第一部 〈魔の力が呼ぶ禍〉
薄暗い部屋。数人の男女が円卓に座っている。
「なぜ報告しなかった」
一人の女性が追及を受けている。
「あれは危険な力だ。それを野放しにして、何か事故が起きたらどうするつもりだ」
この場で最も位が高いであろう初老の男性が、厳しい声で問う。
「危険なのは重々承知だ。しかし、私はあの子に自由に生きてもらいたいと思った。己の生まれに関係なく、立場に縛られることなく、自由に」
追及を受けている女性は、相手が目上なのにも関わらず、自分の喋りを貫く。
「その自由が、事故を引き起こしかねないのだが?」
男性は、ピクリと眉を動かすも、あくまで冷静に問いを続ける。
「私はあの子に力の事を教えてはいない。自ら辿り着いたものだ。今まで、何のアクションを起こさなかったどころか、戦闘で成果も上げている。使いこなしている証拠だと思うが?」
暴走した友人を止め、人形とはいえ、大罪の手先の侵略を防ぎ、自分よりも格上の相手に勝利も納めている。
「だが、悪事を働かないという証拠もないだろう」
円卓の誰かが言った。
その言葉が、彼女の琴線に触れた。
「そう言ってまた私の家族に手を出すつもりか!」
激昂して、テーブルを叩く。
「また、だと?」
事情が呑み込めない男性が、思わず呟く。
「ああ、そうさ。お前たちは、私の夫となるべき魔族を、ただ力が大きすぎるというだけで封印した! その時お前たちが言った言葉は何だ——!?」
その場のざわめきが途端に大きくなる。
「『アレに暴走されたら危険だ。早々に討伐しろ。可能ならば封印しろ』だろうっ!? 可能性の話だけで、お前たちは命を奪えと言った! 私はその時、その場にはいなかったが、話だけは聞いているぞ。天使のような翼を持った魔族を、封印することに成功した、とな」
「だが結果として今、命はあり、魔界へ渡っているのだろう。過ぎた話じゃないか」
初老の男性は、女性の、千春の怒りにも動じることなく、淡々と話を進める。
「私は今、なぜ報告しなかったのかと聞いている」
「まだ気づかないのか! 偶然にも私のチカラが遺伝した為に、魔力は表に出てこなかったが、もし、あいつに魔力があると分かったら、お前たちは親を探すだろう!? それでアイツが、ヴァイスが父親だと分かれば、またお前たちは危険だ何だと言って、手を出すに決まっている」
私は、
「本当は息子を危険に晒したくなかった。だが、お前たちが私の息子だからと、この組織入れた。それが、魔族の血が混じっていると分かると、掌を返して危険だなどと、虫が良すぎるとは思わないのか!」
千春の心からの叫びだった。
それを汲み取ったのかは分からないが、一人の男性が動きを見せる。
「では、監視を付けるなど、如何でしょう?」
その男は音葉永久。千春に、翼を持つ魔族の封印についての詳細を教えた人物でもある。
「監視だと?」
「ええ、一人、適役が居ると記憶しています」
「ふん、アイツに監視など要らん。私は自由に、と言っただろう」
「まあまあ千春さん。大丈夫ですよ」
安心しろとでも言うかのように、手を振る永久。
「——同年代なら、彼も肩身が狭くなることは無いのではないですか?」
その言葉に、この場に居る全員が反応した。
「まさか、あの子に監視を……?」
「ええ、そのまさかです」
場のざわめきが大きくなる。
初老の男性も思わず唸っている。
「ムゥ……確かにあやつは信頼できるな……」
もちろん千春とて例外ではなかった。
「ま、まあ、それなら、納得がいかないが良いだろう」
「あはは、千春さんは厳しいなあ」
「——せっかく、黒羽君の周りが華やかになるっていうのに」
第四章、いつもとは違う話の始まり方になりました、夏樹です。
今回は、少し過去の話に触れてみました。なぜヴァイスが封印されていたのか、なぜ黒羽は自分が魔族だという事を知らなかったのか。
恐らく、ヴァイスが封印された時、千春は妊娠中か、子育て中だったと思います。父親が居なくなって、愛情を注ぐ相手が一人になった事により、今の彼女の性格が出来たのかな、と。一応、命を守る職ですから、それなりにお金はあっただろうし……。
何はともあれ、書けて良かったです。個人的に、ラノベ等では、あまり好まない過去編です。私が好まない、ということもあってか、結構浅い過去となりましたが、ご勘弁を。
ではでは、読んでくださってありがとうございます! いつでも感想、評価、レビュー、ブクマはお待ちしておりますので、ぜひ、よろしくお願いいたします!
また次回、お会いしましょう!




