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元剣士、聖女に転生!?  作者: 銀花
第一部
13/30

狩人



狩人組合。


大陸の歴史上、始まりはかなり古い。


初期は、村ごとの小さな狩人同士の取引から始まって──今では独自の力と、所属人数を誇っている。


帝国が大陸統一を果たす前は、国には関与しない独立組織だったが、統一後はそうもいかなくなった。


組織のトップが下ったのだ。


自動的に、狩人組合──通称ギルドは、冒険者組合と名称を直し、帝国下の民間組織となった。


ただ、仕事内容は変わらない。地域に出没する危険な獣の排除、または狩りの成果の売買。


個人的な護衛依頼や、様々な問題解決。


優秀なギルド員にはランク付けがされ、最高ランクはS。


そして現在、最高ランクに指定されている者は──。












視線を感じた。


センツィオ領から、センテ領へ帰る道すがら。


シャーネットは道端のお花を一生懸命摘んでいる。お土産買うのを忘れたため、お花を代わりにしよう! と言い出した。


アリアーツェも、両親へのお土産を忘れた。


お花もいいが、食べれる物がないか、辺りを見回して──。


(……見られてる)


姿も、方向も分からないが。


拳大の、石をひろう。


ポイッと林の奥に投げる。


(精霊さん、なにかいる?)


石の下に、ダンゴムシみたいなヤツが。


むむむと見詰める。


さすがに虫のお土産はないだろうか。それとも両親なら、お皿に飾るだろうか。悩ましい。


(イルヨー、カリウド!)


(カリウドイル。ジットシテル)


(狩人!?)


狩りの最中なのか? こんな領地の間の道のそばで?


チリチリと後ろ首にひりつくような。


ゾワゾワする。


「シャーネットちゃんっ、はやく、帰ろっ?」


たまらずに、シャーネットを呼ぶ。夕空色の瞳がきょとんとした後、ニパッと笑う。


「うんっ、かえろー」


たたっと駆け出したはいいが、逆走だ。


「シャー、ネットちゃんっ! お家はあっちー」


センツィオ領の看板付近まで、おじじか見送りしてくれた。下手すると、まだいるかもしれない。


シャーネットを追いかけ、ゆるくカーヴした道を行くと、やっぱり。


「! アリアーツェ! どうしたー? やっぱりおじじと一緒が良いかのぅ?」


両手を広げて来たので、ぎゅっと抱きつく。ぐりぐりとお腹に頭をこする。おじじの匂いがした。


「ううんー、帰るのー」


「そうか……気をつけてなー」


ちょっとさみしい。でも両親にも会いたい。


看板を見て、後ろを振り返って、シャーネットは小首をかしげる。帰ってきたはずなのに、という顔。


「? ?」


「シャーネットちゃん、かえろー?」


「うんっ」


今度こそ、帰ろう。


このやり取り、三回目だしな。







奇妙な視線は、もう感じなかった。


やっと我が家だ。


たった一泊しただけなのに、長い間帰ってなかった気がする。


センテ男爵家の入り口では、母親がウロウロしていた。


シャーネットちゃんと別れて、アリアーツェは駆け出した。


「母様っ、ただいま、ですっ」


「アリアーツェ! お帰りなさい……っ」


ぎゅうっと抱きつくと、優しく抱き締められ、頭を撫でられた。


お互いの顔を良く確かめて、ふふっと笑う。


「おじい様と、おばあ様は元気だった?」


「うんっ」


「あら、可愛いポシェットね?」


「おばばにもらったのっ」


そのまま台所に行くと──裏口のドアが開いていて、のっそりと人影が立ち上がった。


狩人姿の、大男だ。


「っ……」


(な ん で)


アリアーツェは、心臓が止まるかと。


「あら、ありがとうございました。みんなで分けさせていただきますわ」


「……お嬢さん、ですか?」


「ええ、五歳になったばかりで。アリアーツェですわ。アリアーツェ、こちらは狩人のヨーデルさん」


何を考えてるか分からない、透明な瞳が向けられ、鳥肌が立つ。


思わず母親の後ろに隠れる。


「あら? ごめんなさい、恥ずかしがりやで……もう、アリアーツェったら」


「や、構いませんよ。こんな格好ですし。じゃあ、猟は届けたんで」


「ありがとうございました」


ドアが開いたまま、気配だけが去って行く。


狩人。そうだ。アイツは──。





『──に、して下さい……っ』


『悪い。断る』





「……アリアーツェ……? どうしたの、急に大人しくなって……。狩人さんは、獲物を届けてくれたのよ。鹿がとれたのですって! 皆に分けないとね」


「……狩人、さん」


「そうよ? お肉を持ってきてくれたの」


名前、が違う。


(アイツの名前は──)












狩人組合の入り口をくぐると、地元の猟師達が視線を向けた。


見ない顔だったのだ。


受付に向かう大男を、胡乱そうな眼差しが追いかける。


中くらいの使いこなされた弓。背中に背負った矢筒。獣の皮をなめした古びた服。腰に下がる小ぶりの斧。


顔を半分隠す、汚れた頭巾に染み付いた血の匂い。


「……依頼手続きを、頼む」


「はい。タグを拝見……っ? えっ、ゴールドっ!?」


受付嬢が慌てふためく。


「……え、Sランクの……ロッダス様……失礼しました! 獲物の依頼でしたね。はい、完了です。こちらが報酬です」


「ありがとう」


金のタグを胸元に仕舞い、報酬の硬貨はズボンのポケットに突っ込み、大男は組合を後にした。


「あれが──Sランクの………?」


不気味さを感じた狩人達は、関わるまいと首を横に振った。


元々は、Aランクの狩人だったはず。


それが、ある功績を認められ、ランクが上がったという噂を聞いた。


元英雄殺し。


戦後は騒がれていたが……なぜこんな田舎に現れたのだろう?





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