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計画121

「これが全てです。その後はヘーゼル殿下に言われた通りに室内を偽装し、誰にもわからないようにしました。フローレン様のその後は知りません。知りたいとも、思えませんでしたから。」

話し終えたメイド長は頭を一度下げてから国王の前に跪く。

「陛下。私はヘーゼル殿下を見殺しにしました。いかなる処罰も甘んじて受け入れます。いかようにもしてください。」

ずっと黙って立っていた初老の鎧を着た男も膝をつく。

「私も同罪でございます陛下。妻の意志を尊重しました。」

(あの人がメイド長の旦那さんか。)

二人の謝罪を見届けた国王はゆっくりと口を開く。

「・・・メイド長よ。」

「はい。」

「ヘーゼルは治る病気だったのだな?」

「はい。」

「それでも自らの死を望んだ。そうだな?」

「・・・はい。」

「その理由をお前の想像でもいいから答えてみよ。」

一瞬の間を置き、メイド長は悲しそうな表情で答える。

「フラメア様が、ヘーゼル殿下にとっての命だったのだと思います。フラメア様がお亡くなりになった時、殿下もまた、お亡くなりになっていたのだと思います。」

「お前も同意見か?」

「妻の言葉に異論はありません。ヘーゼル殿下は本当にフラメア様のことを、心の底から愛しておられました。」

「そうか・・・。」

天を仰いだ国王はそっと目を閉じ、ゆっくりと立ち上がってメイド長たちを見降ろす。

「メイド長、並びに我が護衛騎士よ。貴様らに処罰を与える。」

(ま、マジかよ!?ヘーゼル殿下は自殺だぞ!?)

ルーティンの考えを読み取ったビオラはそっと抱きしめて動きを封じる。

(ビオラさんっ!?)

「大丈夫だから。」

耳元で囁かれ、ルーティンはもがくのを止める。

「貴様らは荷物をまとめ、この町から出て行くこと。行先は国王家が使う避暑地。そこにヘーゼルの遺骨を運び、フラメアと共に眠らせてやること。また、ヘーゼルの生涯を記録に残せ。以上だ。」

「・・・寛大な処置、感謝します陛下。」

「感謝します。」

国王が座るのを待ち、メイド長たちは部屋から出て行った。


「さて、今度は君の番だなルーティン君。」

先程の悲しそうな雰囲気からすぐに威厳のある雰囲気に変わる。

「ヘーゼルの暗殺の謎の究明、並びにこのガラス細工の製法。感謝に堪えん。報奨を、と思うが否を唱えるものはおるか?」

国王の言葉に誰も首を縦に振らない。

「なら、決まりだ。ルーティンよ、其方は何を望む?」

(望みか・・・正直に言えば考えてないからなぁ。ん~・・・お!そうだ!)

「では馬車を一台ください。それからリュートとミュートをお譲りください。」

「ルーちゃん?」

「そんなことでいいのか?」

「実を言いますと、家に早く帰りたいんです。ずっと両親にあっていませんし、つい最近になって連絡も取れました。たぶんですけど、今はマーマレイドで待ってると思うんです。だから早く会いたくて。リュートとミュートは独りぼっちの僕を支えてくれたので、まだこれからも一緒にいて欲しいなって。ダメですかね?」

「ク・・・。」

(ク?)

「クハハハハ!何とも欲のない。いや、子供らしからぬ願いだ。」

「そ、そうですかね?」

「アーモンドも大概だったが、お前も大概だなルーティンよ。」

「ち、父上!?」

盛大に笑うと、国王は優しい表情になってルーティンの申し出を承諾する。

「良かろう。其方の望み、聞き届けようぞ。」

「あ、ありがとうございます。あ、できれば今日中にでも出立したいんですけど・・・。」

「許可しよう。アーモンドよ。すぐに手配せい。」

「ハッ。陛下。」

こうして僕の長い冒険が終わりを迎えた。

誰がこんな最後を想像しただろうか、僕ですら想像できなかった。

けれど、とても貴重な体験の数々で、終わってみれば充実した日々だったと思う。

本当に、運に恵まれたよ。


「色々とありがとうございました。」

「元気でねルーちゃん。」

ビオラさんは優しい抱擁の後、額にキスをして別れを告げた。

「元気でねエンラ。」

「・・・はい。」

「エンラ?」

「ルー・・・いえ、ルーティン様。この度は我が国の不祥事を無事に解決頂き、本当にありがとうございました。」

涙を流してはいるが、そこに立っているのは紛れもない一国の姫だった。

「またいつか、お会いできるのを楽しみにしております。」

「うん。エンラ。」

「はい。」

「必ず、迎えに行くよ。」

「・・・はぃ。」

我慢できなかった僕はエンラを抱きしめ、そっと囁いた。

「またね。」

「はい!」

エンラは僕の馬車が消えるまで手を振ってくれた。

それに応えるように僕も振り続けた。

「・・・ルーちゃんは貴族だったんだね~。おっどろき~。」

「あははは。ごめんね。騙す気はなかったんだけど、言わないほうが良いかな~って。」

「それが正解。貴族とバレていたらきっと悪いことに利用された。」

(ですよね。)

「でも、まさか私たちを王様から貰っちゃうなんて・・・ルーちゃんも好きものかな?」

「私は別に構わない。ルーちゃんに身も心も捧げる。」

「ちょ!ミューちゃん!私もだから!それ!」

(さ~てと、どうやって説明しようかなぁ。)

目の前で嬉しそうに話す二人を見ながらルーティンはマーマレイドに向けて旅立った。

終着点を目指して。



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