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計画Ⅱ 5

「見えてきやしたよ。」

御者の声でブランは目を覚ます。

「坊ちゃん。あれがオーウェンにございます。」

「・・・なぁ、爺や。」

「何でしょうかな?」

「俺・・・受かる自信、無いかも。」

「はいぃ?」

ブランの目に映る光景は、自分の想像していたものよりも遥かに凄い光景である。

海に面した港町にしては大きいオーウェンの町中にも収まらないほどの人の数が、町近くに大量のテントを構え、一種のお祭り騒ぎ状態である。

遠目に見ても、一国の人口と変わらないように見える。

「あんなに騎士選抜試験を受ける奴がいるのかよ。正直もっと少ないと思ってたのに。」

「ルーティン様の人気もあるとは思いますが、多くはやはり・・・。」

「王族とのコネクション、か。あの噂はマジだったってことか。」

「おそらくそうでしょうな。これは坊ちゃんが王族になる日もあるかもしれませんぞ。」

「その前に受かんねぇよ!あれだけの人の数、何百人が受けんだよ!!」

「はて、どうでしょうかな。」

「くぅ~!他人事だからって。はぁ~。受からなかったら山賊にでもなろうかな。」

「坊ちゃんなら山賊でも生きていけそうで、この爺や些か不安ですな。」

「そうならない為にも今のうちに何度もこのルーティン様に関する資料を読むか。兄上がいて本当に良かったって今日が一番思うよ。」

「ホホホ。ゴードル様の用心深さに感謝ですな。」

「だな。」

ブランは資料を読み漁りながらオーウェンの町へと入って行った。


(・・・いや想像以上なんですけど?)

面接会場である公館の一室。

カーテンの隙間からこっそりと外を除くルーティン。

その目に映るは多くの受験者。

自分の想定していない規模に、嫌な汗が流れ始める。

「あの中に坊ちゃんの騎士が・・・俺の部下が・・・。」

ルーティン以上に緊張しているヴェルグは、外を見ては何度も喉を鳴らす。

「改めて試験の概要を説明するわ。」

扉を開けて入ってきたマリネが全員に聞こえるように話す。

「試験は二段階形式。筆記試験の後に面接試験を受けさせます。その両方で合格した者をルーの新たな騎士として迎えます。合格者数は未定。より多くの採用が望ましいですが、皆様方採点は厳しくお願いします。また、今回は受験者が多く、試験の日程は長くなることが予想されます。筆記試験はいくつかの会場に分かれて行えるので2、3日で終わるでしょう。ですが面接はそれ以上の日数を必要としますので、皆様方におかれましては健康に気を付けてください。面接官として、ルー、お父様、ヴェルグ、ミリア、そして私で、面接を執り行います。筆記試験は会場ごとに監督官と見張り員を置き、筆記試験の総監督責任者にセバスを置きます。以上が今回の騎士選抜試験の概要です。何か質問はありますか?」

いつもと違う口調に前世のキャリアウーマンがマリネに重なる。

「うむ。私の方に問題は無い。皆はどうだ?」

全員同意するように頷く。

「では、時間になりましたら試験を開始しましょう。」

「では旦那様、お側を離れることをお許しください。」

「うむ。」

「心配ねぇよ。この俺がいるからな。」

「頼りにしておるぞジスル。」

「では、行って参ります。」

セバスは深々と頭を下げてから部屋を出て行った。


「やっぱやべぇわ。」

ブランは荷物を宿に置き、真っ先に受付会場に向かったが、長蛇の列により受付の場所すら見えない。

「流石はルーティン様というべきか、王族の力というべきか。ですな。」

「もう心が折れそう。」

「ですが受けないという選択肢は無いですぞ坊ちゃん。」

「だよな~。うっし!覚悟決めようぜ爺や。」


覚悟を決めて数時間。

何度も折れかけた心を奮い立たせ、ブランはようやく受付することが出来た。

「こちらにお名前と年齢、何かアピールしたいことがおありでしたらご記入ください。ご記入が終わりましたらあちらの受付へお持ちください。」

「えっと・・・名前に年齢っと。アピールか~。女を口説くのは自信あるけど流石にそれじゃなぁ。」

「受ける前から失格でしょうな。」

「だとするとなんて書く?書かないっていうのもダメだと思うしなぁ。」

「坊ちゃんの実力をアピールすればよいかと。」

「実力ぅ?」

「坊ちゃんは様々な武器を器用に使いこなせますし、弓術に関して言えばゴードル様にも勝る実力。そのことをアピールすれば合格しやすいでしょう。」

「ん~・・・そういうのはパスだな。」

「どうしてですかな?」

「だってそれで矢面に立たされたら嫌だし、俺は肩書だけでいいんだよ。言っただろ?平穏に生きて平穏に死ぬのが俺の夢だって。」

「はて?そのようなことを言いましたかな?」

「とにかく!もっと、こう、文化的なところでアピールするべきだな。うん。」

ブランは悩んだが、何かいい事を思いついたように受付書にスラスラと文字を書いて行った。



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