計画111
(どうすればいいんだよ・・・。)
先程の光景が頭から離れない。
今も目を閉じれば瞼に映りそうで、体が震える。
「ルーティン様・・・。」
アーネムは一呼吸してから口を開く。
「リセット、しましょうか?」
「・・・はい?」
アーネムの言葉が分からなくて聞き返してしまう。
「リセットです。私がここまで見守ってきたこの世界から貴方を無くし、何十、いいえ何百年後かにもう一度産まれ返させましょうか、ということです。」
「それってつまり・・・。」
「貴方に一度死んでいただくということです。死んでいただき魂となった貴方を封印します。そして十分に時間が経ってからもう一度転生させましょう、ということです。」
「だけどそれじゃあ!」
「はい。貴方が出会った人々には二度と会えません。それどころか、貴方の記憶は一度消え、新たな人生で新たな記憶を刻んでいくのです。」
アーネムの提案は今のルーティンにとってとても魅力的だった。
それが叶うならこの恐怖からも逃げられるのだ。
「・・・。」
無言で差し出されたアーネムの手をすぐにでも取りたい!・・・けど。
「父さん。」
『ルーティン。』
「母さん。」
『うふふ。ルー。』
「姉さん。」
『ルー!』
「兄さん。」
『ルーティン!』
声に出して名前を呼べば数えきれないほどの大切な人の顔が映る。
皆の笑顔がルーティンに勇気をくれる。
何より・・・。
「アーネム。」
「はい。」
「僕はその手を取らないよ。」
「・・・。」
「僕はこの世界で、大好きな両親の下に生まれたんだ。前世では愛されることがなかった両親からたくさんの愛情を貰っているんだ。そんな両親を残して僕が先に死ぬなんて親不孝だよ。」
「・・・ええ。」
「何よりさ!」
『ルー。』
「僕はエンラが本気で好きなんだ!こんな状況になってようやく自分の気持ちを見つめなおせたよ。ありがとうアーネム。」
「・・・それが、貴方の選ぶ答えですね。」
「うん!」
ルーティンの満面の笑みに、アーネムにそれ以上の言葉は無い。
「ルーティン様。これからも貴方のことを見守り続けることをお許しください。そして、貴方のこれからの人生に幸運を!」
その言葉を最後にルーティンの意識は消えた。
「・・・うん?」
目を開けると、そこはベットの上だった。
「・・・戻って来たのか。」
「おはようルーちゃん。」
「・・・ミュート?」
包み込むように抱きしめられる。
「お疲れだったようだけど、ちゃんとご飯は食べないとダメ。」
「ごめん。」
「朝ご飯は食べる。いい?」
「うん!」
ミュートに手を引かれ部屋を出ると、リュートが笑っている。
「イヒヒ。ようやく出てきたねヒッキー君。」
(その言葉を何処で覚えてきたのかを問いただしたいけど今日は許してやる。)
「心配かけてごめんなさい。」
「お!謝れていい子だね~ルーちゃんは。けどね~。」
リュートが横に避けると、後ろでは枕を抱えたまま寝るエンラの姿がある。
「まずはこっちに謝らないとね。ルーちゃんを悩ませてしまったって私に泣きついて来たんだから。」
「エンラ・・・。」
「うみゅ?・・・ッ!?ルー!?」
「おはようエンラ。」
「お、おは!?い、嫌だわ!?私ったらこんな格好で!?」
エンラは逃げるように走り出す。
「エンラ!」
「な、なんですの!?」
「話したいことがあるんだ。朝食後に僕の部屋に来て!」
ニコって笑い、ルーティンは朝食を食べに行った。
「そ、それで!?は、話って何かしら?」
目で分かるぐらい緊張しているエンラを和ませるようにルーティンは笑いかける。
「ルー?」
「僕、決めたよ。」
「え?き、決めた?何をですの?」
ルーティンは膝をつき、エンラの手を取る。
「エンラ、僕と結婚してください。」
「ッ!?!!?え!?あ!?ええ!?結婚!?」
「うん。僕の奥さんになって欲しい。」
「ッ!?うぅ・・・ぅんぐ!・・・はい!なりますわ!ルーの奥さんに!」
エンラは泣きそうになるのを耐え、笑顔でルーティンに返事をする。
「えっと、その、よろしくね?」
「ううぅ・・・ルー!!」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔でエンラはルーティンに抱き着く。
「わ、わたし、わだじぃぃぃ。」
「ごめんね。不安にさせて。僕、色々考えたよ。たくさん考えたんだ。」
「う゛ん゛。」
「いつからか、そんなことはわからない。けどね、いつも考えると真っ先にエンラのことを考えていたんだ。」
「・・・う゛ん。」
「そして夢で女神様と話して、僕は本気でエンラを愛しているって気づいたんだよ?」
「うん。」
「だから共に、エンラと共になら何だって乗り越えられるよ!これからの未来、僕は数々の問題に出会うけど!エンラと共に乗り越えるよ!」
「うん!」
ルーティンとエンラは互いを求めるように、少しの間抱きしめあった。




