47 防衛兵器オメガ・デビル
皆地面に転がって静かに寝ている、灯りはモリスが腰にぶら下げていたランタンを使っているが周りだけを照らすには丁度良い光量だ
今起きているのは俺とグスタフそしてゾロアだ
オメガ種の残骸の周りで寝るというのに意外と気にせずみんな寝ている
ゾロアは超科学都市で見つけた最後の紅茶をアイスティーにし、オメガ種の残骸を椅子代わりに大事に飲んでいるとふと俺達に話しかけてくる
『ここから先、わかっているか?』
『どういう意味で言っている』
『危険な意味でだ』
その言葉に俺は言いたくない言葉を言うことになる
『誰かが死ぬ可能性があるってことだろ』
『ほう、平和な思想ではなく現実を見ているか…』
『そうならねぇように必死になってるだろ』
『グスタフよ、必死に努力しても結果は惨酷なのが人生だ』
彼は立ち上がるとスヤスヤと寝ている者達を1人ずつ見ながら話し始める
『努力?人が一番我儘だとわかりやすい言葉…結果が出なければ無意味だと判断し、足を止める者が大半だが努力とは何か?結果を出す為か?』
『お前ぇは何が言いてぇ』
グスタフは大剣を担ぎながら周りを警戒しているが横目でゾロアを見るとそう言い放つ
だがしかし、グスタフもその意味は知っている筈だ
人は確かに我儘だ、結果が出なければそれは努力と認めないからである
『努力とは継続という名の才能だ、強くあれと願い…冒険者は夢を見る、不可能な夢でさえも継続された才能がそれを結果として出すのではなく、目の前の道をより鮮明に映し出すだろう…仲間を死なせたくないと願うならば最後の瞬間まで気を抜かぬ事だ、諦めた瞬間にそれこそ今までが無駄な努力なのだからな』
ゾロアは話し終えると紅茶を飲み干し、近くの瓦礫にカップを置く
まぁ言いたい事はわかるさ、ここから先は本当に危ない場所、という事は同時に俺達が向かうべく目的地に近付いているという証拠でもある
何もない場所に門番のような防衛兵器なんて要る筈がないのは誰でも理解しているだろう
『死ぬ気はねぇ』
グスタフが愚痴を吐くかのように俺に向けて言い放つ
苦笑いをして反応すると俺は律儀に見張りをするグスタフに話したのだ
『多分俺の職の声はきっと聞こえない』
『確かにそうだろうよ、別のモンがお前の職の声を真似てんだ…聞こえたとしても信じるなよ』
『わかってる、まぁあれだな』
『なんだよ』
『こうしているとちょっとした日常が恋い焦がれてしまうよ』
『だろうな、訓練でもしたくなったか?』
『それは帰ってからにするよ』
そう答えることによって少しグスタフの機嫌がよくなる
俺は欠伸をするとゾロアが『寝るか?』と言ってくるが俺はまだいいと答え、ハルバートを担いで周りを見渡す
それにしてもオメガ種は職の力の力の耐性が強い為、技や術が殆ど通用しないのだがフラスカシルバー以上の硬い武器ならば物理的にダメージを与えることが出来る
『お前の武器だがよ』
『どうした?』
『ゼファーの話じゃ虫神がこの島から逃げ出す時に盗み出したもんがあるっつったよな』
『もしやお前はこれだと言いたいのか』
『可能性は低くは無いと思うぜ?インダストリアルゴールド…通称黒花合金だがオメガ種の装甲を容易く切り裂けていたからな、お前ぇの親が言うようにもしかしたら勝てるかもしれないって本当かもな』
『だが職の親のイワヤは何を理由にそう言ったのかわからないんだ、それがわかれば…』
『それはわかんねぇな、まぁそれを倒しに来たわけじゃねぇ…それでも逃げ切れるかわからないのが現状だ』
その通りだな、タツタカのテレポートは島の外に向かう事を許さない
発動しても移動距離は10メートル程と回避にしか使えないがそれでも無限にそれを使えるのは凄い
『まぁ今は無駄な力抜いていくっきゃねぇさ、みんな人間だ、誰かが怖いと感じても笑いはしねぇさ…自身を守るために与えられた大事な感情だ、それをどう利用するかだがな』
だな
今回は贅沢に4時間もそれぞれ寝ることになっているので交代で俺とグスタフは大勢の見張りに守られながらスヤスヤと寝る事が出来た
夢を見たけども不思議とリアリティー溢れる光景だ、シルバーバレットの仲間達と共にナラ村の近くの森で魔物を討伐しているが俺の視界はゴブリンキング相手にナッツが足元に滑り込みながら足首を斬り飛ばして通過するとゴブリンキングはバランスを崩して前のめりに倒れ、グスタフが脳天唐竹割で頭部を盛大にかち割っている
『キングにも容赦ないですねグスタフさん』
ナッツが体の汚れをほろいながら立ち上がるとグスタフに話しかける
『いつでも全力よ、舐めるより敬意をもって相手してんだ』
『相手可哀想ですね』
