計画108
エンラの真剣な表情にルーティンは自然と背筋が伸びる。
「ルーティン様には私たちそれぞれの国の王族が求婚し、ご迷惑をかけてしまったと思いますわ。そのことでルーティン様が悩んでいることも想像できましたの。」
「・・・うん。」
「そのことについて、私は抜け道を知っていますの。」
「え!?」
考えても考えても思いつけなかった答えをエンラは知っていたのだ。
「い、いったいどうやって!?」
「・・・側室ですわ。」
「・・・はい?」
エンラの答えに全く理解が出来ず、間抜けな声を出してしまう。
「詳しくお話ししますわ。」
一際大きく深呼吸してからエンラは口を開く。
「大昔になりますが、貴族の青年がルーティン様と同じような状況になったことがありますの。」
(つまり僕のように5つの国の姫から求婚をされたということ?)
「その年、王族に男の子が産まれなかったのが要因となり、夫となる者を貴族の中から探した結果、そのような形になってしまったそうですわ。その青年は何か特質した能力を持っているわけでも容姿がとても優れていたわけでもなく、ただ人の気持ちに共感できる素晴らしい感性を持っていたんですの。それが多くのお姫様を虜にしたんですわ。」
(なるほどな。ある意味で人の気持ちに共感できるということはかなり特別な力だ。様々な男性を見飽きていたお姫様にとっては新鮮に映ったのかもな。)
「人の気持ちに共感できてしまった青年は誰かの誘いを断ることが出来ず、重く悩んでしまったのですわ。悩んで悩んで悩んで、悩み抜いた結果が側室という形ですの。」
「それはどういうことなの?」
「まず青年は一人のお姫様と結婚したのですわ。そして残りの姫様を側室に迎え入れたのですわ。お姫様と結婚したことで青年は王族ですので、他の国の者を側室に迎え入れることが出来る。それが例えお姫様だろうと、ですわ。」
(そ、そんな裏技的なことが出来るの!?)
ルーティンの驚いた顔に何を思ったか察したエンラは静かに頷く。
「つ、つまりだよ?僕も君たちの中から誰かを妻に向かえれば、他の人を側室に迎え入れて丸く収めることが出来るってこと?」
「その通りですが、厳密に言えば王族になれば、ですわ。つまりその国の王族になるのということですの。」
(要するに僕は王族にならなければならないのか?そうすることでしか僕はある意味での困難をのり超えることが出来ないのか?)
ルーティンの真剣に考えている表情に心を動かされたエンラは決意をし、もう一つの方法を話し始める。
「この王族による暗黙のルールにはもう一つだけルーティン様の抜け道が存在しますの。」
「え!?もう一つ!?」
「ええ。それはお姫様が結婚に問題があると国王に認めさせることですわ。」
「・・・はい?」
「簡単なことを言えば人を殺したことがあるお姫様は結婚に問題があると判断され、婚約そのものを国王が破棄する権限を持つことが出来るのですわ。」
(え?それってつまり・・・。)
「エンラたちの誰かしか選びたくないなら他の子たちに犯罪を起こさせろってこと?」
「犯罪とまでは行かなくても、問題があると国王に認めさせることが出来れば婚約を破棄することが出来ますわ。」
思いがけないエンラの話にルーティンは戸惑いを隠せないでいる。
そのことを察したエンラは力のない笑みを浮かべ、先に馬車に戻った。
「何ということだ・・・。」
屋敷に戻った後、ルーティンは部屋に閉じこもり一人になって考える。
今日、エンラの話してくれたことについて。
「要するに僕は乙女ゲームで言う所のハーレムエンド、もしくはバットエンド、ノーマルエンドの分岐を知ったということだな。」
エンラたち、それぞれのお姫様の顔を思い浮かべる。
「正直に言えばみんなが幸せになるエンドを選ぶべきなんだろうな。だとしたらハーレムエンドかな?けど・・・。」
ルーティンはエンラから聞いたルリアのことを思いだす。
「あれが事実かどうか確認しなければならないし、他の姫たちについてももっと知りたいよなぁ・・・。」
「ヤッホー!元気かな?」
目を閉じた瞬間、ルーティンの目の前にアーネムが姿を見せる。
「あ、駄女神。」
「おい!」
「何の用だよ?」
「いや、そのさ、もっと、こう、正しい反応は君にないのかな?『わぁ!女神様!』とか、『え!?どうしてここに女神様が!?』みたいなさ?」
「ないな。駄女神が姿を見せたとしか思えん。」
「ぶーぶーぶー!」
「いいから用件を言えよ。」
「ヤダ!女神様、ご用件は何でしょうかって言って。」
(クソめんどいな。)
「メガミサマ、ゴヨウケンハナンデショウカ?」
「もっと感情をこめて!」
ルーティンはイラつくが、話が進まないので用件を呑む。
「女神様、ご用件は何でしょうか。」
「うんうん!最初っからそういう反応をしてよね。」
(マジで駄女神。)
女神が満足したのを確認することがこれほどの苦痛を伴うものなのだとルーティンは今更知ったのだった。




