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計画Ⅱ 1

ここから新たな章の始まりです。

陽光が柔らかい春の日差し。

カーテンの隙間からでも心地の良い温かさが伝わる。

深い眠りの中、小さな寝息を立てていると、部屋に誰かが入ってきてカーテンを思いっきり開く。

先程までの木漏れ日のような光から一気に明るくなる。

「坊ちゃま!朝ですよ!」

「んぅ?」

元気ハツラツな声が聞こえ、目をこすって開けるとそこには笑顔のメイドが立っている。

そう、見知った顔のメイド・・・ミリアだ。

「おはようミリア。」

「はい!おはようございます坊ちゃま。朝食は既に出来ておりますよ。旦那様たちも食堂で待ています。」

「うん、わかったよ。」

ニコっとミリアは笑うと、その場から動かない。

「あの・・・。」

「ダメです。」

「いやでも・・・。」

「ダメなものはダメです。奥様からも厳重に言われています。それに・・・。」

「それに?」

「今日は私の当番です!絶対に手を抜きません!」

「・・・はい。」

(・・・クソゥ。)

唐突に行われる僕の僕による僕だけのストリップショー。

観客はミリアたった一人。

正直、恥辱に満ちた光景だが、これには訳がある。

「いよいよですね坊ちゃま。」

「うん?」

「もう!スクールですよ!スクール!」

「ああ~。スクールね。」

「早いもので坊ちゃまも12歳。私もすっかりお姉さんですよ。」

「あははは。」

そう、僕は12歳になったのだ。

あの事件から7年も経っている。


エンラの家の問題を解決してからすぐにマーマレイドに向かった僕は、そこで盛大なお迎えを受ける。

最初はなんだこれ?って思ったけど、泣きながら駆け寄ってくる父さんを見て、そんなことがどうでもよくなるぐらいに僕の中の不安も爆発した。

泣いて強く抱きしめる父さんの胸の中で僕も思いっきり泣いた。

それから代わる代わるに抱きしめられた。

いっぱい話したいこともあったのに、いっぱい謝りたかったのに。

僕は泣くことしか出来なかった。

父さんに何かを伝えようとすると、『もういいんだ。』とだけ。

母さんもマリ姉ちゃんも僕に何も聞いてこない。

ただただ、無事だったことを喜ばれた。

それから三日三晩のパーティを開催した。

その間にリュートとミュートについて話すと、快く受け入れてくれた。

そして、故郷に戻って来た僕に待っていたのは・・・厳重取扱注意という立場である。

行方不明になった事がマカベルグ家にとってトラウマ級になってしまったらしい。

だからこのように僕は一人になることを禁じられている。

着替えぐらい、という油断すら許されないのだ。

最も・・・。

「あ、坊ちゃままた逞(たくま)しく・・・。」

別の観賞会にもなっているような気もするけど。


そして変わったこともある。

「おはようございます坊ちゃん。」

一つはヴェルグである。

あれから7年間。

毎日のように鍛錬に勤しみ、セバスに騎士として必要なことを多く学び、今では歴戦の騎士のような顔つきである。

僕がいなくなったのは自分の責任だと、自害しようとした時とは見違えるほどだ。

忠誠心もかなり高く、いつでも僕の側から離れない。

でもそのせいで・・・。

「ねぇ、ヴェルグ。」

「はい!何でしょうか坊ちゃん!」

「その、僕にばかり構ってないで、その・・・ね?」

「自分にとって坊ちゃん以上の最優先事項はありません!」

「いやその・・・ビビは?」

「・・・自分に、彼女を幸せにする自信はありません。身勝手なことだとはわかっていますが、自分は生涯を坊ちゃんに捧げます。」

「あ、うん。」

これである。

あの事件以来、ヴェルグは変わってしまった。

元々責任感が強いから剣の稽古も頼んだが、想定以上の忠誠心である。

あの頃のヴェルグはいずこに・・・。

「そんなことは言わずにヴェルグ様。ビビはヴェルグ様のこと、今でも待っているんですよ。」

「ならば断わって欲しい。俺に彼女を守る力はないと。」

「もう!」

ミリアも一生懸命ビビのことを応援してくれている。

なのに僕のせいで・・・。

どうしようもなかったとはいえ、二人の人生を狂わせるようなことにはなってはならない。

「つまり騎士を増やさなきゃってことだな。」

「ぼ、坊ちゃん!?」

「坊ちゃま?」

「ビビというたった一人の愛する人すら守れないのなら騎士を増やすしかないでしょ?早速父さんに相談してみるよ。」

「ぼ、坊ちゃんそれは!」

(意地悪かもしれないが、許せヴェルグ。こうすることでしか二人の、もといビビの幸せを守ることが出来ない主人を。)


しばらく歩くと二人の影がこちらに向かって歩いてくる。

「あ!おはようございますルーティン様。」

「よぉ!小僧。」

メイド服に身を包み、猫耳猫尻尾が可愛く、丁寧な対応したのがムーナさん。

そして改造メイド服に身を包み、犬耳犬尻尾がもふもふで、言葉遣いがなっていないのがギリシアさん。

リッチモンドの場所から逃げた際、二人は僕の下で働きたいとミリアに懇願したらしい。

「もう!ギリシアさん言葉遣い!」

「しゃーねぇだろ。俺はこういう性分なんだよ。それより小僧、そろそろ夜の営みには呼ばねーのか?」

「ちょ!?ギリシアさん!!そういうことはまず先輩である私が・・・。」

(うん。そんなことはしないからね。)

今日も今日とて元気な一日が始まるのだった。



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