45 導かれる者達
真夜中の進行、正面から襲い掛かる黒人間を薙ぎ倒しながら突き進んでいるとマルスが急にその手を止め、少し退いた
『どうした!マルス!』
アルセリアは黒人間を蹴り倒してから彼に顔を向け、そう告げる
マルスは『声が聞こえた』と言うがその意味を誰もが理解した、職の声だろう
『マルス君、職はなんて?』
少し退いたミミリーが声をかけるとマルスは答える
『側溝を開けて地下から向かえだってさ』
床を見てもひび割れた床があるだけで側溝があるとは言えない
しかしヘクターは黒人間の波に突っ込み、中で沢山の敵を斬り裂いて吹き飛ばすと口を開いたのだ
『ここに側溝あるよ!』
どうやら奥の方にあるようだ
『一気に押し込め』
俺はそう言うとハルバートを握りしめ、道を切り開くために黒人間を斬り倒していく
それに皆も続くと直ぐにヘクターの元に辿り着くが彼は既に鉄の板を外して俺達を手招いている
下を覗くと梯子があり、下に続いているが真っ暗だ
『だれ最初に行くの!?』
『こっわ!』
ミミリーとモリスが口を開いているとヘクターがピョンと軽く跳び、両手でブイサインをしながら側溝の中に落下していく、次にマルスがアルセリアに背中を蹴られて落ちていく様に中に落下していくとそこから皆が中に入っていく
『急げ!数が多すぎる!』
『やっべぇぞこれ!何体いるんだよ!』
コルヴェールやグスタフが叫ぶ、裏通りの前後の道には黒人間が数えるのが馬鹿馬鹿しくなるほどの数で俺達に牙を向いている残るは俺とゾロアそしてコルヴェールのみになると彼らを先に降りさせ
俺はハルバートを全力で振って周りの黒人間を吹き飛ばすと直ぐに銀超乱を発動した
狼気で構成された銀色の狼が俺の頭上高くで黒人間に牙を剥き出しにしていると俺は側溝に落下しながら『堕ちろ』と囁いた
100頭発生させる数を30頭に抑えたこの技は側溝の周りに落とし、爆炎や爆風で近くの黒人間を吹き飛ばすと追ってこられないように穴の近くにも落とし、穴を瓦礫で閉じさせる事が出来た
側溝の中、俺は着地をすると中はトンネル状となっており、直ぐにそこは地下鉄の線路だとわかった
前後を見ても駅のホームは無い、しかし奥の方からは点々と小さな照明が灯りとなり真っ暗ではない
『穴は閉じれたか?』
近くで腕を組んでしかめっ面のゾロアが声をかけてくる
こいつは真顔がこれだ、いつも怒った顔をしているようだが怒ってはいない
『大丈夫だ、だが直ぐここを離れたい』
『だな‥‥おいタツタカ、いつまでしゃがんでいる』
『いてて・・腰が』
『その歳でご老体気取りか?』
『落下した時に梯子が背中に当たったんですよぉ…』
それは痛いだろうな、しかし見かねたルルカがヴェーガ・ヒールを彼に施して背中の打撲を治すと彼はニコニコしながら彼女にお礼を言ったのだ
『助かりますルルカさん』
『ヘルトもおっちょこちょいねぇ』
『いやぁ、面目ない!』
タツタカは頭を掻いて答えているとマルスは周りを観察しながら話し始める
『妙に変な音がするね』
風を切る様な音、俺には聞こえるがマルスは耳が意外と良いらしい
俺はその音に聞き覚えがあるので嫌な予感がした
それでも進まなきゃな、俺はハルバートを担ぎ、先頭を歩き始めるが線路も一本道なので敵が来れば隠れ身などない、戦うのみだ
『個々の方が落ち着くぜー』
『バニアルド、お前地下が好きなのか?』
『んだよカール?俺は閉所が一番戦いやすいんだ』
『なるほどな』
『お前の天罰はここじゃ使えねーがな』
『ぐぬぬ…』
