十四話
キサラギ薬局を離れて10分ほどか、ひたすら波に流され続けてたどり着いた先には巨大な灰色の建物があった。
「ここが鍛冶屋?」
「そうだね。この鍛冶屋さんは私たちのギルドと連携していて割引してくれたりするんだよ」
「なるほど、そりゃ使わない手はないな」
この世界で仕事をして思ったのはやっぱり仕事は楽じゃないという事だ。薬草狩りとかの安全な依頼はやはり旨味が少なく軽い飯が食べられるくらいの報酬しか貰えない。当然オレはそんなに実入りのいい仕事は受けられないので節約は必須なのだ。
「というかギルドに入るとこの街ではこの鍛冶屋さんしか使えなくなるんだけどね」
「そんなルールがあったのか…まあ入ろう」
中に入ると飽和するほどに聞こえてくる鉄を叩く音と煤の匂いがオレたちを出迎える。結構な音量だからこれは店の人を呼ぶのは大変そうだ。
が、店員と思われる人は呼び出しをしていないにもかかわらず店の奥から出てきた。
「おお、ガルラスん所の嬢ちゃんか。ちびっ子なら先に来て今は上で遊んでるぞ」
「そうですか、よかったです。で、ゴードンさん。頼んでた整備なんですけど…」
「終わってるぞ、奥行って確かめてこい。俺はこの新入りと少し話がしたい」
「オレですか?わかりました」
ゴードンと呼ばれた大男に連れられて窓際のテーブルに腰掛ける。
「で、確か…飛鳥だったか。お前は何であのギルドに入った」
「何でですか?…拾ってもらったから、ですかね。右も左もわからない世界で助けてもらって、その恩返し…になるかはわからないですが働いて役に立てたらなと思ってという理由もあります」
「ほう…目が嘘をついていない。異世界人ってーのも本当のようだな」
「何でそんなことまで知ってるんですか!?」
「ガルラスの小僧に聞いていたってのと…この魔眼の能力だ。左目のこれだよ」
ホレ、と言って深い切り傷の入った左目を開く。そこには普通の眼球に上書きされたように魔法陣が浮かんでいた。
「こいつの能力は人の真実を見抜くってのだ。便利なもんだぜ?」
「魔眼なんてものまであるのか…」
こういうのを見ると異世界に来たんだなぁ、と改めて思う。自分もいつか魔眼所持してみたいなあ。
「あっ、飛鳥せんぱーい!これみて欲しいっすよ!」
二階からドタドタと降りてくるアリス。その腕には彼女の身長ほどはある黒く、二又の槍の様な杖だった。
「なにそれ、カッコいいな」
「やっとこのセンスがわかる人が!!いいっすよねこの禍々しさ!大好きっすよ!」
近くで見てわかった事だが、杖の部分には特になにもないが先端についた金属の槍っぽい部分にはよくわからないがイカした模様が書かれていた。そして又になった部分の間には浮遊している赤い玉。中二心をくすぐる素晴らしい武器だと思う。
「あ、アリス。メンテナンス終わったみたいだね。それじゃあ飛鳥君の防具買ったら依頼に行こうか」
「というわけなんですゴードンさん、手ごろな価格の胸当てありませんか?」
「敬語はいらねぇよ。胸当てなら奥の工房にいくつか置いてある。好きなの持ってきな、5割引してやる」
「五割!?流石に申し訳ないけど…」
「うるせぇ、これから贔屓にしてもらうんだからサービスだよサービス」
ほら行ってこい!と背中を叩いてくるゴードン。一撃が物凄く重く、言われるままに店の奥に進んでしまう。それに二人はついてくる。
「つってもなにを基準に選べばいいんだ…?」
「重さ、コスト、性能の三つが一番いい感じにバランス取れてる奴がおススメだね。…ここにあるのだと普通に鉄の胸当てでいいと思うけど」
陳列された防具の中からひょいっと取り出しスルスルとオレに装着させるセシル。手際がすごく良くて驚いている。
「おお、適度な重さってのが着けててわかる!これなら動きも邪魔しないしいいな」
「気に入ったなら良かった。じゃあ買おうか」
「そうだな。…会計頼む!」
「おうよ!壊れたら修理してやるから持ってこいよ!」
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無事に目当ての物も買えたし、これで依頼に行く準備は整った。今は午後四時位、一匹たりとも逃せないので巣穴に全てのゴブリンが集まる時間に襲撃することになっている。
自室でクトゥグアをコートと銃剣にして、ポーションやら胸当てを身につけて集合場所の机に向かう。
「準備できた?忘れ物はない?」
「大丈夫っすよ!ばっちしっす!」
「ああ、それじゃあ行こう」
先に来ていた二人と合流しギルドから出発する。無事にこなせるといいがどうなるか。少しの不安を抱きながら歩を進めた。




