第九部 〈交錯する四の刃〉
住宅街を模したダミーの中心で、四つの刃が交錯する。
鎌と大剣。
刀と双剣。
リーチ、スピード、パワー。それらの総合力に技術をプラスすると、勝敗が決まるのが、戦い。しかし、今回の場合は、ある程度の値で、というのが正しいだろう。
相対する双子の兄弟は、気付かれないように手を抜いて、黒羽達を勝利に導こうとしている。しかしそれも、黒羽と彩芽、二人が勝利に値する動きを見せなければ、それまでだ。
黒羽対白夜。
白夜持つ、白銀の双剣は、名を〈白昼夢〉といった。その名の通り、現実離れなスピードを以て、相手を圧倒することに長けている武器だ。
そんな双剣〈白昼夢〉と、使い手の白夜に対し、黒羽の取った行動は二つ。
一つは先日雫との戦闘でも行った、視力と聴力の強化。
もう一つは、彩芽が極夜を倒し、合流することを見越しての、防御に徹した動き。あくまでダメージを狙うのではなく、相手の攻撃を逸らし、受け止め、弾く。それによりその相手の体力を奪う。
敵よりも自分が劣っている場合によく使われる戦法だ。攻撃が出来ないが、代わりに隙が生まれにくい。
実力差が開きすぎてなければだが……。
——このままじゃ、まずいか……。
彩芽対極夜。
極夜の構える大剣〈外理〉は、建ち並ぶ家屋を、次々と粉砕している。名にある通り、理を外れたような力を持つ大剣だ。
「先輩、本当に手加減してます?」
粉砕された家屋の破片を避けながら、彩芽が問う。
「こっちだって気付かれないように必死だからな。出来るだけギリギリまで調整してるんだ」
「そうですか。じゃあ、全力を出せば勝てるんですね?」
「ああ、そうだな」
その言葉を聞いた彩芽は、一度立ち止まり、己に風を纏わせる。
「〈疾風〉!」
ふわりと体が浮き上がる。
「ほう」
感心したような声を上げる極夜。
「まだです! 吹き荒べ〈乱気流〉っ!」
鎌からあふれた暴風が、極夜の周りを回りだしたと思った次の瞬間、
「——ッ、がはっ!」
軌道を一気に変えた風は、そのまま極夜の体を巻き込み家屋の壁に叩きつけた。
『日向極夜、一ポイント!』
アナウンスが入る。
それと同時に、ギャラリーがざわめく。
名前も知らないような少女に、ポイントを先取された事に驚いているのだろう。
「風、か。よし、道は見えた。終わらせるか」
極夜はそう言うと、大剣を地面に叩きつける。
コンクリート片が飛び散り、彩芽の視界を塞ぐ。結果、敵の接近に気付けない。
「悪いな。ポイント取っておかないと怪しまれる」
斬るというより、叩きつけるような攻撃が、彩芽に入る。
「——っ!」
どんな攻撃をも弾くはずのバリアが、軋むような音を立てる。それほどまでに、彼の攻撃は強力だ。
『大神彩芽、一ポイント!』
やはりこうでなくては、とギャラリーが沸く。
二人は一度距離を取って、お互い体制を立て直す。
疲労はそれほど濃くは無いが、精神力の消耗は激しい。
「本当に勝たせてくれるんですか?」
「もちろんだ。それなりに動けばな」
じゃあ、と彩芽。
「これなんてどうです?」
先程極夜を吹き飛ばしたものよりも強力な暴風で、距離を詰め、鎌を振り下ろす。しかし、正面からの攻撃は、容易く刃に受け止められる。
「そんなものか」
「いいえ、誰も斬るとは言ってません」
受け止めた刃をいなしながら、受け止められた鎌を回し、柄の部分を極夜に叩きつける。
「——っ!」
足を狙われた極夜は、姿勢を崩す。その間に距離を取り、次の一手を考える。
『日向極夜、二ポイント!』
ギャラリーのざわめきは大きくなる一方だ。
「流石に安直にやられ過ぎか。次は厳しいぞ。付いて来れるか?」
彩芽の返事を待たずに地を蹴る。
「〈破砕〉!」
危険な気配を察知した彩芽は、即座に後方へ跳ぶ。
しかし、
「あれっ!?」
着地地点の地面が崩れだす。
見ると、叩きつけられた大剣から伸びたヒビが、彩芽の足元まで伸びている。凄まじいパワーを以て、地面を破壊したのだろう。
バランスを崩すのは必然だ。
「そこだ」
再び地を蹴り、近づいた極夜は、必中の一撃を放つ。
かろうじて鎌の柄で受け止める彩芽だが、その柄も、己の骨も、ミシミシと音を立てているようだ。
「〈疾風〉!」
風を纏って強引に体を動かす。
力の行き場を失った大剣は、勢いよく地面を叩く。
「これだっ!」
先程から極夜が舞い上げるコンクリート片、土煙。それを見て、彩芽は閃く。
「〈乱気流〉!」
風の対象はその破片。
舞い上がった瓦礫は、勢いよく回りだし、触れたら相当なダメージが入りそうだ。
「これを空気の刃に乗せる!」
風を纏う鎌から、圧縮された空気の刃が飛ぶ。
「はああああ!!!!」
それは瓦礫を伴って飛び、極夜にぶつかる。
「チッ!」
彼もかろうじてそれらを避けるなり、強大なパワーを以て打ち消すなりしていたが、その中でも一際大きな瓦礫が目の前に現れる。
——これは!
その瓦礫を破壊するが、それ以上は動かない。
破壊された破片が細かくなり、彼の体を打つ。
「……こんなものか」
『日向極夜、3ポイント! 退場です!』
ギャラリーの関心は、白髪の少女に向けられる。
出来レースとは知らずに。
また一日空きました、申し訳ありません、夏樹です。
実は「遊んでたらこんな時間に」という形での遅れです。反省してます、はい。
こんな私の作品ですが、どうか、感想、レビュー、評価、ブクマをよろしくお願いします!
では、また次回お会いできたらと思います。




