計画103
「では続きを話しますね。」
「お願いします。」
リーメは口をお茶で潤してから話し出す。
その後、やることが早めに終わった私は他のメイドの手伝いに行きました。
行ったのは中庭です。
中庭の掃除を手伝った後は朝食のサポートです。
陛下を始めとした皆様の食事にはメイドたちが壁際で待機しています。
待機しながら、命令を待つのです。
トーストをナイフで切った後、陛下は無言で口に運び、ゆっくりと噛みしめる。
「父上、本日のご予定をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「アーモンドよ。何かワシに用があるのか?」
「はい。父上とご相談したいことがありますので時間を作って頂けないかと。」
「うむ。それならば夜、夕食後でどうだ?」
「ありがとうございます。食事の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした。」
「構わぬよ。」
この時私以外のメイドも不思議に思ったことがあります。
それはヘーゼル様が悪態をつかなかったことです。
普段ならアーモンド様や他の御兄弟の方が陛下と食事中に話すと決まって悪口を言うんです。
けれど、それがありませんでした。
それどころか食事を淡々と進めていました。
まるで機械のように。
その後食事を終えたヘーゼル様は執務室に寄り道をせずに向かいました。
私はヘーゼル様の食器を片付けた後に執務室に向かいました。
どうせ仕事もせずに遊んでいるのだろうと思っていたのですが、その日は違いました。
「失礼しますヘーゼル様。」
リーメはノックをしてから一分ほど待って執務室に入る。
「ヘーゼル様、本日のッ!?」
「何だ?」
ヘーゼルはイラつきながら目の前の書類にサインを書き込んでいく。
「い、いえ!失礼しました!改めて報告させていただきます。本日のお仕事ですが、現在ヘーゼル様の机の上にある紙の束のお目通し。それから午後からはクック様がお見えになられますが・・・。」
「待て。」
「はい。」
目の前の書類にサインを書くと、ヘーゼルは窓の外を一瞬だけ見る。
「クックの件を午前中に変えろ。」
「午前中ですか?クック様に確認しなければなりません。お時間を頂いてもよろしいですか?」
「手短にしろ。クックが駄々をこねるようなら今日は会わないと言っておけ。いいな?」
「畏まりました。では、そのようにお伝えします。」
「早くしろ。」
「はい。」
私は言われたとおりにクック様との面会を午前中にして頂き、執務室に戻りました。
戻る途中でアーモンド様に呼び止められ、ヘーゼル様が何か悪さをしていないかと聞かれましたが、何もなくむしろお仕事をしていますとお答えしました。
アーモンド様も私同様に驚いていました。
その後部屋に戻り、ヘーゼル様が記入した書類を整理した後にクック様との面会の場をご用意しました。
「ふ~むふむ。実にいい茶葉を使っているのですねヘーゼル殿下は。」
「世辞はいい。用件は何だクック。」
「これはこれは失礼。実はですね・・・。」
クックは懐から子袋を取り出し、テーブルの上に置く。
音から金貨だろうと推測できる。
「・・・これは?」
「いえですね、実はヘーゼル殿下にお願いしたいことが2つほどあるのですよ~。」
「まどろっこしいぞクック。さっさと言え。」
「ですが・・・。」
クックはチラッとリーメを睨む。
うわぁって思いました。
あからさまにどっか行けって目で言っていたからです。
だから会釈して去ろうとしたのですが、ヘーゼル様がそれを止めたのです。
「こいつは問題ない。こいつは身分の低い奴だ。知能は奴隷と変わりはしない。」
「そうは言いますがねヘーゼル殿下。」
「いいから話せクック。話せないって言うのならこれで終わりだ。」
「ま、待ってくださいヘーゼル殿下!?
ヘーゼルが席を立つと慌ててクックは止めに入り、リーメを睨んでから話し出す。
「我が領地は今年不作続きで、国に納めるにはとてもではありませんが足りません。平民どもには説教してやりましたが、それでも不作は変わらないでしょう。そこでです。ヘーゼル殿下のお力で今年はもう既に納めたことにして頂けないでしょうか?もちろん、ご内密に。」
「無理だな。」
聞く耳持たない、そんな態度をヘーゼルは顕著に示す。
「そこを何とか!」
「無理なものは無理だ。俺は財政には関わっていない。それにお前の分の量を何処から捻出するんだ?量が合わなかったらすぐにバレるぞ。」
「それは・・・。」
「ふん。そんな程度の考えならばこの話は終わりだな。」
クックがすぐに言葉が出てこないとわかるとヘーゼルはこの話を終わらせた。
あからさまな悪だくみ、ヘーゼル様なら乗ると思っていたのにキッパリと断った態度。
今日一日で、私の中でのヘーゼル様と全くの別人じゃないかと思うほどご立派な姿を見せていました。
私が恐怖を覚えるほどです。
けれど、疑問も持ちました。
私をこの場に残したこと。
ヘーゼル様がクック様の悪だくみに乗らなかったこと。
時間を気にしているような態度であること。
普段のヘーゼル様にはないご様子でした。




