰の護衛騎士になろうとしてんだよ・・・。」
「ルーティン様のだろ?」
ブランの小さなボヤキを拾う者がいた。