バニアルドがニヤニヤしながら言い放つとカールは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる
そうしていると正面から聞こえる風を切る音が大きくなっていく、皆の耳にも聞こえてきた様だがそれを聞いたクズリが溜息交じりに口を開いた
『サメさんかよ・・・ったく本当暇しねぇな』
クズリは武器を構えると同時に奥から水も無いのに空中を泳ぐサメが現れる、全長8メートル程ある巨躯は蛇行しながらこちらに向かってくると直ぐに標的である俺達に向かって目をギラつかせて突っ込んでくる
『シャーー!!』
タツタカがその鳴き声に少し笑っている、彼は直ぐに手を伸ばすとヘルファイアを連発する
恐ろしいほどの連発の上位術だがそれをサメがことごとく体を巧みに動かして避けながら襲い掛かってくる
『グスタフ!』
『おうよぉ!』
俺は口を開くと彼と共に走り始める、タツタカは連射が無駄だとしると手を止め、剣を構える
サメは俺に狙いを定め、巨大な口を開いて噛み砕こうとしてくるが俺よりも先に飲み込むのはハルバートだ、武器を前に出すとサメもハルバートは食えないと悟り、俺を避けるがそれと同時にグスタフがグラビデルをサメの回避位置にピンポイントで発動させたがマジでナイスだ
『シャ!?』
重力の中のサメは僅かにその動きが鈍るとバニアルドはゲンコツという技で闘気で出来た拳をサメの頭上からそれが頭部に落ちると見事にゲンコツはサメに命中し、そこで動きを止めたのだ
『ブーゼ・スクレイパー』
ナッツの黒い剣が全てサメに向けられるとそこから光線が一斉に放たれ、サメの鱗を剥がしていく
悲痛な叫びをあげるサメはグラビデルの効果が切れると直ぐに素早く俺達の周りを旋回し、体の周りから水色の球体を幾つも発生させた
『水術!避けて!』
コットンが叫ぶと同時にサメが発生させた水色の球体全てからアクア・レーザーの様な光線が俺達に飛んで来る
命中した者はいないがこれに当たれば一撃だろう、地面に当たった水の光線は容易く穴を開けているので人体にアレが当たればヤバいな
『飛び道具など!』
アルセリアは叫ぶ、彼女にはそういう技は通用しないのは自動迎撃スキルがあるからだ
彼女を狙うアクア・レーザーは全て目の前で弾かれている、そのまま走り出したアルセリアはサメの移動する方向を予測して回り込むとアクセルという速度強化の技を発動させながら背中の矢筒から1本の矢を弓で引き、サメの正面に躍り出た
『シャー!』
『肉の癖に鳴くな!』
彼女は素早く闘気を纏った矢を放つがサメはそれを避け、大口を開けて彼女を丸のみにしようとしたがそうはならなかった
『サメ如きめ』
すると矢は急に角度を変え、方向を変えてサメの背後から胴体を貫いたのだ
赤い血が体から飛び出すとサメは動きを止めてしまうがアルセリアはそのまま前方に縦回転するとサメの頭部にかかと落としをして地面に叩きつける
待っていたかのようにカールとバニアルドは左右からサメのエラ目掛けて武器を突き刺すとサメは悲痛に暴れ始めるがサメはエラを失えば普通死ぬ
ビタンビタンと打ち上げられた魚のように暴れるとゾロアは溜息を漏らし、刀を振ってサメを通過するとサメは綺麗に両断されて死んでしまう
ナッツの技で鱗が全て剥がれ落ちてしまっては頑丈な体は素早いだけの牙の生えた魚だ
食べれるか?とコルヴェールが口を開くが誰もがそれを食べる気にはならないようだ
『人は我儘だな』
『毒見でもする気か?』
『いや…よそう』
グスタフの言葉にコルヴェールは苦笑いを浮かべ、正面に顔を向ける
