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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
最終章 All flesh will see God’s salvation(すべての肉なる者は神の救いを見るだろう)
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44 安全という幸せ

職の声を信じ、裏路地のひび割れた道を警戒しながら進んでいったが驚くほどに魔物やオメガは現れなかった

それよりも更に職の声が道を知らせてくれたのだ、バニアルドの職の声が魔物の位置を知らせ、カールの職の声が上空を飛び回るオメガ種が近づいてくれることを知らせてくれたおかげで俺達は難なくその日の休憩地点を早めに見つける事が出来た、


17時、裏通りから高層ビルの地下に続く階段を降りて行き、硬い扉を開けると中は真っ暗

コットンな手の平に小さな火を灯すと周りがどんな状態かあらわとなる


俺とグスタフは奥に歩きながら周りを見渡す


『掘っ建て小屋みてぇな内装だな物置かぁ』


『だが安全だという点では何よりも一番大事だ』


『そうだな、しかも・・・』


10畳ほどの部屋の奥の床にとってがついており、彼はそれを掴んで開くと中にはペットボトル容器に入った水と僅かな保存食が入っていたのである


『飯も保証されてやがる、この地帯で一番の立地条件かもな』


『金貨100枚でも払いたくなるよ』


話しに冗談を織り交ぜていると全員が中に入ってくる

よく見ると壁に立てかけられた大きめのトタン板の裏にドアがある、カールは静かにトタンをどけ、バニアルドとモリスが武器を構えながらドアを見つめているとルルカが堂々とそのドアを開ける


『ルルカお嬢ちゃん無防備過ぎるぜー?』


『大丈夫よ、職とグスタフがいるもの』


彼女はバニアルドの言葉にそう言い放つとドアの奥に入っていく

5畳ほどの小さな部屋だが先ほどの部屋もここの部屋も床が俺達の知らない硬い石で出来ているがタツタカはそれを大理石と呼んだ

俺とグスタフにルルカそしてカールとミミリーが中に入るが暗くて調べようがない

タツタカが足早に入ってくると近くの机の上に乗っていた卓上ライトという便利な照明をつけてくれたので部屋が明るくなる


『まぁ悪くない部屋ねー』


『安全を重視出来ると思えばいい物件だ』


『また掃除するの?』


ミミリーがカールにニヤニヤしながら言い放つと彼は口をへの字にする

ルルカはクスクスと笑っているが綺麗好きは悪い事じゃない、時と場合にもよるけどさ


『先輩、今日はここで休もうってゾロアさんが』


ナッツが部屋の入り口から顔を出しながら話しかけてくる

二つ返事で皆が了解し、一同は床に座って体を休めるが床が冷たいし床にナッツが寝転がると硬いと愚痴をこぼす


『我儘言うな』


『はい・・・』


クズリにしかられ、息子のナッツは大人しくなる

暢気にいつもの時間に寝るなんてしない、寝れる時に寝て移動できるときに移動する、それが冒険者であるため、俺達は水分を補給すると保存食をどうするかタツタカとテーブルに並べて話し合う


『一日一食食えるだけでもここでは奇跡だ』


『ですよね、ゾロアさんの当初の作戦ではここまで良い感じに進めると予想してなかったらしいですよ、最悪2日間の断食や睡眠不足、士気の低下を予測した動きを考えてましたし』


