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白翼の堕天使  作者: 紡未夏樹
第四章
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第二部 〈新色紫の監視者〉

 黒羽が大勢の人がいる中、魔力を使った。その結果、周囲の反応がどう変わるのか、黒羽はそれが心配だった。

 志音、ケイ、彩芽、雫に対する、周りからの反応が変わるのではないか。黒羽が魔族とのハーフであるという事実を隠蔽していたという理由で、魔族嫌いの人間からぞんざいに扱われたりはしないだろうか。

先の事を考えずに力を使ったことが、今となっては悔やまれる。

 しかし、そんな黒羽の心配も杞憂に終わった。

 彼の予想に反して、周りからの扱いの変化や、校内で噂になっている等の報告は、一切なかった。

 唯一変わった事と言えば——



 決闘騒動から数日。特に変わったことも無く、黒羽達は平凡な毎日を過ごしていた。

 朝のHR。担任教師の口から飛び出したのは、そんな平凡な日常をぶち壊しにする言葉だった。

「あー、実は今日、転入生が来ていてな、紹介するぞ」

「せんせー、何でこんな時期なんですか?」

 生徒の一人がもっともな質問をする。

 現在日付は十一月下旬。冬休みも近いというこの時期に転入してくるのは、どう考えてもおかしい。よっぽどの事情があるに違いない。

「うーん、言いづらい事なんだが、この間、北条が色々やらかしただろう? それ関係らしい」

「え、俺ですか?」

 関係ないと思い込んでいた黒羽は、不意打ちの言葉にキョトンとする。

「まあ、詳しい事は本人に聞くと良い。入ってくれ」

 教師が廊下に声を掛けると、音も立てずに扉が開いた。

 しかし、その姿を見て、皆、声を上げることが出来なかった。

 艶やかな黒髪のおかっぱ頭に、花の髪飾りを付けたその少女は、ここ、学校という場所に相応しいとは言えない姿だったからだ。

 その姿に、事情を知っているはずの教師ですら、言葉が出ない。

「京極院(きょうごくいん)、お前、何で和服なんだ? 制服、貰ってるだろう?」

 そう、その少女は制服が必須となるこの場所で、なぜか和服を着ていた。しかもそれが普通であるかのように、平然としている。

 というか、自然過ぎて担任が指摘するまで誰も気が付かなかった。

「む? この服か? ちゃんと許可はもらっておるぞ。やはりこの格好が一番馴染むのでな」

 明らかに教師に対しての言葉遣いではないが、それを気にしたような素振りはない。

「そうか、なら良し。自己紹介してくれ」

「うむ、承知した」

 黒髪の少女は、未だに状況が呑み込めないクラスメイトに向き直ると、自己紹介を始める。

「私の名は京極院紫(し)蘭(らん)。お主たちが使っている武器などに組み込まれている術式の元祖、京極院家の跡取りじゃ。よろしく頼むぞ」

 彼女は、何やらすごそうな自己紹介をするが、生憎、この場に京極院の名をしている者は居なかった。

「む、何だその反応は。まさか京極院を知らぬと申すかっ!」

 無反応が癪に障ったのか、ムキになって声を荒げる。

「まあ良い。私の仕事は名を知ってもらうことではないのでな」

 しかし、すぐに落ち着きを取り戻すと、今度は黒羽の元へ歩み寄る。

「そなたが北条か」

「あ、ああ、黒羽だ。えっと……よろしく?」

 こういった時の対応をよく知らない黒羽は、無難に手を差し出す。

「ふむ、良いのう……」

 その手を取ってにっこりと笑う紫蘭。

 と、ここでチャイムが鳴る。HR終了の知らせだ。

「あー、時間だな。じゃあ、京極院、仲良くやれよ?」

 担任が去っていくと、途端に教室が喧騒に包まれる。

「時に北条、そなたは強力な魔力を持っていると聞いた。その力についてどう思っておる」

「魔力? ああ、使えるなら使うべきだとは思うぞ。それで守れるものが増えるならな」

 黒羽の考えを伝える。

「ほう、良いのう、良いのう」

 しきりにうんうんと頷く紫蘭。

「ところで、何で俺のところに来た」

 他にも人はいるだろう。

「ああ、そのことだが、私はそなたの監視を頼まれたのじゃ」

「は? 監視?」

「そう、監視じゃ。何やら上の連中は、そなたの強力な魔力が恐ろしいと抜かしておる。私にはそう危険な物には思えんがの」

「ちょっと待て、俺は今後監視されながら生活するのか?」

「なに、そう気にするものでもない。そなたには少々特殊な術を掛けて、怪しい動きをしたら、すぐに駆け付けられるようにするだけじゃ」

「十分恐ろしいんだが……」

 俺のプライベートはどうなる。嘆く黒羽。

「ねえアンタ。急に出てきて何やってんのよ」

 志音が遅れて話に参加する。

「監視と言っておるじゃろう」

「だからその監視って何なのよ」

「先ほども申したであろう。少々特殊な術を掛けてだな——」

 明らかに状況を理解していない志音に、改めて一から説明を始める紫蘭。

 長くなりそうだ。

「よう、黒羽。また面倒事か」

「うるせぇ、見せもんじゃねえぞ」

 にやにやと気持ち悪い笑みを浮かべながら近づいてくるケイに、黒羽はますます気分を悪くする。

「いやー、にしても、また美少女か。好みは分かれるだろうが、俺は好きだぞ、ああいうの」

「お前は最近いつもそれだな」

 インキュバスだと発覚してから、ケイの口からは、女子の話題が増えた。

 どこの女子がかわいいだの、あのアイドルがかわいいだの。

「当たり前だろ。淫魔の性欲なめんな」

 むしろ今まで我慢してたことをほめてほしいわ。そう言うケイ。

「いや、隠せてなかったぞ」

「マジで!?」

 むしろなぜ隠せていたと思ったのだろうか。

「なるほど、そういう事ね。じゃあ、よろしく京極院さん」

「うむ!」 

 何やらあちらは意気投合したらしい。がっちりと握手を交わしている。

「そういう事で、京極院さんのチーム入りが決定したわ」

「は?」

「いやいやいや」

 急にどうしたというのだろうか。

「だって、チームに入った方が、監視もしやすいって……」

 指先をつんつんしながら、段々と小声になっていく志音。しかし、その言葉はしっかりと聞こえた。

 別に、黒羽としても、えらい人の命に逆らうつもりは無いが、

「監視は決定事項かぁ……」

 思わず黒羽のため息が漏れ出たところで、授業開始のチャイムが鳴った。話は一旦中断される。

本格的に二日に一回の更新ペースです、夏樹です。

今回も新キャラ登場となります。お察しの通り、ヒロインです。和服姿の女の子、割と好きです。

引き続き、感想、評価、レビュー、ブクマをお待ちしておりますので、どうか、よろしくお願いします!

では、また次回!

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