計画Ⅱ 2
「なるほど。新たな騎士か。」
綺麗な音を響かせながら進む食事。
その中での会話は何だかリズムに乗っているようで少し面白い。
「うん。そろそろスクールも始まるし、何より・・・その、ね?」
「騎士を増やすことは別に構わない。・・・が、何処から持ってくるかが重要だな。」
コーヒーを一口飲むと、マクスは頭の中に配置図を思い浮かべる。
「現状、マリネの下に我が家の騎士たちは無駄のない配置だ。そこから引っ張ってくるとなると、また調整のし直しだな。」
「それぐらいなら問題ないわ。ルーの為なら何でもやるわよ。」
「ああ。マリネの言う通りだな。その程度の労力、どうということは無いな。それでルーティン、何人欲しいんだい?」
(う、う~ん・・・相変わらずの親馬鹿だなぁ。それも年々酷くなっている気もするし・・・。)
「えっと、新たに採用試験を開催しようかと、思いまして。」
「何?」
マクスの表情が少し変わる。
それはまるで他者を寄せ付けないように険しく見える。
「い、いや、そのね?危険が無いとは言わないよ?けど、僕たちの知らないところで力があるのに何もできないと、もどかしくしている人もいると思うんだ。そういう人を見つけられたらなぁって思って。」
「でもルーちゃん、身を守るためなら実績が有るほうが良いんじゃないのかしら?」
「それはそうなんだけど、そこはヴェルグに期待するっていうか、いいますか。」
「ヴェルグに?」
名を呼ばれたヴェルグはキョトンとしている。
「ヴェルグは本当に成長したと思うんだ。前までだったら勝てたかもって思うんだけど、最近は稽古で試合しても勝てるビジョンが見えないんだよね。だから、スクールに行く前までにヴェルグに鍛えてもらえば・・・って思いまして、はい。」
「確かにヴェルグは腕をあげたな。セバスも時折褒めている。」
肯定するようにセバスは頭を軽く下げる。
「だがやはり、他者を迎え入れるにはそれ相応の審議が必要であってな。そう簡単には・・・。」
「そこを何とか!お願い!」
(ここは全力で可愛さアピール!!)
「だ、ダメ?」
「ぐっ!」
『ルーティンの上目遣いのお願い。 マクスにクリティカルヒット。 マクスは可愛さに負けた。』
先程までの威厳が薄れ、マクスは頬が緩くなりそうになるのを堪える。
「しょ、しょうがないな。」
(ふっ。勝ったな。)
「ちょっと待って。」
(くっ!マリ姉ちゃん!)
「ルーは本当に他から出ないとダメなの?」
「それはその・・・。」
「我が家の騎士なら信頼に厚いのよ?それでもダメなの?」
(マリ姉ちゃん・・・この7年で本当に美人になった。前世の僕だったら・・・いや、うん。逃げてたな、前世の僕。)
「うん。採用試験を行いたい。いつまでも外の世界を怯えてられないし、何よりこれからのスクールの為にも、ね。」
ルーティンの目を見つめ、マリネは軽く息を吐く。
「わかったわ。ルーの意見を尊重しましょう。」
(シャアアァァァッ!!)
「ただし、条件があります。」
「じょ、条件?」
マリネが手を叩くと、メイドがホワイトボードを用意する。
ホワイトボードには三つの条件が書かれている。
1.騎士の採用試験は二段階形式にすること。
2.騎士の採用基準として若い者を選ぶこと。
(30代より上は要相談。)
3.武術に多少の心得のあるものを優先的に採用すること。
「この三つの条件を守ってもらうわ。拒否するなら・・・。」
「は、はい!それで構いません!」
「素直でよろしい。」
「では早速募集するか。セバス、準備を。」
「仰せのままに。」
こうして急遽、僕の我がままで騎士の採用試験が開催されることになった。
果たして僕の気に入る騎士に出会えるのだろうか。
今から緊張する話である。
暗い部屋。
何かに埋め尽くされた部屋のベットで少女は何かを抱く。
その顔は愛に満ちている。
「・・・失礼します。お嬢様。」
メイドの一人が周りを注意深く確認してから部屋の中に入る。
「・・・電気、付けますよ。」
少女の反応はなく、メイドはため息まじりにスイッチを押す。
すぐさま明るくなると、そこにはルーティンを模した大量の人形。
壁や天井はルーティンの写真で埋め尽くされ、ベットの上には今のルーティンと同じ大きさの物が置かれている。
見渡す限りのルーティンづくしに、メイドは一瞬だけ頬が引きつる。
それを見逃さないように少女の憎しみの目がギョロリと動く。
「何か問題があるのかい?ヒムロ。」
「いいえ。ご不快な思いをさせてしまったのなら謝罪します。申し訳ございませんルリア様。」
「いいよ別に。誰も私を理解なんてできないんだから。」
「・・・。」
「それで?僕に何か用?」
(一人称すらままならない、か。)
「ご報告が。」
「何?」
「ルーティン様は予定通りスクールに通う模様。どのスクールになるかは追って連絡します。」
「それだけ?」
「いいえ。ルーティン様は近々騎士採用試験なるものを開くようです。」
「え?何それ危険じゃん。ルーティン様の御父上は何を考えてるの?止めるべきでしょ!」
「これはルーティン様たっての願いだそうです。」
「え?なら当然の権利だね。ルーティン様の騎士か。どんな騎士になるんだろ。あ、危険が無いように調べなきゃ。ヒムロ。」
「既に手配済みです。」
「うんうん。ヒムロはいい子だねぇ。」
話し終わると、ルリアはルーティン人形にキスをし始める。
(ルーティン様。どうか姫様を・・・。)
壊れてしまった主人を、ヒムロはどうすることもできなかった。