『お前との訓練ももっと全力でやってやるぜ?』
『いやぁ!』
ルルカは腹を抱えて笑っている
いつも通りの日常だと思いながら俺は皆に先に進もうと口を開きかけた時、シルバの声が聞こえた
『死ぬな、俺がいるお前ならば倒せる』
声が聞こえた瞬間に俺の視界の全てが止まる、風でなびく森の葉も仲間達も動きを止めているのだ
ルルカが笑いながら、ナッツが嫌そうな顔を浮かべながら、グスタフがマッスルポーズをしながらだがそれはまるで時間が止まったかのような状態だ
振り返るとシルバが真剣な顔のままで俺を見ている
久しぶりだと思いながらも俺は彼に聞きたい事を聞こうとしたがそれは出来なかった
『悪いが奴にバレる、お前等はもう逃げられない…あいつを倒すしかない、俺でも倒せなかった本当の最強があそこにいる、地獄の様な光景に判断を誤るな…絶対に最後まで諦めるな!お前は何を夢見てここにいる』
俺は口開こうとすると目が覚め、上体を起こす
グスタフも起きていたがどうやらみんな俺を待っていたようだ
『俺は普通に暮らしたいんだよ、みんなに持ち上げられるなんて夢は見てないよシルバ』
小声でそう呟き、俺は立ち上がると直ぐに先に進むことになる
魔物は見当たらず、1時間歩き続けると現れたのはオメガ・トゥテラが2機
真正面から飛んで来る2機は鎧の首から銃兵器を出すと俺達に狙いを定めて撃って来たのだ
こちらの攻撃が弾かれるのはわかるがどうやらアルセリアの自動迎撃スキルは健在らしく、皆が彼女の後ろに隠れてやり過ごしていると俺は銀彗星で素早く2機の目の前まで加速し、ハルバートを全力で振った
『!?』
1機は両断出来たが残りは間一髪避けられる、後退しながらこちらに銃兵器を向けてくるとヘクターが俺の真横から一直線にオメガ・トゥテラに飛び込んでいき、鎧の中心に小さな剣を突き刺して倒した
『オイラの剣は兄貴に貰った奴だから頑丈なのさ』
自慢げに話すヘクターは正面を向き直すと我先にと歩き始める
『マジ銃兵器やべーぜ』
『流石に卑怯だよねー、あんなの見て避けるなんて無理』
バニアルドとミミリーが愚痴をこぼしているがあれを見て避けれるのは人じゃクズリぐらいだろうな
ヘクターの後を追うと直ぐに飛行音が奥から聞こえてくる、数は多いな
俺達がいる事がバレたらしいがオメガ機械というのは念術か何かで連絡し合っているのだろうか
それは考えても答えは出ないか
『嫌な音が聞こえるが、致し方ない』
カールが溜息を漏らしてから言い放つと奥からオメガ・トゥテラが8機も飛んできたのだ
それには誰もが深刻そうな顔をするがあれでオメガランクがCという事実が信じられない
『武器が駄目でも打撃は効くだろ』
バニアルドは意気揚々と口を開くとナッツが飛ばす黒い剣30本に紛れて突っ込んでいく
すかさず俺とクズリそしてグスタフやコルヴェールが追従するとナッツの黒い剣は2機に命中し、鎧の内部で小規模な爆発を起こして地面に落ちていく
6機は避けられたらしいがナッツの操術で反転した黒い剣が彼に戻りながらオメガ・トゥテラの背後から襲い掛かると1機を貫く事が出来た、残りは5機だ
『同時に2つの事は出来ねぇみてぇだなー!』
剣を避けるために回避した先にバニアルドが先回りし、鎧を掴むと全力で地面に何度もビタンビタンと叩きつける
『ピピピ!』
もう一度叩きつけようとバニアルドはオメガ・トゥテラを持ち上げると同時に敵の首から銃口が飛び出し、バニアルドを狙うが撃たれる前に叩きつけるといった脳筋戦法、グスタフなんて銃口を両手で掴んで壁に叩きつけているがこの2人は原始的な戦い方がお好きの様だ
『野蛮人共め』
クズリが1機のオメガ・トゥテラの銃口からの発射を避けてから鎧を剣で貫いて倒すと何度も叩きつけるグスタフとバニアルドを見て呆れた顔を浮かべながらそう囁いた
その間にコルヴェールが素早く2機を両手のクローで切り裂いて倒し、俺はコルヴェールに1機取られて顔をへの字にする
原始的な戦いをする熊2人はオメガ・トゥテラの鎧の中がボスン!と音を立てて煙が出てくるとそこでようやく叩きつけるのを止めて壁の近くに放り投げた
『いい汗かいたが風呂は無ぇ』
『残念だぁ』
バニアルドとグスタフが何か話しているが無視しよう
『獣め』
『アナベルちゃんも夜は大変そうね』
『美女と野獣って別の意味でアルさん有名になったからなぁ』
アルセリア、コットン、モリスが口を開く
歩き始めるとオメガ・トゥテラが次々と出てくるがそこで俺達はある事に気付いた
全ての術や技が利かないわけじゃない、雷術は効くし技は威力が高いのであれば耐性を無視して弾かれる事なく鎧を貫通することが戦いの中でわかった
そして特殊技も威力が高いものであれば大丈夫
