計画114
「あった。」
ベットの下から出てきたのは埃を被ってはいるが、紛れもなくノートである。
「それは!?」
「うん。これが僕が探していたものだよビオラさん。」
中を開きパラパラと読んでいく。
「・・・そうか。」
「どうしたの!?何か分かったの!?」
「うん・・・。」
「読ましてください!」
半ば強引にルーティンからノートを奪うと、ビオラは速読する。
「・・・うそ。」
(わからなくもない反応だな。でも、これが真実なんだ。)
ノートを読み終えたビオラは深呼吸し、先程と同じ雰囲気になる。
「・・・行きましょうか。」
「うん。」
ルーティンは国王の待つ部屋に戻った。
「戻ったか。ん?ビオラどうかしたか?何やら元気がないように見えるが・・・。」
「いえ。お気になさらずお兄様。それよりもルーティン様の準備が出来たそうです。」
ルーティンは椅子に座り、国王に向き合う。
「・・・では、聞かせてもらおうか。」
「はい。」
深呼吸をしてからルーティンはゆっくりと口を開いた。
「まず、犯人についてお話しします。第三王子ヘーゼル殿下を殺害したのは・・・殿下本人です。」
「なに?」
アーモンドの雰囲気が一気に険悪な物へと変わる。
「馬鹿なことを言うな。ヘーゼルが自死したなどと、妄言も甚だしい。」
「アーモンド兄様!ルーティン様にそのような言い方は!」
「お前は黙っていなさいエンラ。」
「ですが!」
「あの、お話を続けても?」
「貴様・・・まだ戯言を続けると言うのか!それ以上は・・・。」
「アーモンドよ。」
目を閉じていた国王は目を開けて目の前のルーティンを見つめる。
「この子は嘘をついていない。もう少し聞いてみようではないか。」
「・・・わかりました国王陛下。続きを話せ。」
「では続けます。ヘーゼル殿下が暗殺された日のことを思い出しながらお聞きください。」
全員が頷いたのが同意と確認し話し続ける。
「その日、ヘーゼル殿下は朝から様子がいつもと違いました。その理由はとある女性と会う約束をしていたからです。」
「女性とですの?でもそれなら・・・。」
「ああ。それならば国王陛下の耳にも入っているはずだ。だがその日に誰かと会う約束は一件だけ。しかもそれはクック殿のみ。女性と会う約束など・・・ありえんな。」
「そのことをメイド長だけが知っていたのです。」
全員がメイド長の方を向く。
メイド長は小さく息を吐き、肯定するように首を縦に振る。
「ば・・・か・・・な・・・。」
「申し訳ございません陛下。お答えすることが困難な為、口を閉ざしていました。いかなる処罰も・・・。」
「よい。お前は我が国に尽くしてくれている。理由もなくそのようなことをする者だと、私たちは思っていない。」
「陛下・・・。」
薄っすらと溢れた涙をメイド長は拭う。
「で、ではその女がヘーゼルを!」
「違います。ヘーゼル殿下は自殺です。」
「何故だ!ヘーゼルが自死など!」
「こほっ。に、兄さん、話は最後まで。」
「カシュー・・・。わかった聞こう。」
アーモンドはこれ以上口を挟まないことを意思表示するように椅子に座る。
「ヘーゼル殿下にとってその女性と会うことは“死”を意味していました。ですが、それを受け入れていたのです。だからその日だけは自分で着替え、自分で仕事を終わらした。午後に必ず会うために午前中に全ての仕事をです。」
「なぜヘーゼルはその者と会うことが死を意味していたんだね?」
いつの間にか国王は身を乗り出してルーティンの話を聞き入っている。
「その後説明はこのノートがしてくれました。」
ビオラはルーティンからノートを受け取り、国王の前に置く。
「これは・・・。」
「ヘーゼル殿下の日記です。」
ざわつきと共に全員の視線がノートに集まる。
「ヘーゼルの・・・。何と書いてあったのだね。」
「こう、書かれていました。半年ほど前からです。」
毎年恒例の王族健康診断。
正直めんどくさくて昔のデータを使いまわしていた。
だが今年はどうもおかしい。
少し前から体調が優れねぇ。
そう思って秘密裏に受けたら・・・俺は病に罹っていた。
それも死につながる病に、らしい。
「病・・・だと・・・。」
「はい。そしてこう書かれていました。」
その病は治らないものではないらしい。
だが長い療養を要するのは決まっているのに必ずしも治るとは限らないそうだ。
どっちにしろ治療するべきだ。
俺はまだ死にたくないからな!って思っていたが、気が変わった。
あの女からの手紙でな。
「手紙?それはいったい・・・。」
「それは見つかっていませんが、次にこう書かれていました。」
あの女は俺を殺したいほど憎んでいるらしい。
今思えば、あの女が俺を殺したいのはよくわかる。
死に瀕して、自分のこれまでの行いを見直すことになるとはな。
俺は・・・愚か者だった。
いつの間にか国王の瞼の裏には、ヘーゼルの姿が映し出されていた。




