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元剣士、聖女に転生!?  作者: 銀花
第二部
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幼年学校


髪と、瞳の色を、クライツ夫婦と同じにして、白いレースの襟付きの紺色のワンピースに着替える。


真っ白な靴下と、真新しい焦げ茶のショートブーツを履いて、お気に入りのポシェットを肩にかければ完成だ。


大人用の姿見の前で、華麗にターンして、にっこり笑う。


儚げな美幼女は、少し身長が伸びた。


「お似合いですよ、アーツェ様」


「ありがとう、アン!」


飛びつきかけて、思いとどまる。


しずしずと手足を戻し、揃えて、やっちゃったーとばかりに笑う。


メイドのアンは、満足そうに頷く。


「では、そろそろ行きましょうか」


「はいっ」


アリアーツェは、キリリと表情を引き締める。


今日からとうとう、学校に通うのだ。






クライツ領には、幼年学校がふたつ。


ひとつは領民の子供用の、平民用。もうひとつは、近場の貴族家からも来る、貴族用。


当然、アリアーツェは領主の養女なため、貴族用に通う。


クライツ領地の回りには、子爵領が二つ、男爵領が二つ、あと領地を持たない騎士爵がいる。


それぞれ子爵領には自領の学校があるが、男爵領にはなく、クライツ領に通っているとか。


五歳から十歳までの年齢で、クライツ領の幼年学校に通っている貴族の子供は、現在十一人。


ただ、平民用の幼年学校はすぐ隣にあり、一緒に遊ぶ事もあるとか。


「友達、いっぱい、できたのです!」


「まだ学校につく前ですよ。気が早いですね、アーツェ様」


馬車での行き帰りは、御者さんと護衛さん、あとメイドのアンも一緒だ。


とはいえ、クライツ領は田舎も田舎。田舎貴族として、やって行ければよい程度の教育しか、していない。


学校は、広い敷地に経つ、平屋の家のようだった。横に広い。


庭が広くて、野球ができるくらい広い。登りやすそうな木もある。


馬車で到着すると、想像したよりたくさんの子供が集まっていて、驚いた。百人くらいいるのでは?


アンに手を貸してもらって、馬車から降りると、ザワついていた子供達がシーンと静まった。


みんな、ぽかんと口を開けてアリアーツェを見ている。


たくさんの子供の姿に、アリアーツェは嬉しくてにっこりした。


その場で、簡単にお辞儀をする。


「アーツェ・クライツです。今日から、お世話になります」


首にかけたネックレスが、キラリと光った。貴族用のタグだ。


先生らしき大人が、三人歩み寄る。


「いらっしゃいませ、アーツェ様」


「よろしくお願いいたします。貴族用はこちらですよ」


一人の先生が、パンパンと手を叩く。


「ほら、みんな。ぼうっとしない。部屋に戻って」


子供達は、わあわあ叫びながら、反対側の平屋に入っていく。


賑やかで騒がしい様子に、アリアーツェは焦がれる眼差しを向ける。


儚げな横顔に、大人の先生達まで一瞬見惚れた。


「私も、あちらが良いです」


「コホン。申し訳ありませんが、身分事にわける決まりで……」


「ま、まあ、詳しい話は、中で」


アン達は、いったん帰宅。


平屋の中は、土間が広くて、不要になった民家を改造したらしい。


それなりに整えられていた一室にて、学友になる子供達が待機していた。


男爵家、騎士爵家の少年と少女が十一人。


アリアーツェの姿を目にした瞬間、彼らも時が止まる。


少年達も、少女達まで顔を赤らめた。


初々しいなぁ、とアリアーツェはにっこり笑う。


それぞれ自己紹介を済ませたあと、お喋りタイムとなった。


メイドがいて、お茶をいれてくれる。


先生方から、授業内容を簡単に説明された。


お昼までは、読み書き、計算などの座学。


お昼を食べて、お昼寝したら、運動だ。


女子は、刺繍や、歌でも良いらしい。


授業には、なんと音楽もあった。


今日は、初日と言う事で、簡単な皇国の歴史から。


教室というより、応接間でそのまま授業のようである。


ソファーがフカフカで心地よく、先生のお話を聞いていると眠くなる。


しっかり眠った。


目が覚めたら、皆が惚れ惚れとアリアーツェを眺めていた。


「目の保養ですわー」


「画家に描かせたいですね」


慌てて謝ったが、眠い時は眠って良いという。


部屋を見回したら、半分の子供はすやすやしていた。


学校の中を、案内してもらう。


授業に使う応接間が二つ。共用のドレッサールームが男女別に一つずつ。


簡単にお湯を沸かしたりする給湯部屋が一つ。


給湯室の隣は、先生方の部屋。先生の部屋には、授業で使う革張りの本が保管されていた。


あとは、通いのメイドさん達の控え室と、護衛さんの控え室。


裏庭には、ゴミ捨て場。ゴミの片付けは専門業者がするらしい。



ひと通り案内されて、応接間に戻るとお昼ご飯が用意されていた。


籠に、サンドイッチらしきものが、一人分ずつ布包みされている。


食べたらお昼寝だ。寝たばかりで眠れなかったが、ソファーでごろ寝だ。


午後はやっと、前庭に出られた。


隣の建物が騒がしくなり、子供達が一斉に庭に飛び出して行く。


迷わず、混ざろうと駆け出したら、慌てて肩を掴まれた。


最年長の、騎士爵家の女子だ。


「アーツェ様、私達はお散歩ですよ」


「えっ」


あんなに楽しそうなのに? 何やら追いかけっこが始まっている。


困惑して先生達の方を見ると、アリアーツェのお願い視線に負けたのか、仕方なさそうにうなずいた。


「怪我をしないように」


「はーいっ」


ぴょんと跳ねて、アリアーツェは混ざりにいった。




遊具、というものはないのだろう。


最初はびっくりされたが、追いかけっこや、隠れんぼ、また追いかけっこに楽しく混ざっていたら、あっという間に時間が過ぎた。


年長組みが、無茶や怪我をしないよう見張っていて、悪いことをするとちゃんと注意する。


アリアーツェは楽しくて、嬉しくて、ずっとニコニコしていた。


疲れたら、端っこに寄って休憩だ。どうやら、庭の真ん中にいる間は参加、端っこに寄れば休憩中と見なされるらしい。


端っこで、土いじりする子供もいたし、屋内に戻っていく子もいた。


お迎えの馬車は、三時頃。


たくさんの友達に、またねーと声をかけられながら、帰路につく。


にっこにこのアリアーツェを見て、アンは苦笑しきりだった。


「楽しく遊べたようですね」


「うんっ!」


興奮したままクライツ家に帰り、夕食の席では、どれほど楽しかったか、クライツ夫婦にめいっぱいお話した。


夫婦も使用人達も、うんうんと聞いてくれたのだった。


これから、ほとんど毎日、学校に通うのだ。


幸せいっぱいで眠りについたアリアーツェを、精霊達も幸せな気持ちで見守り続けた。





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