計画107
「ねぇウォンドさん!」
「何ですかい坊ちゃん?」
「ガラス作りを見せてもらってもいい?エンラも見ようよ!」
「ええ!よろしいですか若旦那。」
「構いやせんよ。では、こちらへ。」
ウォンドの後について行くと、4人ぐらいの職人が机の上で作業をしている。
見たことの無い特殊な透明な粘土のようなものを手袋をはめて器用に別の形に変えている。
その形は丸いものから徐々に円柱のような形になり、ナイフで削っていく。
それは円柱の形からライオンのような形になり、職人はいろんな角度からライオンを注意深く観察している。
納得したのか、頷いて何かの液体を霧吹き上にかけてから奥へ運んでいく。
「出来たぞ。」
「了解っす。」
別の職人がライオンを受け取り、奥の部屋に進んで行った。
「ここが作業部屋だぜ坊ちゃん。」
(僕が思っていたガラスの作り方とは違うけど、これでも出来そうか。)
「あの粘土みたいなものがガラスになるの?」
「ああ。あれは透明鋼っつう無色の鋼を溶かしたやつで、熱が下がっても形を変えることが出来るんだよ。だから形を決める際にはあの霧吹きに入っている塩水をかける必要があるんだ。」
(塩水で固まるのか。)
「そんで仕上げに乾燥させて完成っつう感じだ。」
「へ~。じゃああの透明鋼を溶かしたものに色を付けれるんじゃないんですか?」
「えぇ?ん~どうだろうなぁ。やったことねぇしなぁ。」
「じゃあやってみましょうよ!もし、色がつけばもっと綺麗になりますよ!」
「お?おう。」
ルーティンに促され、気乗りのしないウォンドは透明鋼を溶かしたものに色をつけてみることにする。
花をすり潰し、花から出てきた液体を透明鋼を溶かしたものに入れて混ぜてみる。
だが、透明鋼を溶かしたものに液体が混ざらない。
「ダメだな混ざらねぇ。」
(ん~まるで水と油みたいだな。)
「残念ですわ。色の付いたガラスが出来ればお父様も喜ぶと思ったのですが。」
「坊ちゃんどうしやす?」
(やはりそう上手くはいかないか。けど、どうにかして色を付けたいよなぁ。ん~透明鋼に元から色付きが存在するのかな?)
「若旦那!透明鋼が入りました!溶かしておきますか?」
「そうだな。頼んだ!」
「へい!」
(ん?待てよ・・・。)
「僕もその作業を見せてもらってもいいですか?」
「え?それは・・・。」
「構わねぇよ。坊っちゃんに怪我させんなよ。」
「へい。」
若い男について行くと、倉庫に入って行く。
そこから透明鋼の入った箱を持ち、隣の大きな釜の中に入れ、火の上に置く。
「これで後は待てば1時間ぐらいで溶けますよ。」
「ふむふむ。」
「じゃあ俺は隣にも同じものを・・・。」
「ねぇ。」
「へい?」
「隣のやつにはさ・・・。」
「こ、これは!?」
ウォンドの前には透明鋼を溶かした無色のものとオレンジ色の付いた透明鋼を溶かしたものが机の上に置かれている。
「色がついていますわ!」
「これで作れるかやってもらえますか?」
「・・・やってみよう。」
ウォンドはオレンジ色の方を適量取り、形を作っていく。
丸い形から平たくなり、ナイフを使って器用に花の形を作っていく。
その作業は早く、物の数分で出来上がり、霧吹きをかける。
できたものを念入りに確認し、乾燥室に運ぶように部下に頼んだ。
「ここまでは出来てますよ。違和感も無いですし。乾燥しても問題なければ本当に色づきのガラスが出来ますぜ。」
嬉しいのか、ウォンドの声は少し高い。
「でもどうしてですの?さっきは混ざりもしなかったのに。」
「うん。だから溶かしている時に一緒にさっきの花の液体を入れてもらったんだ。そしたら面白いように混ざってね。」
「ナッハッハッハ!坊ちゃんはすげぇぜ!ガラスに色を付けるなんてな。」
「いや~。」
ルーティンは照れ臭くて頭を軽く掻く。
「これで本当にできれば、ガラス細工にさらなる発展になりやすよ!」
「すごいわルー!」
「まだだよエンラ。乾燥してからのお楽しみさ。」
「乾燥にはまだ時間がかかりやすから観光の続きをしてきてはどうですかい?乾燥が終わり次第、夜にでも届けますよ。」
「じゃあお願いしますわ。ルー、次に行きましょう。」
「うん。」
最後にエンラがルーティンを連れてきたのはマーマレイドの町が一望できる場所である。
こうして見渡すと、とても綺麗な町並みだ。
前世の記憶が正しければイタリアの風景に近い。
「本当にいい場所ですわ。マーマレイドは。」
「うん。とても綺麗だ。」
「・・・ねぇルー。」
エンラの声のトーンが変わる。
それに驚いてエンラの顔を見ると、声以上に真剣な目をルーティンに向けてくる。
「エンラ?」
「貴方にお話ししておきたいことがあります。これは王族の秘密のような歴史です。別に何かをねだるようなことはありません。ですが、この話を聞いたら今後のことを改めて今までより深くお考え下さい。」
深々と頭を下げたエンラにルーティンは静かに頷いた。




