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元剣士、聖女に転生!?  作者: 銀花
第一部
6/30

男爵家の庭

アリアーツェの一日は、空腹から始まる。お腹が空いて、目が覚めるのだ。


「う……おはよう……みんな」


光と風と水滴達が、はしゃいで挨拶を返してくれる。


五歳になったお祝いに、ひとり部屋をもらえた。


母親と父親は一緒の部屋で、その隣がアリアーツェの部屋になる。


床一面に敷く絨毯はなく、ベッドの足元にマット程度の布が置かれている。使わない部屋のカーテンを綺麗に切り取ったらしい。おしゃれなシマシマ模様である。


この世界にスリッパはないのか、マットの上にきちんと揃えて置いた、ショートブーツを履く。


夜着を脱ぎ、タンス(とは名ばかりの、長持を横に立てた)から今日の服を取り出す。


淡いベージュのシンプルなワンピースだ。ヒダで模様を作り、胸元に木製のボタンがついた、可愛いめの。


布団をきれいに直して、部屋を出る。


もうすぐ初夏をむかえる男爵領は、ちょっと蒸し暑い。


テトテトと廊下を進み、一階につながる階段手前まで来て、ふんわり匂ってきた香りにお腹の精霊がぐー、とうなった。


お腹の虫ではなく、この世界では精霊だ。


子供にはちょっと降りづらい階段を慎重に降りて、一階に辿り着く。


(今日の朝ごはんも、豆のスープとおイモかな)


厨房を覗いてみようとドアを開けると、エプロン姿の年配の女性が、鍋を掻き回していた。


テトテト、と近づく。


「おはよう、マーサ」


「あら、おはようございます、お嬢様」


マーサは、両親が男爵を受け継いだ時から雇われている唯一のメイドだ。センテ男爵家には彼女ひとりしか仕えていない。


「お庭にいってきます」


「はい、行ってらっしゃいませ」


勝手にいなくなると両親が心配するので、念の為メイドに伝えて、屋敷のドアに──向かわずに、厨房のドアを開ける。


センテ男爵家で庭と言ったら、屋敷の正面ではなく裏庭だ。ちょっとした畑があるのだ。今朝の目的は、庭の調査であった。


適当に廃材の柵で囲われた、雑然とした畑が見渡せた。雑草ばかりかと思われたが、ちょこちょこと野菜や、芋が植わっている。あまりにも雑然と。


(うわぁ……)


昨夜、アリアーツェはふと疑問に思ったのだ。なんで野菜がちょっとしかできないのか、たまに虫食いがあるのか。両親に尋ねたら、ちょっとしか育たないのだと答えてくれたが。


これは、改善の余地あり。


アリアーツェは、ふんすと腕まくりをした。




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