『歩こう』
俺はそう告げると再び歩き始める
ドーム状の線路内の天井からは水が滴り落ちているが水道管が割れてしまって漏水してるんだろうってタツタカが話す
『魔物の気配は無いようだけどぉ?』
『そうだな、ルルカは魔力量大丈夫か?』
『直ぐガス欠しないわよ』
『そうか、まぁ面倒な敵が現れたら頼むぞ』
『了解よ』
ルルカと軽い会話を交え、歩いていると線路が途中で切れているのに気付く
結構歩いたというのにホームが見えてこない、ここは終点かとタツタカが口にするが進めばわかるだろう
数十分歩くと両脇が瓦礫だらけの狭い通路になってしまうが瓦礫が無ければ道の広さは同じだ
この両脇の瓦礫は何なんだろうと首を傾げるがタツタカだけはそれを見て驚いている
『これ電車の瓦礫です、まるで正面から両断されたかのような…』
確かにキレイに真っ二つだ、おかげで道になっている
シルバーバレットで先頭を歩いていると電車という瓦礫の中から魔物の気配を転々と感じるが穏やかな気なので寝ているのだろうな
『静かに進もう、周りに魔物がいるが寝ている』
『ひぇ・・・わかりました』
ナッツが嫌そうな顔を浮かべて返事をしている
足元には小さな瓦礫だがそれを踏まないように歩いていると道の途中でとんでもない物を俺達は発見したのだ
それは開けた場所の中心部分に無残にも破壊された鉄製のゴーレムが機能を停止していたのだが誰もがそれに驚き、武器を構えるとゾロアは真剣な顔で口を開く
『完全に死んでいる…しかし大きいな、これがゴーレム?』
座るようにして動きを止めた鉄製のゴーレムの高さは10メートルとゼファー並みに大きい
右腕は欠損しており、胸部分は何かで貫かれたかのように風穴があいている、まるで足は4つ付いており、騎士の様なフルフェイスメットを被ったゴーレムだがタツタカはそれを見て囁いたのだ
『機械兵器、オメガ』
『タツタカ、これも超科学が作ったオメガ機械か』
『そう考えた方が妥当です』
彼は人型の4本足のオメガに近付くと文字が書かれている場所を服の袖で拭いて再び口を開く
『機械魔導オメガ・トロメア、化学生命ランクAと書いてます』
『…オメガ・トゥテラはランクが書いていたか?』
俺はタツタカに聞いて見ると彼は深刻そうな面持ちで答えたのだ
『すいません、皆さんの士気を落とさないようにゾロアさんに言われて黙ってましたが・・・』
彼はゾロアに顔を向けるとゾロアは静かに頷く、するとタツタカは言ってくれた
『オメガ・トゥテラのランクはCです』
あれがC、術も技も歯が立たずの物理戦だけしか有効打が無いアレがCだという事実に俺は驚愕を浮かべる
『おいおいマジかよ、ならこのトロメアって誰が…』
バニアルドの言葉に俺は何となくわかってしまう
ナッツもそれに気づいたようであり、話し始める
『この道で間違いないでしょう、この島に来た先駆者達の残した目印だと思います』
『千剣の言う通りだと俺も思うぞ』
ゾロアもナッツの言葉に賛同すると機能を停止したトロメアを眺めながら話し始めた
『お前等にとってオメガ種は脅威であるな、対職戦用の戦闘兵器はきっと職がメインだった時代の遺産であると俺は予想している、それが今稼働している…純粋な魔物の俺はオメガ種相手にも技や術を放っても弾かれることは無いがお前らの強さの土台は超科学が作った職だ、これから先…きっとこれ以上の者がうようよいる』
『まぁそーでも行くしかねーだろ?』
バニアルドはニカッと笑みを浮かべ、言い放つとゾロアは鼻で笑い、刀を担いで答える
