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白翼の堕天使  作者: 紡未夏樹
第三章
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第六部 〈決闘の申し込み〉

「様子はどうだ?」

 同ショッピングモール内。とある場所で、男が二人、女が一人。

「問題ないです。女の子を追い詰めるのは心苦しいですけど、一応、仕事ですから」

「お前には、あまり暴走しないでほしいがな。諫(いさ)める俺の身にもなれ」

 女の問いに、それぞれ応える。

「まあ、アイツはそんなことで折れる程ヤワじゃない。勝たなくて良い、それなりに相手をしてやってくれ」

『了解です』

「頼んだぞ。アイツのためだ」

 女はその場から去っていく。

「勝ったら俺の物にして良い、ってのは本当なのかな?」

「あの人が言ったことを俺に聞くな。分かるわけがないだろう」

「それもそっか。じゃあ、行こう」

 二人の男は歩き出す。その姿は、すぐに人ごみに紛れて消えた。


「……寒い」

「そう? じゃあ私がくっついてあげるー」

「やめろ、変な目で見られてるだろうが」

 十一月も終わるという頃、寒さは日増しに厳しくなり、初雪も近く思えた。

 そんな冷え冷えとした朝。どこかの本なら、地球をアイスピックでつついたら、ちょうど良い感じにカチ割れそうだ、と書かれていそうな日。

 もちろん平日、登校日の今日。コートを着てても、寒さを完全には防げず、思わず口をから出たのは、今の状況を完璧に表現する一言だった。

「でも暖かいでしょ?」

 人肌は、人を温めるのに一番効果的だという。確かに暖かい。

 しかし黒羽としては、腕に柔らかいものを感じるので、気まずい事この上ない。

「いいから離れろ。凍死するわけじゃない」

 密着する彩芽を無理やり引き剥がして、普通に歩かせる。

「おーおー、朝からイチャついてんなぁ。爆発しとけ」

 学校が近づいてきたからか、家の方向が違うケイと合流した。

「どこがイチャついてるように見える」

「イチャついてるようにしか見えねえよ」

 本人に自覚は無いのだろうか。そう考えかけて、諦める。自覚があったらここまで彼女たちは苦労していないだろう。

「あら、今日は早いのね」

 なぜか志音とも合流する。

「お前が遅いんじゃねえか?」

「え、嘘!?」

 なぜいつもより遅いのに気が付かないのだろうか。

「あ、あれね。寒いから歩みが遅くなったのよ」

 誰への言い訳なのか。

「別に間に合うから良いだろ」

 遅いとはいえ、遅刻したこと自体は無い。

「そうね。特に急ぐ用事も無いし」


 その日、もちろん、遅刻はしなかった。が、志音は急ぎの用事があったらしい。担任の説教を聞かされていた。



「ひどい目にあったわ……」

「遅くなったお前が悪い」

 バッサリと切り捨てる黒羽。

「し、知らなかったのよ!」

「忘れてただけじゃねえのか?」

「かも、しれないけどさ」

 どちらにしろ志音が悪いことに変わりはないらしい。

「腹いせに飲み物買ってきて」

「馬鹿なのか?」

 どこの誰が腹いせの命令に従うというのか。

「冗談よ。飲み物はさっき自分で買ってきたし」

「馬鹿なのか?」

「二回言った!?」

 自覚してるけどさぁ……。気分が目に見えて沈んでいく志音。

「おいおい黒羽。なに志音イジメて楽しんでんだよ」

 人聞きの悪いことを言いながら現れるケイ。

「残念だが、俺に人をイジメて楽しむ趣味は無い」

「そうか、そいつは残念だ」

 いったい何が残念なのか分からないが、とりあえず、当人の中では残念なことなのだろう。

「何の話してるの?」

 そんな時、現れたのは、相変わらず小柄な男子、一之瀬ナナトだ。

「志音が己の失態を棚に上げて、俺に八つ当たりの命令をしてきたって話だ」

「ええっ!? そんな酷いことを……」

「ちょっと! 変な情報植えつけないでくれる!?」

 志音が憤慨しながら割って入る。

「そうか……橘さん、そんな人だったんだね……」

「いやいやいや、嘘だから! 黒羽の言ったこと嘘だから!」

 いや、間違ってないぞ。その言葉は志音の叫びにかき消される。

『やあ、北条君、居るかい?』

 そこへ、廊下から嫌な声が聞こえてきた。極力関わりたくない。

「居ません」

「何で本人が否定して誤魔化せると思ったんだい!?」

 声の主は、先日の演劇で一躍有名になった日向白夜だった。

 その登場の噂は、一気に伝播していき、一瞬で廊下には人だかりが出来上がっていた。

「まあ、そんなことはどうでも良いんだよ。今日は君に、決闘の申し込みをしに来たのさ」

「決闘?」

「そう、決闘。君が勝てば、僕は今後、君たちに関わらない。そんな感じでどうかな?」

「俺のデメリットは」

「負けること。それだけ」

 一見、デメリットが無いように思えるこの提案。しかし、本当は違う。彼は確実にその場に彩芽を呼ぶだろう。そして黒羽の負けた姿を見せて、気を逸らそうとしているのだ。

「なるほど。俺だけじゃ決められないことですね。あとで彩芽に聞いておきます」

「うん、そうしてくれると助かるよ。返事は後日、聞かせてくれ。じゃあ」

 廊下に出来上がった人ごみを、今度は引き連れて去っていく白夜。

「ねえ黒羽、どこで知り合ったの?」

 王子と呼ばれる有名人と、接点は無い。その事を分かってか、志音が質問する。

「彩芽がナンパされた」

「ええっ!?」

 驚き方がうるさい。

「へえ、あんなイケメンでもナンパなんてするんだな」

 意外そうな顔で聞くケイ。黒羽の感覚では、イケメンほどナンパするように思えるのだが、違うのだろうか。

「何か大変そうだね」

「まあ、面倒だな。執念深い」

「面白そうだけどね」

「本当にそう思ってるのか」

「うん」

 彼の考えることはよく分からない。しかし黒羽としては、分からなくても構わない。

先日、とある方に、文章に余計な情報が多すぎると言われました、夏樹です。

今回はどうでしょうか? 上手くできたでしょうか?

もし、何かあれば、感想やレビューで言っていただければと思います。もちろん、評価やブクマもお待ちしております。ではでは、また今度お会いしましょう。

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