『2日断食じゃ結構ここじゃ辛いな』


『はい、ですから進行速度を上げ、全員が倒れる前に地下シェルターに到達する予定だったんです、地下シェルターならば食べれる食料もあると僕が思いましたから』


『タツタカはなんで食料があるって思ったんだ?普通考えないだろ』


『便利な文明を作るのが人です、まずやる事と言えば劣化という懸念を払拭することでしょうね』


『半永久的に保存できる食べ物類か』


『そうです、しかしほぼ永久的に保存でき…なおかつ復活レンジという僕の時代にもない専用レンジがあるんですから嬉しい誤算です』


『そうか…人って先ず身近な事から改善しようとするもんな』


『その通りです、物が腐るという原理を解決しようときっとしてるし超科学はそれを克服している筈だと思ってましたから』


なるほどな


『久しぶりの水は美味いぜー』


『あ・・・アルさん飲み過ぎですよ』


『モリスもたくさん飲めばいいじゃねーか、水なら沢山あるぜ』


『まぁ…そうですね、コットンは?』


『私も飲むわ、ずっと体に力入って喉カラカラなのよ』


タイガーランペイジの会話だが彼らだけじゃない、カールとミミリーもチビチビとペットボトル容器の中の水を飲んでいるんだ

アルセリアとマルスも勿論だ、クズリは一気飲みしてるが似合うな


『寝れる人は先に寝た方が良いよ、オイラ入り口前で見とくから』


ヘクターはそう言いながらタツタカに近付くと体をゆっさゆっさ揺らしながら口元に笑みを浮かべ、両手を出している

何をしているのだろうと俺は首を傾げたがタツタカはわかったようであり、テーブルに並べた保存食の中から適当な弁当箱を復活レンジに入れたのだ


『まずはヘクターさんからですね』


『うん!』


超嬉しそうな返事だが飯を欲しがっていたかヘクターから始まり、それぞれが復活レンジで保存食の入った弁当を開けると中身は全て唐揚げやソーセージ入りのノリ弁当だった


『ミミズを食べる覚悟してたが、飯を食えるって幸せな事だな』


クズリはそう言いながらノリ弁当をガツガツ食べている

残念ながら弁当箱の裏側には割り箸という使い捨ての箸があるのには俺達も驚いたよ、使い捨ての箸か、帰ったら弁当屋とかムルド大陸で流行らせれそうだ


『しかしゾロアの野郎、また紅茶飲んでやがる』


『悪いか熊五郎』


『だぁれが熊五郎だっつぅの』


グスタフが間髪入れずにツッコむ

バニアルドが笑いを堪えているが、多分お前も同じだ


『流石にお風呂は無いかー』


『あったら泣きながら喜ぶわねぇ』


『そうよねぇ、魔物と戦いはあまりなかったにしろ…あれよね、歩いてて汗かいてるし』


ミミリー、ルルカ、コットンの会話だが女性陣は風呂をご所望か

しかし無理だ、それをアルセリアが口にする



『我慢だな、私とて入りたい…しかし私の体臭を嗅いだものは金貨100枚』


『『『…』』』


男性陣は真顔で彼女を見つめるとアルセリアは『冗談だ』と軽く笑みを浮かべ、硬い床に横になる

布とかあればいいんだけども探してもそんなものは無い、食べ終わるとシルバーバレット以外が直ぐに横になって体を休める


ヘクターは水を飲みながら入り口ドアに体を向け、近くに転がっていた椅子に座って見張り役をしているが欠伸をしたりと暇そうである


『シルバでもこの場所の話はしなかったのか』


『記憶はうろ覚えだけど話そうとしてなかった気がする、守るためだって言ってた』


『守るため?』


『うん、オイラもその意味はわからない』


『そうか…お前はルーカストアでは順調か?』


『まぁね、インクリットのチームも中々に鍛え甲斐あるよ?この前阿修羅猪が現れた時は数分間逃げ回らせて逃げ足スキルのレベル上げをさせた』


とんでもない鬼教官だ、ナッツはボソッと『鬼』と囁くとヘクターはヘヘッと笑う


『帰ったら訓練して美味しいご飯食べないと』


どうやら変える楽しみがあるようだがそれはこの場にいる誰もが持っているだろう

俺はなんだろうか、いや…人よりそういう類は夢が無いと言われる言葉しか浮かばない

普通に生活し、魔物を倒しながらルッカとイチャイチャする事かな、思いつかないよ


『千剣君は昔と違って一段と大人びた顔してるね』


『そうでしょうか、というか本当に人が変わってように変わりましたね』


『色々話はゾロアさんから詳しく聞いたけども、オイラはオイラの中にそんなのいたなんて知らなかった、でもオイラ自身がした事は間違っていたのは変わりはないんだよ、だからその分色んな人にありがとうを言われるような人生を送るように頑張ってるんだ』