『単純な奴ほど動かしやすい、ならば行くぞ銀狼』
『わかった』
動かないトロメアを横に俺達は先へと急ぐ
1機のオメガ・トゥテラが瓦礫の周りを調べながら飛び回る光景を見かけるとゾロアは素早く駆け出し、気づかれる前にトゥテラを両断して倒す
流石魔物Sランク、俺でもギリギリ見えるくらいのスピードだ
バチバチと放電しているオメガ・トゥテラの両断された胴体を足で踏んで凹ませると俺達に顔を向け、早く来いと言わんばかりの顔を浮かべている
『凄いですね、ゾロアさん』
『ナッツ、お前はあいつをどう見てる』
『人型のままじゃ全力を出せないとは聞いてますが…それでもあの強さです、悔しいですけど・・・今この時代で最強の冒険者チームはきっと』
ナッツはタツタカやコルヴェールを見てそのあとは言わなかった
しかし地獄耳のゾロアにはそれが聞こえていたようであり、彼は先頭で振り返るとしかめっ面で言い放つ
『今はまだお前等で良い、しかしこれが終われば次なる時代がきっと来る…タツタカが意味を持たずに来るなんてない、俺は口に出しても平気だがギルバート・ヴァンパウロはタツタカが倒す』
ギョッとしたよ、大丈夫かと思ったが彼はそれを口にしても大丈夫の様だが俺達は駄目らしい
口にすると最終的に気が狂って死ぬからな、見た事は無いが試す勇気なんてない
『ゾロアさん…みんなで倒しましょうよ』
タツタカが弱々しく口を開くとゾロアは『駄目』と言ってタツタカを凹ませる
まぁ獲物の横取りは俺らもするべきじゃないか
『まぁしっかしよ、その名前いっちゃ駄目な野郎っていったいどこまで強いんだ』
『父さん、名前言っちゃ駄目ですよ?』
『言わねぇよ、対面できたらお手合わせして見てぇけどな』
きっとかなり強い筈だ、だってヘクターすらも操った者だ
予想してもさらにその上を行く化け物吸血鬼であると俺は考えている
『僕は穏便に過ごしたいんだけどなぁ』
タツタカが愚痴をこぼすとゾロアは腕を組んで親の様な言葉を彼に言い放った
『他所は他所、うちはうち!』
お前は親かよ、と誰もが感じただろう
こうして進んでいくと至る所に色々なオメガ種の残骸が倒れているのを捉える
かなりの数だが動く気配はないし殆どバラバラに近い、ゾッとする光景だが先駆者が倒したのだろう
『オメガ・ドッグ、ランクAにオメガ・ゴーレム、ランクB』
タツタカがオメガ種の体に書かれた文字を見ながら口にした
オメガ・トゥテラ以上の敵だったようだが倒れていてくれて助かるよ、こんなのと戦ってしまっては無事では済まない
『少し休憩しよう』
俺はゾロアに提案すると彼は直ぐに頷いてくれた
全員はその場に腰を下ろし、両脇で残骸と化したオメガ機械を眺めながらペットボトル容器の中に水を少量飲んで体を休める
時間は4時と早朝に近いし俺も足が少し疲れている
皆疲れたなど口にしないがきっと同じだろう
天井に点々とした照明が弱々しく周りを照らし、薄暗い
水が天井から落ちる音だけが静かなこの場に響き渡る、俺は一息ついてから首を回しているとグスタフが隣でビクンと何かに驚き、一気に立ち上がる
『どうしたのぉグスタフ?』
『ケッ!俺の職の親はのんびりだなぁ、そこで十分休んでから挑め・・・だってよ』
『グスタフさん、職の声ですか』
『俺も聞こえたぜナッツ、寝ても良いぜ?って凄ぇこと言いやがるがこの先にいる敵はやべぇってさ』
『グスタフ、何がいる』
俺は彼に合わせて立ち上がる、グスタフが真剣な顔をしたまま奥を眺めて答えてくれたよ
『防衛兵器オメガ・デビル』




