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元剣士、聖女に転生!?  作者: 銀花
第一部
10/30

おじじとおばば


暗闇の中にあやしく輝く丸い……水晶の。のろいか祝福か、分からない言葉をつぶやく、老女の窪んだ眼窩。


脳裏に切れ込みが入ったような、細切れの場面が浮かび上がる。





『お前さん、殺されるよ──……にね』


『嘘だ。有り得ない!』


そうだ。有り得なかった。


信頼していたの、に。予言の通りになった……。









心臓がイタイ。


ぎゅうっと両目をつぶる。


「……で、お昼はウチでとるといい。シャーネットちゃんも、おいで」


「はーい! 行こー、アリアーテちゃん」


元気よく、シャーネットに引っ張られる。慌てて、足を動かした。


小さいが、便利そうな雑貨が売っている雑貨屋。


生地や古着を売っている服屋。


新鮮な野菜を売っている野菜屋。


金物や道具を売っている道具屋。


町の人達は、貧しくとも清潔にしていて、みな笑顔だ。中には領主の祖父に声を掛けてくる者達も。


(……よい、領地なんだなぁ)


アリアーツェが聖女だと、第二皇子と婚約した事も公布されたはずだが、変な目は向けられない。


あくまで、領主の孫として見ているのが分かる。


平和な町の様子を感じ取りながら、おじじの館に着く。


アリアーツェのお家より、ちょっと大きい。


一階の応接間に通された。


「流れの民が始めるのは、夕方だ。それまで、ウチにいなさい」


「はあい」


「はーい」


少女二人の頭を撫でて、おじじはメイドさんを呼ぶ。


センツィオ領のメイドさんは、三十代くらいのそばかすの女性だ。子供の相手も嫌がらずにしてくれる。


「あああ可愛いい……っ。何か飲みます? トイレは大丈夫です?」


「だいじょうぶ、です」


「お水、ください」


「すぐに持ってきますっ」


ドタバタと走って行った。


待ってる間に、祖母がひょっこり顔を出す。


「あら、あら、可愛いお嬢さんが二人も。こんにちは」


アリアーツェとシャーネットは、ソファから降りて、祖母に駆け寄る。


「こんにちはっ、おばばさまっ」


「こんにちはーっ」


「ちゃんとご挨拶できて良い子ねぇ。良い子には、いいモノがあるわよ?」


胸元に隠すように握っていたのは、あまり布で作った巾着だった。


淡い紫色の糸で塗ったものと、黒い糸で塗ったものと。通し紐は動物の皮だ。


子供の手でもちゃんと開け閉めできるし、紐は肩に掛けられる長さだった。


「わあ……っ、ありがとう、おばばさまっ!」


「ありがとう、ございます!」


巾着の中に、ちいさく硬いモノが。


取り出して見ると、見覚えのない硬貨だった。


黒と灰色の混ざった、楕円形。稲のような植物と、鎧の騎士の姿が。おそらく鋳造だ。


「お店で使えるから、好きなおやつを買いなさいな」


初、お小遣いである。もちろん嬉しくて、いっぱいありがとうを言った。


メイドさんがお水を運んできて、しばし4人でお喋りである。


「畑のねー、お花も美味しそうだったの!」


「お花はかわいそうだから、食べないであげてね」


「はぁい」


シャーネットは聞くだけで楽しいのか、にこにこしてアリアーツェを見詰めている。二人とも、もらったばかりのポシェットを、大事に胸元に抱えていた。


楽しくお喋りしていたら、あっという間にお昼である。


一階の食堂に案内された。既にテーブルの上に用意されていた料理を見て、アリアーツェは衝撃を受けた。


パン。


ふっくらと焼きあがったばかりの、パンが。お皿に一つずつ。なんとも香ばしい香りが鼻をくすぐった。


あとは、野菜に玉子料理、燻製肉。お肉がある! それも大事だが!


「お……おばばさま……これ」


「あら? パンははじめて? お祭りだから今日は特別なの。小麦は高くてねぇ。年に数回しか食べられないのよ」


「……!」


(どうりで、豆とイモしか出ないワケだ!)


おじじとおばばに挟まれる席で、椅子に厚めのクッションを乗せてもらい、アリアーツェはお昼を頂いた。


大きさは子供の握り拳くらいしかないが、立派なパン。


まだかすかに暖かく、噛みちぎるのが大変だったが、パンはパンだ。


(おおお……美味しーい)


シャーネットちゃんもびっくりしていたが、向かいの席でメイドさんに助けられつつ、食べている。


大人達は始終にこやかに、少女二人の嬉しい反応を眺めていた。


お昼でお腹がいっぱいになると、次はお昼寝だ。


これは大人も、子供も一緒にである。


「おじじと寝る? それとも、おばば?」


シャーネットちゃんと相談だ。


こしょこしょと、二人で内緒話をする。


「ん〜? え〜っとね」


チラッと振り返ると、おじじとおばばが緊張して待っている。


「……おばばさま?」


「まあまあ、おほほ。じゃあ二人ともいらっしゃい」


「ぬぬう……」


おじじは悔しそうに、部屋を出て行った。


なお、居間のソファをくっつけて、そこに寝っ転がった。


おやすみなさい……。






(つ∀-)オヤスミー

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