十五話
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「よし、じゃあ今日の仕事内容の確認ね。やる事はゴブリンの全滅と巣穴の解体、あといるなら捕まってる人の救出。私が前衛をやるからアリスは後衛、飛鳥君は基本は後衛だけど敵の数が多い時は前衛に回ってもらってもいい?」
「大丈夫だ、それくらいこなしてみせる」
「ありがとう、じゃあこれから突入するけどなにか質問は?」
「特にないな」
「大丈夫っす!やるっすよー!」
日が少し傾いてきた時間にオレたちは目的の巣穴に到着した。隠れて様子を見ているとゴブリンたちがぞろぞろと戻ってきていて、その数はおよそ50ほどと言ったところか。中にいるであろうゴブリンと合わせると100匹いくんじゃないか?
「…帰ってくるゴブリンがまばらになってきた。二人とも、お願い」
「はいっす!」
「わかった、オレは右を狙う」
巣穴の前では二匹のゴブリンが監視をしている。が、あくびをしたり片方は居眠りをしていたり警戒は大してしていないようだ。
これからの行動はまずは遠距離から二匹を狙撃して殺し、巣穴の中で油断しているゴブリンの群れをひたすら撃破するという割と雑な作戦だ。その位の作戦でもなんとかなるんだろうが。
「「撃ち抜け、ファイアショット!」」
詠唱が重なる。ここに到着するまでの道中でアリスに教えてもらったもので、炎の矢を一本勢いよく飛ばす魔術だ。そしてそれは狙い通り--
「ギッ!?」
二匹のゴブリンの頭を貫く。それをきっかけに走り出し巣穴に突っ込む。
中は少し薄暗いが所々松明が置いてあり、視界は確保できている。入り口から続く廊下を走るとすぐに大部屋のような所に出る。そこには山のようにゴブリンが集っていた。
「いくよ!飛鳥君は前衛めで立ち回って!」
「了解!行くぞ!」
まだゴブリンは誰一人オレたちの存在に気づいていない。ここで出来るだけ削る!
「はあああああっ!」
「ギャア!」
左手で首を薙ぎ右手では心臓を貫く。絶命した亡骸を投げ捨て次のゴブリンに突貫する。そうしてオレが二匹仕留めている間にもセシルは…二十匹ぐらいの首を断ち切っている。恐ろしい程の戦闘能力だなと思いつつ体を動かしまたゴブリンを殺す。
「魔術が組めたっすよ!一回避けて!」
アリスの声が飛ぶ。それを聞いたオレとセシルは左右に飛び道を作る。
そこを通り抜けたのは巨大な火球。それは手前の方の戦っているゴブリンの頭上を通り抜け奥で武装し始めているゴブリンに炸裂する。
「ギャアアア!!」
ゴブリンたちの悲鳴が聞こえてくる。これは今のところ一番戦果を上げているんじゃないか?
「オレも負けてられない、なっ!」
「その意気!あと半分もいないよ!」
もうそんなに倒したのか、二人が強すぎる。
これじゃあキャリーされてるだけだ、オレも何かしないと、そう思い考えていた作戦を実践してみる。
(坊主…それは出来なくはないがリスクはデカイぞ?)
(リスク恐れてたらこんな仕事が務まるか!)
クトゥグアからの警告をスルーし敵の群れの中に滑り込み、ビームを薙ぎ払うように放つ。
そうする事でまとめて三匹倒せた。当たりどころが半端だった奴は殺し損ねたのでしっかり追撃し倒す。
「これで…最後!」
逃げようと走るゴブリンの後頭部に投げつけたクトゥグアが刺さる。
これでこの部屋にいたゴブリンは殺し尽くした。
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戦闘はたったの五分程で終わった。広範囲の魔術と一振りで三匹殺す槍のおかげだ。そして今は逃げたであろうゴブリンのボスを追いかけている。
「あー鬱陶しい!どっからこんなに湧いてくるんだ!」
「脇道に潜んでいたんだろうね…けど後ろ姿は見えた。あと少し!」
大部屋で相当な数を殺したはずなのにどんどんゴブリンが追加で出現する。それを走りながらビームで焼き払い進んでいる。ちなみにアリスは走るので精一杯だ。詠唱はできないだろう。
「クソッ、オレも魔力が割とカツカツになってきた!一撃で道を数瞬作る、その間にどうにかしてボスを仕留められるか!?」
「…任せて!」
「頼むぞ!
其は星を観る焔、終末を告げし者の代行、輝きは収束する--八幡星の閃光!」
単発のビームではなく、今度は太く長く発射されるビームを放つ。現状の最高火力だ、これでやれれば御の字、やらなくても大丈夫だ。全力を注ぐ!
「いっけえええええ!!」
危険を察知し壁になるゴブリンを物ともせず突き進む閃光。その勢いのままボスゴブリンを飲み込み、輝きが消えた後には何も残るものは無かった。
「私の出番はなかったみたいだね、お疲れ!」
「お、お疲れ…マジで疲れた…」
疲労で壁に手をつき体を支えるオレと違いセシルは全然疲れている様子はない。なんならまだ暴れ足りないと槍を振り回している。恐ろしや。
「ちょ…無理…背負って帰って欲しいっす…」
「おっと、大丈夫かアリス、無理させたか?」
ふらつき倒れるアリスを受け止める。魔力を結構使わせたし走らせたから申し訳なく思う。願い通りおんぶして帰ろうか。
「そ、その…顔が、ちかい、っす」
「あっ、悪かった!」
触れるほど、とはいかないが物凄い至近距離にアリスの顔があった。白い肌は朱に染まり紺碧の瞳はそっぽを向く。オレも同様に目をそらす。
「はいそこ、ラブコメしてないで帰るよ!解体は私一人でやるから外でやすんでて!」
手伝う、と言いたいところだが疲労でその一言が出ない。頭と体が全力で休養を求めている。
「申し訳ない…頼んだ…」
「お願いするっすセシル先輩…」
体力的に瀕死の魔術師二人が肩を支えあいながら巣穴の出口を目指す。どちらも足取りは重く、サクサク踏破してきた道が遥かに遠く思える。その道を登り終え外に出ると夕日が巣穴前の草原をオレンジに色付けていた。
「…なぁ、今日はありがとうな」
「いえいえ!わたしも飛鳥先輩がいて面白かったっすよ!」
「また機会があったら一緒に依頼を受けてくれるか?」
「はい!喜んでっす!」
そんな会話を続けていると後ろから爆発音が轟く。何だと思って振り返るとそこには一仕事終えた感を出したセシルが立っていた。
「終わったよ、今日は本当にお疲れ様。帰ってゆっくり寝よう!」
「そうするっすよ…」
「ああ…同意だ」
行きは徒歩で30分か40分くらいを歩いてきたし帰りは何か足があるのだろうか。それが疑問になりセシルに聞いてみると…
「?そんなものないよ。歩いて帰るよ!」
満面の笑みでそう答えてきた。どうやらここからもう少し地獄が続くようだ。
「勘弁して欲しいっすよー!」
そう緋色の空にアリスの嘆きが響いた。