『でもバンバン撃ってられないわね』
『だよねー』
ルルカとミミリーが話してるがこんな量産型みたいなオメガ種に大技を連発なんてありえない
勿体ないからだが危ない時は使う判断は必要だろうな
『ジャムルフィン君の技は全部効くのかな?』
ミミリーがふと聞いてくるが俺も試したことは無いな
『多分威力相応の技ならば聞くと思うけど…』
『まぁでもあれだよね、銀彗星でビュンって加速して普通に斬った方が絶対コスパ良いよねー』
『だよなぁ』
納得だ、それが一番だと俺も思う
歩いていると水たまりが多くなっていき、天井の照明も弱々しい
『なんだろう、不思議と鳥肌が立つ』
『鳥肌?』
マルスが周りを異様に気にし始める
彼は危険察知能力が異様に高く、危機が近付くと逃げるために体にそういった信号が現れるのだがそれほどまでに強い奴が奥にいるという事なのだろうか
『鳥肌が凄いよ今、もう少しでそれがいる場所につく』
『オメガ種だが出し惜しみせず切り札を使って戦うしかないな』
『そうだね、でもジャムルフィン君は銀彗星をメインのいつも通りで大丈夫だとは思うけど』
彼と軽く話をしていると目の前に開けた場所に出てしまう、一番奥には鉄の頑丈そうな巨大な扉だがそれは硬く閉ざされており、いくつもの傷跡が扉についている
ドーム状に広いが周りを見渡しでもあるのは脇に点々とオメガ機械の残骸が転がっているが俺でもこの場に来ると不思議と寒気を感じ始める
『何もいない?』
ルルカが囁くように言い放つが何かいるとは思えない、全員が戦闘態勢を取っているが少し高めの天井を見てもLEDと呼ばれる照明が薄暗く辺りを照らしているだけ
しかし気配すら感じさせない何かがそこにはいたのだ
『ショータイムシステム作動』
『『『!?!?』』』
天井からその声が聞こえると全員が一斉に天井を見上げる、岩の様な天井の上には部分的にブレている場所があるがゾロアは素早く刀を振って斬撃を飛ばすとそれは天井に当たる寸前で甲高い音を響かせて弾かれる
『さぁ楽しい時間の始まりです、殺戮ショーをとくとゴランアレ』
子供の様な声がこの場に響き渡るとゾロアの攻撃した場所にステルス迷彩で隠れていた物体がさかさまの状態で姿を見せる
見た目は人型のピエロだ、しかし仮面は悪魔のようであり、カラフルな服装の胸元な手足の接続部分からはオメガ機械と思わしき部位が見える
靴はつま先が上がっていて両肩部には銃口の大きな銃兵器が1つずつ備え付けられ、右手には長い鞭を持ち、左手には真っ赤なバラを持っていた
その物体が天井から落下し、体を回転させて地面に着地をすると両手を広げて俺達を見ながら話し始めた
『ここは最重要機密事項は眠る場所へと続く扉、マザーからの課せられた私、オメガ・デビルはここの現れた者は誰であっても息の根を止めろと言う指示、女性がいるのは痛ましいことではアリマスガ…世界を守るためデス』
『馬鹿みたいにこの先がどこに続いているか話してくれるとは助かるぞ道化マン』
ゾロアはしかめっ面のまま首を回し、ゴキゴキと骨を鳴らすと奴にそう話しかける
『せめてもの土産話です、貴方達が求めて来た道は正解だったと死ぬ前に教えることが私の独特な冥途の土産システム、ハッカーが1人混じっているのは面倒ですが…』
話していると彼の目がギラリと光、身を低くする
誰もが避けられない戦いだと知るや、全員が出し惜しみなんてこいつ相手に出来ないと悟り、最大火力を最初に放つと決めた様だ
『まぁいいでしょう、サーチしなくても人に私は倒せませんから…ここで終わりです、しかしヘルトの方は生きたままマザーに連れていく様に言われているので貴方だけ助けます』
『えっ!?僕』
『そうです』
タツタカは驚いたがそこ言葉にはきっとタツタカが求めた答えがあるとわかる
しかし彼も俺達と同じ修羅場を見て色々な嫌なものを見て来たのだ、オメガ・デビルに向けられたタツタカの答えは彼を失望させるだろう
『ここに来てよかったと思ってます、ですが全員でこの先に向かいます』
首を傾げるオメガ・デビルは機械の癖に溜息を漏らす
やれやれといった仕草を見せると同時に彼から音波の様な甲高い音が聞こえ始め、両肩部の銃兵器を俺達に向けて言い放ったのだ
『殺しても構わないという事なので最優勢事項であるこの先に通さない、ヲ遂行ノチ、全ての遺体をを焼却シマス』
子供の声が二重になるとオメガ・デビルの体が僅かに発光し、一気に間合いを詰めて来た
その速度に反応できるのはきっと数人だけだ、俺はハルバートを強く握りしめると地面を強く蹴って前に走り出した
次回、オメガ・デビル戦編
ナッツ『ハッカー?』
グスタフ『墓?』
ナッツ『えぇ…』




