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計画119

「何故だ・・・。」

泣きそうになるのを堪え、アーモンドは思いの丈を吐き出すように怒鳴る。

「何故死ぬことが分かっていてあいつは死んだんだ!そんな奴じゃないだろ!あいつは!!」

「それは・・・。」

(これは僕には答えらえない。僕がどんな言葉を並べてもそれは想像の枠を超えないからだ。だからこの問いには・・・。)

「アーモンド殿下。」

「っ!メイド長。」

(一番身近にいたメイド長に答えてもらうしかないのだ。)

「ヘーゼル殿下は、ご自身の意志でお会いになられたのです。それは私が保証します。」

「しかし!」

「陛下。ルーティン様の御説明に捕捉させて頂く事をお許しください。」

「構わん。アーモンドも少し落ち着きなさい。」

「は、はい・・・。」

何故かそうするべきだと思った僕はメイド長にヘーゼル殿下の日記帳を手渡した。

「ありがとうございますルーティン様。」

メイド長は愛おしそうに抱きしめ、涙を拭い、話し出す。

「へーゼル殿下の愛した女性、名をフラメア様とおっしゃいます。フラメア様は初めは感情のない人形のようでした。でも次第に優しい表情を見せるようになり、また優秀さも兼ね備えた素晴らしい女性へと変わられました。そこからはルーティン様がおっしゃった通りです。私が補足させて頂くのはヘーゼル殿下が戻られた日からです。ヘーゼル殿下が国に戻られた次の日、あの男は姿を見せました。」


「っ!?ゴロンダ様。」


あの男は急に現れ、面会を要求してきたのです。


「へへ。父親が娘に会うんだ。別に問題ないだろ?」

「ですが、ここは紛れもなく王家の庭。王族の方、ヘーゼル殿下のお許しがない限り勝手な行動はお控えください。」

「いいだろ?娘に一目でいいんだ。」

「申し訳ありません。」

「チッ。んだよ!娘が玩具になってるから会わせられねぇって言いてぇのか?ああぁ!!?」

「なっ!?ヘーゼル殿下はそのようなことは!!」

「へへ。知ってんだよ。殿下が女をとっかえひっかえ拾っては捨てているのも、婚約者を壊して捨てたのもな!」

「っ!!」


否定することは簡単だった。

けれど、感情に任せてそのような行動に移ってはこの男の思うつぼだと頭で分かっていたのです。

だからとにかく帰って頂く事を最優先に言葉を選びました。

ですが、あの男の粘り勝ちの結果になったのです。


「メイド長さん。」

「フラメア様!?」

「へへ。よぉ、元気そうじゃねぇか。」

「・・・はい。」

「何だよ。俺のこと父親とは呼べねぇのか?」

「・・・。」

「ま、構わねぇけどよ。ちょっと耳を貸せよ。」

「ゴロンダ様。フラメア様はお疲れです。お引き取りを。」

「ああぁ!!?」

「・・・メイド長さん。私なら大丈夫です。」

「へへ。だとよ。」

(こいつ!!)

「なぁに簡単な話だからよ。」


それから私に聞こえない場所でお二人がお話ししていました。

フラメア様の表情からはわかりませんでしたが、良からぬことが起きそうな気はしました。

案の定、あの男が帰った次の日にあの少女が屋敷を訪れました。


「クルキスと申します。これからお世話になります。」

「ふ、フラメア様?」

「メイド長さん。この子は・・・私の妹になります。しばらくこのお屋敷で侍女としての働き方を教えてあげてください。」


私は嘘だと知っていました。

調べでフラメア様に妹がいないことを知っていたからです。

それに、このクルキスという少女からは言い知れぬ悪意のようなものを感じてもいたのです。

最初こそおとなしく私の指示に従っていました。

だから私は・・・その少女の内に潜(ひそ)めた悪意を見極めることが出来ませんでした。

あれは、ヘーゼル殿下が帰ってくる日のことです。

早起きしてくるはずのフラメア様も、朝の仕込みに来るはずのクルキスも来なかったのです。

嫌なものを感じた私はフラメア様のお部屋を訪れ、そして・・・冷たくなっていたフラメア様を見ることになったのです。


「ふ、フラメア様!!?!?」


急いで心肺蘇生を試みようとしました。

けれどすでに冷たくなっているフラメア様には何の意味も無かったのです。


「お、おい!」


外から慌てているような主人の声に、すがるように私はその場から逃げました。

そして見てしまったのです。

首を吊るクルキスと、その足元にある何かの肉塊を。


「そこからはルーティン様がお話しした通り、ヘーゼル殿下がお帰りになり、フラメア様の変わられた姿を見てしまったのです。ヘーゼル殿下にはクルキスの事もお話ししました。激怒したヘーゼル殿下はゴロンダ様を拷問に近い尋問にかけ、全てを吐かせました。クルキスは保険としてあてがわれたそうです。自分たちの計画が成功させるためにヘーゼル殿下のお子を盗み出すこと。もし、計画が失敗するようなことがあればフラメア様を道連れにしろと。」

(そしてヘーゼル殿下とお姉さんの活躍により大臣の計画は失敗。当然ゴロンダの言う計画の失敗でもあるということか。)

「それが何故あいつの死につながる!」

「尋問の末にゴロンダ様は息をお引き取りになられました。それがきっかけでゴロンダ様の家は奥様が継ぎ、奴隷として囲っていた多くの女性を追い出しました。フラメア様のお母様、フローレン様は全てを失った形になります。それからどのような道を歩んだかはわかりませんが、あの日お会いしたフローレン様は浮浪者と同じ姿をしていたのです。」

最後の補足するべき記憶を思い出すようにメイド長は目を閉じた。




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