計画105
「以上が私があの日に起こった出来事です。その後、様々な取り調べを受けた私はお城にいられなくなり、陛下の紹介でスズリ様の下で働かせていただいているのです。」
(なるほど。)
「その、殿下が亡くなった時の部屋の様子を詳しく教えて欲しいんだけど。」
「詳しく、とは?」
「えっと、殿下が亡くなった時にはテーブルの上には何があったかな?」
「確か・・・飲みかけのワインと、空のグラス、それから濡れた紙でしょうか?」
(濡れた紙?)
「その紙は何?」
「申し訳ありません。濡れてしまっていたので何かはわかりません。」
「そうですか。」
(じゃあやっぱり今のところ手掛かりになりそうなのはメイド長ぐらいか?)
「・・・ねぇ。」
ずっと黙っていたエンラが口を開き、意外な着眼点を言う。
「何でしょうかエンラ様。」
「その濡れた紙ってどんなのだったの?」
「どんなのと言われても私にはわかりかねるのですが。」
「ごめんなさい。質問が悪かったわ。私が聞きたいのは書いてあった紙の種類よ。例えば、資料の後ろだったとか、ノートの切れ端だとか。」
「そう言われればあれはノートの切れ端だったような気がします。」
「ノート・・・ヘーゼル兄様ってノートなんて使っていたかしら?」
(これは!)
「流石だよエンラ。」
「え?」
ルーティンはこみ上げてくる笑いに、ニヤケが止まらない。
「ど、どうしたのルー?」
「今まさに重要な手掛かりを得たんだよエンラ。」
「え!?」
「あらあら。何か面白いことが起きそうね。」
「どういうことですのルー!」
「ノートさえ手に入れば濡れて読めなかった紙に何が書かれていたかわかるかもしれないんだよ。」
「本当ですの!?」
「うん。それに、今のエンラのものの見方を聞いて、もう一つだけリーメさんに聞きたいんだ。」
ルーティンの中で確実な道が出来つつある。
「何でしょうかルーティン様。」
「えっとね・・・。」
「本日はお招き頂きありがとうございますわ。グステフ卿。」
エンラは綺麗なドレスを着て、優雅なお辞儀を披露する。
ルーティンはエンラにつられるようにお辞儀する。
「ハッハッハ。そう畏まらなくてもいいですよエンラ様。本日は本当に簡単なお茶会ですから。」
(の、割にはかなり凄いセッティング何ですけど?ケーキが何種類あるんだよ?ここは店かな?)
周りを見ていると、グステフの視線に気づく。
ルーティンと目が合うと、何か納得したような感じに頷く。
「君が、ルーティン君だね。」
「え?」
「君のことは良く知っているよ。あの日にも僕はいたからね。」
「あの日って・・・!?」
「そう、君の誕生日の日だよ。実は君の父親とは旧知の仲でね。一月に一回程度の連絡を取っているんだよ。」
「そうだったんですね!・・・あの、父さんは・・・。」
「ん~君の想像の10倍はヤバいかな。」
(ですよね~。)
「この前も顔を出したが、もはや暴走状態とでも言っても過言ではなかったぞ。」
「す、すみません。」
「さぁ、座りなさい。色々と君には聞きたいからね。」
「・・・はい。」
状況が上手く理解できないエンラはメイドに頼んでケーキを食べることにした。
「それで、ルーティン君はどうしてエンラ様と?」
「まぁ色々成り行きで・・・。」
ルーティンは包み隠さずに説明する。
「ハッハッハ。そうか、そうか。なかなか君も数奇な運命を持っているね。」
「あはは。」
「だが、どうして連絡を取らないんだ?連絡が取れればすぐにでも君の父親が迎えに来てくれると思うぞ。」
最もな意見にルーティンは苦笑いするしかない。
「私の方から連絡するかい?」
「お願いできますか?それと、できれば迎えはなくていいと。」
「ん?どういうことかな?」
「僕は今やるべきことがあるんです。それを終わらせずに帰ることは出来ません。」
ルーティンの真っすぐな目に、昔のマクスの顔が見える。
「・・・同じだな。」
「え?」
「いや、何でもない。なら、このマーマレイドに呼んでおこう。帰る時が来たらここに戻ってきなさい。」
「はい!」
「しかし、実に惜しい。」
グステフは懐から一枚の写真を取り出して見ながら言う。
「もしかしたら私の娘の婿になっていたなんてな。」
「はい?」
「少し前だが、君のお母さんが妊娠していると分かった時私の妻も妊娠していたんだよ。それで、口約束を交わした。産まれてくる子供が男の子と女の子だったら結婚させようっとね。」
「そ、それは困りますわ!」
ケーキを頬張っていたエンラが話に入ってくる。
「ハッハッハ。そうだろうな。君を見れば本気でルーティン君のことを想っていることは明白だからね。」
一瞬にしてエンラの顔が真っ赤になる。
「まぁ、選ぶのは君だ。私は君の選択を尊重するよルーティン君。」
(よ、よかったぁ。六人目とか止めてくれよ。)
「お茶が冷めてしまったね。淹れなおさせよう。」
その後はグステフから父親の過去の話をたくさん聞き、ルーティンたちはそのまま夕食をご馳走になって屋敷に戻ったのだった。




