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計画116

俺は俺の中で生まれた名も無いこの感情をとても心地よく感じていた。

これまで数多くの女を抱いた。

飽きもせずに抱いた。

女が嫌がろうが、憎まれようが、恨まれようが、死のうが。

自分の黒い欲望をぶつけ、まだまだ白い穢れのない女を汚して喜んでいた。

だが、そんな醜い感情が洗われるように俺の中で名も無い感情がどんどん大きく成長していったんだ。


「殿下。こちらの資料をまとめ終わりました。」

「おお!ご苦労だったな。次の仕事もいいか?」

「仰せのままに。しかし、初めにあった殿下はどこに行ってしまったのでしょうか?」

「ああぁ?」

「小さな仕事も嫌っていた殿下が今では私と共に仕事に専念している。どのような心境の御変化ですか?」

「そういうお前もよくしゃべるようになったな。」

「・・・お嫌い、ですか?」

「い、いや!・・・嫌いじゃ、ねぇ・・・。」

「殿下・・・!」

「い、いいから仕事しろ!」


この頃から仕事が苦に感じなかったな。

むしろあいつとの時間を少しでも多くしたくて、ずっと一緒にいたくて。

嫌いな仕事を楽しく感じていた。


「・・・なぁ。」

「何でしょうか殿下。」

「ずっと、な。その、怖くて聞けなかったことがあるんだが・・・いいか?」

「・・・私の答えられる範囲でいいのなら。」

「お前は・・・その・・・やっぱ何でもねぇや。」

「・・・そう、ですか。」


俺は聞きたかった。

どうして死が怖くないのか。

いや、聞かなければならなかったんだ。

死が怖くないのではなく、死を受け入れられることが。

だが、だが!どうしても怖くて聞けなっかった。

聞いたらこの女は消えてしまうんじゃないか!

この愛おしい女から完全に表情が消えちまうんじゃないか!

・・・俺の、名も無い感情が、死ぬんじゃないか。


「殿下。」

「どうした?」

「私の気のせいなら申し訳ありません。この頃の殿下はどこか、そう、何かに怯えていませんか?」

「怯える?俺が?何に?」

「・・・私に。」

「お前に?ハハッ!馬鹿かお前は。俺がお前に何を怯える。」

「・・・正確に言えば、最初の私に、です。殿下。」

「・・・っ!」

「私はどこにも消えません。ですから殿下、そのお心の迷いを話してくださいませんか。」


いつかは聞かなければならない。

なら、問題ないじゃないか。

聞こう。彼女に。

彼女の全てを知りたいという俺の欲望を満たすために。

・・・でも、聞かなければよかった。


「お前・・・は、その、何で死が怖くねぇ?いや、どうして受け入れられる?」

「それは・・・。申し訳ありません。お答えできません。」

「何でだ!俺はお前の全てを受け入れる!だから!俺に隠し事など!!」

「お答えできません!!」

「ッ!?」

「・・・っ。も、申し訳、あ、ありまぜん・・・。」


泣かした。

彼女を喜ばそうと努力してきた俺が初めて彼女を泣かした。

他の女の涙は数えるのも馬鹿らしいぐらい見飽きてた。

その涙を見る度に愉悦感を覚えていた。

けれど・・・この涙は痛かった。

痛かった!!


「頼まれてくれるか?メイド長。」


俺は彼女の全てをどうしても知りたかった。

嫌がるあいつに無理矢理は聞きたくなかった。

だから、黙ってあいつの全てを調べた。

馬鹿、だった。


「ッ!!これは!?」

「ヘーゼル殿下から頂いた情報をもとに調べました。・・・これが彼女の全てではないですが、これが彼女の過去ではあります。」

「何で・・・何でだよ!!」

「ヘーゼル殿下。貴方を幼少の頃より見守ってきた私です。貴方が彼女にそれほどまでに愛を注ぐのは珍しく、そして、心地よく思っていました。ですから殿下ご自身でお決めください。私は、どのような決断になろうとも殿下を。・・・いえこれ以上は言う必要はありませんね。」


あいつはあの糞貴族の娘ではあった。

けど、正室のではない。

側室の子でもない。

あいつは・・・奴隷の娘だった。

あの糞貴族が奴隷に対して性的虐待の限りを尽くした果てに生まれたのが、あいつだった。

あいつの身分は・・・貴族ではなく奴隷・・・だった。


「殿下。」

「・・・。」

「どうしたのですか?今日は甘えん坊の日ですか?」

「俺が愛するお前を抱きしめて何が悪い。」

「何も悪くはありません。けれど、このままじゃ殿下に手料理を振舞えません。」

「今はいい。今日はメイド長に頼んだ。」

「ですが・・・。」

「今日は!!・・・このままでいさせてくれ。頼む。」

「・・・殿下のお心のままに。」


神様が嫌いだ。心底嫌いだ。

俺から母だけではなく、こいつまで奪おうとしてくる。

どうして神は平等に愛してくれない。

どうして俺だけを憎む?恨む?妬む?

俺がお前に何をした?答えられるなら答えろよ。

お前が泣き止んでも殴り続けてやるから答えろよ。

答えろよ!!!・・・答えて、くれよぉ・・・。

お願いだから。

俺からこいつを奪わないでくれよ。

好きなんだ。大好きなんだ。愛してるんだ。

だから・・・だから!!

俺は、どうすればいいんだよ。



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