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元剣士、聖女に転生!?  作者: 銀花
第一部
3/30

儀式と神木

司祭たちが囲うように五隅にひかえ、小さく祝福の詩を唄う。


たかくひくく、少し物悲しげな旋律は厳かに空間を満たし、幼いアリアーツェも厳粛な気持ちになっていく。


同じく五歳を迎えた同じような子供も数人いたが、不安そうな子も、落ち着きのない子も、不思議と心鎮めて中心の木に注目した。


ほっそりした柔らかそうな木肌の木。高さは建物の二階くらいだろうか。葉はなく、少し黒ずみ、なんだか元気がないように見えた。


(お水が、足りないのかしら?)


ぼんやりとアリアーツェは思う。


たっぷりお水をあげれば、元気になるかもしれない──思いついた瞬間、何も無い天井から、パラパラとなにか降って来た。


(天の神さま、ソアルの光も必要だわ……)


木の周囲に、小さな光の珠がふわっと生まれた。優しく暖かな光が、木を照らし出す。


(こんな建物に閉じ込めないで、気持ちいい風にあたれればいいのにね……)


ズズ、と世界が揺れた。


頑丈な白い石で建てられていた教会が、吹き抜けの天井部分から崩れていく、サラサラと砂粒になって。


サアッと爽やかな風が穴の空いた天井から吹き込んで、木を優しく撫でていく。


司祭たちも、外で待機していた大人たちも、目を見開いてその一部始終を目撃した。木の周囲に光と、雨と、風が集まってぐるりと巡り……。


見る見るうちに黒かった木肌が茶色く変わり、芽を出した葉が繁り、金色の果実が膨らむ。うちのひとつがコロンと枝から落下し、まるで自ら選ぶようにアリアーツェの目の前まで転がっていった。


(レモンに似てる…………? れもん? ってなに…………あ、れ?)


さわやかな酸味ある香りに、アリアーツェはふと、記憶の洪水があふれてきたのに気付いた。


果実は勝手に床から跳ねて、アリアーツェの胸元に飛び込んでくる。その衝撃が、枷を解放する。


ふわり、と。幼いアリアーツェの身体から白い炎が立ち上る。


「あ──」


(わたしは……いいえ、自分、は……っ)


瞬いた淡い紫の瞳のなかでキラキラと金の光が弾け、淡い金髪がソアルのごとくきらめく。その姿は、あまりにも神々しい。



「聖女だ!」



誰かが叫んだ。


ちがう、とアリアーツェの口が無音に動く。


一番に、両親が駆け寄った。アリアーツェを守るように抱きしめた。


「だれか皇城に!」


「司兵を呼べ!」


「──……! ……!」




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