儀式と神木
司祭たちが囲うように五隅にひかえ、小さく祝福の詩を唄う。
たかくひくく、少し物悲しげな旋律は厳かに空間を満たし、幼いアリアーツェも厳粛な気持ちになっていく。
同じく五歳を迎えた同じような子供も数人いたが、不安そうな子も、落ち着きのない子も、不思議と心鎮めて中心の木に注目した。
ほっそりした柔らかそうな木肌の木。高さは建物の二階くらいだろうか。葉はなく、少し黒ずみ、なんだか元気がないように見えた。
(お水が、足りないのかしら?)
ぼんやりとアリアーツェは思う。
たっぷりお水をあげれば、元気になるかもしれない──思いついた瞬間、何も無い天井から、パラパラとなにか降って来た。
(天の神さま、ソアルの光も必要だわ……)
木の周囲に、小さな光の珠がふわっと生まれた。優しく暖かな光が、木を照らし出す。
(こんな建物に閉じ込めないで、気持ちいい風にあたれればいいのにね……)
ズズ、と世界が揺れた。
頑丈な白い石で建てられていた教会が、吹き抜けの天井部分から崩れていく、サラサラと砂粒になって。
サアッと爽やかな風が穴の空いた天井から吹き込んで、木を優しく撫でていく。
司祭たちも、外で待機していた大人たちも、目を見開いてその一部始終を目撃した。木の周囲に光と、雨と、風が集まってぐるりと巡り……。
見る見るうちに黒かった木肌が茶色く変わり、芽を出した葉が繁り、金色の果実が膨らむ。うちのひとつがコロンと枝から落下し、まるで自ら選ぶようにアリアーツェの目の前まで転がっていった。
(レモンに似てる…………? れもん? ってなに…………あ、れ?)
さわやかな酸味ある香りに、アリアーツェはふと、記憶の洪水があふれてきたのに気付いた。
果実は勝手に床から跳ねて、アリアーツェの胸元に飛び込んでくる。その衝撃が、枷を解放する。
ふわり、と。幼いアリアーツェの身体から白い炎が立ち上る。
「あ──」
(わたしは……いいえ、自分、は……っ)
瞬いた淡い紫の瞳のなかでキラキラと金の光が弾け、淡い金髪がソアルのごとくきらめく。その姿は、あまりにも神々しい。
「聖女だ!」
誰かが叫んだ。
ちがう、とアリアーツェの口が無音に動く。
一番に、両親が駆け寄った。アリアーツェを守るように抱きしめた。
「だれか皇城に!」
「司兵を呼べ!」
「──……! ……!」