まだ彼の中には罪悪感が残っている様だ、ナッツの顔を真っすぐに見れていないのがそうだし俺と話す時も横目が多いからな、そこはお前次第だ


『!?』


ふと話していると外から音が聞こえて来たが馬鹿でかい、これは黒豹人族の街である大和でも聞こえた警報音だ

それには寝ていた数人も慌ただしく起き上がるが音は数十秒なり続けると止んだしまう


『心臓に悪ぃ音だぜー』


『ビックリしちゃうよ』


バニアルドとマルスがそう告げると再び横になる

起きなかったのはアルセリアだけの様だが意外と彼女は図太いようだな

音が鳴ってから3時間経過後、今度は俺達が寝て体を休める

驚くほど何事もなく、あるといえば近くをオメガ・トゥテラが通過したことぐらいだったとカールが告げるが素通りに近かったらしい


水分補給を終わらせると直ぐにここを出ることになったが真夜中だ、時刻は1時過ぎだし空は当然真っ暗だが裏通りの電灯でかなり明るいし霧も晴れている

ビルの高い場所で悪食王クリオネール・オヴェールが飛び回っているのが見えるがあんなのが普通にいるって事が笑いたくなるよ


『どうする?ジャフィン』


裏通りから真上を眺めているとグスタフが話しかけてくるが答えは一つだ


『行こう』


こうして俺は先頭で歩き始める

職の声がまた聞こえるだろうかと考えながら進んでいると魔物の気配を奥に沢山感じたのだ

一本道に近い裏通りでこの戦闘は避けられないと見るや、もしかしたら敵を呼ぶ魔物かもしれないと勘繰り始める

知らない気配だ、俺達は恐る恐る歩いていくと人型で黒い物体が道の奥を沢山うろついているけど本当に見た事が無い


特徴が無い、真っ黒な170cmほどの人の形をした何かだというしかないのだ

しかもあいつら千里眼スキル持ちの俺しか見えてない筈なのに1体がこちらを向くと足早に走ってくるのである

波のように押し寄せてくる物体に俺は溜息を漏らす、敵を呼んだりはしないが近くにいる敵も一緒に連れては来る様だな


『奥から黒いのがくる、倒せ』


俺はそう告げると全員が武器を構える

しかしここは裏路地であり、一斉に戦えるほどの広さは無く、足場は悪い


『私が出る』


『僕も行くよ』


『オイラも!』


アルセリア、マルス、ヘクターが口を揃えてそう言い放つと彼らは敵を迎え撃つために走り出す


『我らも行こうか』


『オッケー!』


カールやミミリーも向かうと俺も彼らの背中を追うようにして走り出す

どんな敵なのか未知数だが油断はできない

ナッツは誰よりも早く、黒い剣を30本飛ばして魔物の波の先頭集団を貫くが敵は避ける素振りすら見せなかったことに少々勘繰ってしまう

アルセリアは飛び掛かってくる黒い人型の魔物の腕を掴むと無事な一本背負いをしてからカカト落としで顔面を潰す、意外と見た目のまま柔らかいようだ


『こいつらは対した強さじゃない様だぞ』


『そうだね!』


アルセリアの言葉にマルスは返事をしながら腕から爪を出して振り回してくる魔物の攻撃を避け、双剣を巧みに扱って斬り倒していく

カールやミミリーも背中合わせで向かってくる黒い魔物を斬り倒すが強い魔物ではないと見るや、バニアルドやモリスそしてコットンも応戦し始める

ヘクターも楽しそうに小さな剣を使って素早く倒していくが数は30前後か、早いうちに殲滅できそうだ


『後方からも来るぜ』


グスタフが出番と思いながら背後に体を向けて言い放つ、しかし後ろからは黒い人型の魔物ではない

それはゴブリンキングが8体、錆びた大剣を担いだまま走ってくるのが見える


『じゃあ行きますか先輩』


ナッツが俺に話しかけてくるがゾロアは『お前等が対応しろ』というとタツタカとコルヴェールそしてゾロアは周りを見渡して何かを探す

俺はナッツに返事をしてから仲間を連れて後方から走ってくるゴブリンキングを待ち構える


『ヘルファイア』


ルルカが腕を伸ばし、熱光線を撃ち放つと先頭のゴブリンキングの胸元を貫通し、後方のゴブリンキングを巻き込んで激しく燃え出す、2体が炎に撒かれて足を止めるが他の6体はかまわず突っ込んでくる

飛び込んでくるゴブリンキングの振り下ろされる大剣を避けると太腿と切り裂き、直ぐに次の敵に標的を変える

ナッツに太ももを斬られたゴブリンキングはバランスを崩している隙にグスタフが意気揚々と首を大剣で刎ね飛ばし、次にナッツが腕を切り落とした敵を彼が顔面を貫いて倒していく


『次ぃ!』


『倒しそうですねグスタフさん』


『久々の先頭だぜぇ?もっと斬らせろや』


『わかってますよ』


グスタフとナッツは会話しながらゴブリンキングに対応していくが俺は1体だけだな

ハルバートのリーチが長いので相手の大剣が届く前に胴体を貫いてからそれを持ち上げると反対方向で俺達を襲う黒い人型の魔物の集団の中に投げ飛ばした


『おもっ・・・』


かなり重かった、しかし投げ飛ばされたゴブリンキングは数体の黒い魔物を下敷きに出来たし働いことになるだろう


『それ!』


最後の1体をルルカが首に片手剣を突き刺して終わらせている、彼女は身軽だしゴブリンキングの攻撃を避けるくらいならば容易い、術師ではあるが剣術も出来る

倒し終えるとグスタフとナッツが倒れるゴブリンキングに生き残りがいないか調べるが気配がないので死んだも同然だ


『ケッ、丁度いい強さの敵がこんな数で来るなら暇しねぇな』


『ですがこれが10以上は面倒ですよ?』


『別にいいだろ?お前手数あんだからよ』


『まぁ・・・あはは』


『正面もそろそろ終わりそうね』


ナッツとグスタフの会話にルルカが混ざる

俺も前に体を向けると残り2体の黒い人型の魔物をカールが素早く通過しながら胴体を両断し、片膝をついたまま鞘に剣を納めている


『魔物レベルC程度か』


彼はそう囁き、髪をいじながら立ち上がるとモリスが奥を見て嫌そうな顔をしている


『また来ますよぉ・・・』




ワラワラと先ほどの魔物が来る、バニアルドは黒人間と名をつけると道を切り開くためにコルヴェールとゾロアが走ってくる黒人間の波に突っ込んでいった





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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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