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十三話

喧騒が辺りを包む。暖かな日差しと活気渦巻くここはこのセレス街の中心地にして繁華街、セレスマーケットである。


「大丈夫ー?ついてこれてる?」

「わたしは大丈夫っすけど飛鳥さんが…」


「おい坊主大丈夫か?」

「大丈夫に見えるか…?」

「いいやちっとも。だが止まってらんねぇしな、進むぞ」

「お前も歩いて苦しみを判れ…!」

「俺が実体化したらお前の魔力が枯渇するし街がぶっ壊れるわ」


人混みの中だからとクトゥグアが街中で声を出して問いかけてくる。二人とは少しだけ離れてしまっていて、人の波のせいで思ったところに進めない。人混みが苦手な男なのでこの空間にいるのは毒の沼地でクロールしているようなものだ。

が、もたもたしていると波を割って進んでくる金髪と青髪が見えた。


「もうっ!しっかりついてくるっす!」

「まあこの人混みは慣れるまで大変だからね…仕方ないよ」

「面目無い…」


オレを回収するべく二人が戻ってきてくれた。コミケより少しだけマシレベルの混み具合といえばどれくらい混んでるか伝わるだろうか、そこを戻ってきた二人、どういう進み方をしたか凄い気になる。


「まあ帰りに寄ろうと思ってた所の前だし、先にここで買い物済ませちゃおうか!」

「そうっすね。ここは薬屋さん。ポーションとか毒消しとか売ってくれる所っす!薬草とか持ち込むと手数料だけでポーション作ってくれるんすよ」

「へぇ、それなら安く済むな。じゃあ入ってみるか」


ギイと軋むドアを開け中に入るとそこは薄暗く、なにやらよくわからない匂いのする部屋だった。壁には所狭しと本が連なり、天井からはよくわからない生物の骨が吊られていた。

そして入口とは正反対の隅に店主と思われる女…いや男?はいた。片手には本、片手には謎の液体の入ったビーカー、背後には本の山がある。


「店主さんこんにちは、今日は新しい顧客を連れてきたよ」

「………」


一切セシルの呼びかけに反応せずひたすら本を読み続ける店主。


「ちっちっち、甘いっすよセシル先輩!こういう輩は思いっきり…すいませーんっ!薬をかいにきましたーっ!」

「うわあああああっ!?」


大声をあげながら後ろに倒れる店主。その更に後ろでは本の山が雪崩を起こしている。なんなんだこの人…。


「あれ、アリスさんセシルさん。どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたもないっすよ!薬を買いに来たって言ったっすよ!」

「まあここ薬しか売ってないですもんね、それじゃあ改めて、ようこそキサラギ薬局へ。今日は何をお求めですか?…あと、そちらの方はどなたですか」


そう言って指でこっちを指してくる店主。名前からしてこの人も異世界人なのか?


「初めまして、了義飛鳥です」

「はい初めまして。私はここの店主をしているキサラギカンナです。ワコクから来た者なのでここらでは珍しい漢方とかも取り扱ってます」


倭国!?この世界の時間がどれくらいだからがさっぱりわからなくなったぞ…?街並みからすれば中世だが倭国なら多く見積もって十世紀くらいまでじゃなかったか。

そしてキサラギさんは異世界人ではなかった。そこらへんにちらほらいるような数はいないのかもしれない。


「あ、今はなんでだか男だけどこの人女だからね。次来た時は女の人になってるかもよ?」

「は!?確かに中性的だな、とは思ったけど実際女の人だったのか?」

「はい…試作していた薬を頭からかぶってしまって…」


本当になんなんだこの人…。まずなぜそれを作ろうと思ったのか。


「って!そんなことはどうでもいいんすよ!買い物済ませるっすよ!買い物!」


その一言で皆目的を思い出し、必要なポーションなどをまとめ買いし、店を出ることにした。


「それじゃあありがとうございました、また来ます」

「今度はしっかり対応するっすよ!」

「ははは…ごめんね。飛鳥くんもこれからよろしく」

「はい、よろしくお願いします」


またね、と手を振るキサラギさん。それに軽く振り返してその場を去る。次はどこに向かうのだろうか。


「よし、次はメンテに出していた武器を回収するために鍛冶屋にいくよ。アリスも武器預けてたっけ?」

「そうっすね、ちょっと魔力石に異常があったから見てもらってたっす」

「鍛冶屋か…胸当て的な物は売ってるか?」

「うん、確か売ってるはず…というか鎧でも買った方がいいと思うよ。コートだけじゃ流石に守りが薄いと思うんだけど」


そういえば二人にはクトゥグアの説明をしていなかったか。…けれど腕輪から存在をバラすなというオーラを強く感じるので伏せておこう。


「このコート実は特殊な魔術が組み込まれててさ、耐久性は普通の鎧くらいあるんだ。だから鎧はいらないかなって思ってさ。というか鎧着て走り回れるほど筋肉ないし」

「そうなんだ…じゃあ確かに胸当てだけでいいかもね」

「どんな魔術理論でコートに術式付与したのかすっごい気になるっすね…いつか見せてもらってもいいっすか?」

「構わない。…よし、じゃあ鍛冶屋に行こう。案内よろしく」

「わかったっす!着いてくるっすよー!」


人混みをスルスル駆け抜けオレとセシルを置いていくアリス。…セシルも場所知ってるだろうしゆっくり行こう。

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